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2018年2月2日

732. JR東海 大口径き電吊架線とは

                                       JR東海の大口径き電吊架線とは
#き電ちょう架線

東海道本線 吉原き電区分所を巡っていたら、JR東海のき電吊架線が余りにも太いので調査

712. JR東海 吉原き電区分所と東海道本線のき電吊架線 JR東海キヤ95系気動車(部分) ブログリンク
直径約40mm 中心に鋼線7本3.1m㎡ 周囲にアルミ66本4.52m㎡
JR東日本は、インテグレート架線としてき電吊架線は、硬銅より線356m㎡×2条を使用
JR東海は、硬銅より線より安い?低反射中防食圧縮型アルミ覆鋼心耐熱アルミ合金より線を使用 
断面積的には、JR東日本 約700m㎡ 東海1059m㎡と東海のほうが断面積が大きい

常時許容電流も
JR東日本 硬銅より線356m㎡×2条 約1,800A
JR東海 アルミ覆鋼心耐熱アルミ合金より線1059m㎡ 約2,400A
とJR東海の方が多い

決定的違い 吊架線の材質が違う
JR西日本(ハイパー架線)≒ JR東海(き電吊架線)アルミ導体使用≠JR東日本(インテグレート架線)硬銅を使用
となる。
末端部処理は中心の鋼心部を使用 亜鉛メッキ鋼より線(St135m㎡)
架線調整が容易なため採用 架線伸びが発生した場合の調整が大口径のき電吊架線と比べ容易
最終的には、この部分は圧着スリーブで加工されるだろう(施工時の伸びが収まった時点)

ケーブルクランプで心線と外被のアルミ線の伸びをAging

末端加工がまだされていない
中心の鋼心線に引き留め鋼線(巻き付けグリップ)が巻かれている
最後にスリーブを被せ圧接加工を実施
バリの出ない垂直に切断できるバッテリー式高速カッターと専用アタッチメントを開発導入
き電線接続アタッチメント 圧着加工 被せ式 100tプレス

き電線との取り合い


シンプルカテナリーとき電吊架線との取り合い部分
セクション終点

き電吊架線と可動ブラケット

可動ブラケット支持点に循環電流防止金具
循環電流防止全曲引金具

循環電流防止カバー

循環電流防止 糸巻き型カバー
FM-T=Feeder Messenger wire-Trolley wire コネクタ
上部の圧着加工の跡がある。アルミ吊架線なので圧着コネクタもアルミ製
トロリ線と接続線は硬銅より線なので上部のボルト留め部分には、異種金属での電蝕が発生しないよう合金を
サンドイッチしている


FM-Tコネクタの圧縮 100tプレス FM-T=Feeder Messenger wire-Trolley wire
軽量化とばね定数を低く高速走行に対して離線とトロリ線歪み量を小さくする


送電線延伸用を利用したが、設置場所の制約から改良を加え軌陸車に搭載


送電線延伸用の巻取り装置シューチェーン延線装置の導入
軌陸両用き電吊架線延線車
  JR東海では、2015年度より他社(ハイパー架線・インテグレート架線)と同様なき電吊架線の施工が始まった。特徴的な名前は無いようだ。(ハイパー架線・インテグレート架線は、夫々特許がある)
 
 選択したき電吊架線は、通常の吊下線(鋼線)と比較すると外径、単位重量ともに約3倍となる。そのため吊架線の延伸時に大きく弛みが生じる。

東海道本線の場合 停電時間が約80分しか取れない。などの制約が発生している。

 送電線延伸用の巻取り装置シューチェーン延線装置の導入を行い。送り出し部と巻き取り部で約1tの一定張力を掛けながら延線することでき電吊架線の弛みを小さくした。また敷設速度も速くすることができた。 50m/min

80分の停電時間で作業を終了させるため、分割で き電吊架線の張替えを行う工夫をこらした。

手順は
1. き電吊架線延線用ロープの延線(低摩擦ウレタン樹脂被覆繊維ロープを使用)
事前にき電吊架線のルートを確認し架線防護処置を実施

2. き電吊架線約40㎜直径の延線(1tの張力を掛けて延線)
延線用ロープとき電吊架線の接続に巻付きグリップを採用し延線後そのまま引き留め接続する

3. 電車線の支持替え
き電吊架線の可動ブラケットへの支持、ハンガー、ハンガーワイヤ、仮設FM-Tコネクタ等の
取り付けを実施、循環電流対策を実施

4. FM-Tコネクタの圧着
き電吊架線とトロリ線をFM-Tコネクタで接続(圧着)FM-TとはFeeder Messenger wire-Trolley wireの略

5. 既設吊下線の撤去
従来工法で撤去

6. 引き留め改良
巻付きグリップで心線と結合し、テンションバランサと結合
架線調整も大口径のき電吊架線を使わずに対応可能となる

 こらら作業の中で一番労力が掛かるき電吊架線の延線には、軌陸両用き電吊架線延線車を開発 大幅に作業時間の短縮ができた。1ドラム約1.4kmのき電吊架線での単位で敷設を実施している。

丁度 吉原き電区分所の部分は1から5までが終了し、き電吊架線の伸びを考慮してAgingの最中のようだ。この後末端のスリーブ加工が終了し引き留め改良で完了となる。


参考文献
浦中 勉;武豊線電化計画の概要:JREA,2012,Vol.55,No.12,pp.37356-37359
加藤 博之ら;き電吊架線化工事施工方法の確立と軌陸両用き電吊架線延線車の導入について:鉄道と電気技術,Vol.26.No.2,pp.53-58