閉話休題、通常の交流電化区間のき電区分所はデッドセクションで変電所の異相区分を行っている。
新庄き電区分所は、標準軌(通称:山形新幹線・山形線)と狭軌(奥羽本線)の接点であるのでデッドセクションが無いのが当然の帰結であるが、どのような状態でき電区分を行っているか調査を行った。
先 に真室川補助き電区分所を踏査した際に、奥羽本線電化時の新庄き電区分所の位置と現在のき電区分所の位置に違いがあるとこが判った。
昔の新庄駅構内には、現在の新庄き電区分所(SP)は、存在しない。
国土地理院 空中写真 整理番号CTO7615-C18Bー19
1976年 400dpi画像から加工
電化当時の新庄駅 構内
電化当時の新庄駅構内
現在の新庄SPの位置は、線路になっている
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現在の新庄き電区分所 駅構内にある
アプローチ:新庄駅構内 高い塀に囲われていて中身が判りずらい
標準軌(通称:山形新幹線・山形線)と狭軌(奥羽本線) AC 50Hz 20kV
院内変電所と羽前千歳変電所のき電区分を担当
912. 東北巡検その七 JR東日本 院内変電所(ATき電)ブログリンク
671. JR東日本 羽前千歳変電所 BT・ATき電 奥羽本線(山形線)仙山線 ブログリンク
1975年 電化当時のき電区分
別の文献 やはり 豊里(真室川)SSPと大石田SSPはデッドセクション記号がある。 CRはCR装置と思われる 湯沢は院内変電所を差す (山形新幹線開通前の状況) |
部分抜き出し
当該部分拡大
羽前千歳は、変電所から離れた場所にATがある。これは第一ATと呼ばれる方式で、他に秋田変電所、青森西変電所でも見られる形式である 豊里が現在の真室川 釜淵、東根のSSPは、斜線のエアーセクション (山形新幹線開通前の状況)
新庄のCRはCR装置(HMCR) 羽前千歳には現在CR装置は、設備されていない |
電化当時のその場所
過去の空中写真画像 新庄駅の山形方
国土地理院 空中写真 整理番号CTO7615-C20Bー24
1976年 400dpi画像から加工
山形新幹線ができる前 奥羽本線電化時の新庄SPの位置 電化は1975年 真新しいき電区分所の設備と思われる 画面中央 羽前千歳SSから約54.5km位置 |
ATポスト(ATP)としての運用 院内SSと羽前千歳SSの最終末端ATが隣り合わせの状態
特徴的なのは、VCBがあるが断路器が無い。直結状態
特徴的なのは、VCBがあるが断路器が無い。直結状態
新庄き電区分所 |
高い塀で中身が見えない 左右にき電線引き出し 後のルートインからは丸見え |
上画像 左方 院内SS き電線 引き出し |
上図 右方 羽前千歳 |
裏側から俯瞰 左 羽前千歳SS方 右 院内SS方 |
引き出し鉄構の上部で色分け 緑 院内SS方 黄色 羽前千歳SS方 |
陸羽東線(非電化) 狭軌 ホーム方は、院内SSき電 最終架線柱 架線終端標識 左 となり標準軌は、羽前千歳SSき電 |
陸羽東線の隣 標準軌(山形新幹線・山形線)羽前千歳SS方き電 TFき電線がトロリ線に繋がる AF き電線は、上部を通過 架線柱は黄色の表示 |
奥羽本線(狭軌) 院内SS方き電 TFき電線がトロリ線に繋がる AF き電線は、上部を通過 |
新庄き電区分所中身 よくよくみるとVCB以外の断路器等が無い 直結状態 AF,TFき電線 直結 |
2024/09/22にX(Twitter)に「ふとんや(二条機関区所属)@dc282466」さんがルートインに宿泊した際の内部画像が記載されている。以下引用URL https://x.com/dc282466/status/1837462094217990164
中心部に眞空遮断器 1台 横型双投VCB 院内、羽前千歳両SS間のAF、TF 同士を繋ぐ延長き電用遮断器 |
左右にAT 避雷器の頭が見えている 院内SS方 AT(単巻変圧器) AT308 羽前千歳のATから数えて8個目 |
左右にAT 避雷器の頭が見えている 羽前千歳SS方 AT(単巻変圧器) AT307 羽前千歳のATから数えて7個目 |
AT(単巻変圧器)の上に避雷器が載っており、さらに計器用変圧器とHMCR装置に繋がる このセットが左右にある |
HMCR装置 特徴ある斜めの装置屋根 AF側とTF側 両方にHMCR装置が設備されている |
ATき電方式であるため、そして変電所間隔が長いため、電源の誘導リアクタンスと電車線路の容量リアクタンスによる共振周波数が低く、高次高調波電流がき電回路の共振周波数に近く多い場合、共振を起こす恐れがあった。
HMCR装置解説
そのため長い線区の羽前千歳-院内間の特性インピーダンスから新庄SPに共振周波数を低次へ移行させるHMCR装置(フィルター)を設けた。
単巻変圧器AT TFき電線(トロリ線)側に設備されているHMCR装置 右 コンデンサ 抵抗 リアクトルの順 これは弘前ATPにあるHMCR装置例 これがAF側にも設備されている |
単巻変圧器AT(ATき電線)側に設備されているHMCR装置 これは弘前ATPにあるHMCR装置例 |
多分、真室川SSP、新庄SP、大石田SSPを含めて総合的な運用を行っているものと思われる。
山形線・山形新幹線のき電系統は、もともと東北電力側の短絡容量が小さく電源電圧変動が懸念される変電所ばかりであったため、
1.赤岩き電区分所を設けて峠変電所を救済、さらにTCT方式のSVCを設ける
2.米沢変電所は近傍の変電所直結の給電
3.中川変電所これまた短絡容量が小さいのでTCT方式のSVCを設置
4.同様に羽前千歳変電所にはTSC型のSVCを設置(ATき電側に設備)
5.仙山線の作並SPにはACVRを設置 (AVCRには極性があり、東仙台SS、羽前千歳SSどちらかのトロリ線電圧を上昇する動作を行う)
6.大石田SSPにもTSC方式のSVCを設置等
電源の強化を図った経緯があるため、変電所脱落時の対応として特殊な運用を図っているものと思われる。ただし現状E3系統は力率1 回生ブレーキ利用等で変動要因は小さくなっているが、東北電力のバックボーンが強化されない限りはSVCの運用を避けることはできない。
繁忙期の真室川SSPの突合せ、新庄SPでの突合せでも問題ないと考えるかもしれないがが、新庄SPをスルー化することで末端ATの容量を2倍にできる。(阿武隈鉄道のATき電区間末端の槻木き電区分所のATは、他の阿武急のATより容量が大きい、またJR北海道 新札幌き電区分所もAT末端にあたるのでATの容量が大きい)
陸羽西線・奥羽本線 狭軌側 |
狭軌側 末端 インピーダンスボンドで標準軌側とクロスボンド |
標準軌 末端
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山形線・山形新幹線 標準軌側 |
ホームによって違う行先表示板
山形線・山形新幹線 ホーム 1番線 |
陸羽東線・陸羽西線・奥羽本線 ホーム 5番線側 |
陸羽西線・奥羽本線 ホーム 3,4番線 |
手前 1,2番線 奥 3,4番線 左5番線 |
パンタ融雪用 ヒーター |
パンタ融雪用 ヒーター |
陸羽東線 狭軌と標準軌の平面交差部 |
望遠で撮ると凸凹が目立つ |
レンガ造りの車庫 旧国鉄新庄駅機関庫とグーグルでは表示 |
BT電化区間(在来線)
き電区分所:
変電所間の異相突合せ部分、概ね両端の変電所の中間地点に設備される。工事、事故時の 限定き電区分も担う。デッドセクション必須、上下タイき電も行うことがある。片方の変電所が落ちた場合延長き電を行う設備がある。
変電所から重ね15~25㎞毎(変電所間隔30~50㎞)に置かれる。ACVRが置かれる場合もある。特殊な例として新幹線のき電区分所で採用されているSNセクション(中セクション)を挟んだき電区分所がある(赤岩)
補助き電区分所:
変電所からき電区分所までの距離が長い場合、途中に補助き電区分所を設備する。上下タイき電を行うこともある。工事、事故時の限定き電区分を担う。
ほとんどの補助き電区分所は、エアーセクションで構成されている。ACVR設置の場合は、電位差が大きいのでデッドセクション化される。
AT電化区間(在来線・新幹線)
き電区分所:
変電所間の異相突合せ部分、概ね両端の変電所の中間地点に設備される。工事、事故時の限定き電区分も担う。デッドセクション必須、上下タイき電も行うことがある。片方の変電所が落ちた場合 延長き電を行う設備がある。
変電所から重ね在来線45~55㎞毎、新幹線25~35㎞毎(変電所間隔:在来線90~110㎞、新幹線50~70㎞)に置かれる。AT(単巻き変圧器)が必須で置かれる。(通常時 き電末端となるため)SVC(TSC型)やACVRが置かれる場合がある。新幹線の場合は、SN(中セクション)を挟んだき電区分所となる。
補助き電区分所:
ATき電の場合 新幹線は8~10㎞置き、在来線は10~12㎞置きにATを置き誘導障害対応、き電電圧担保が必須となっている。そのため、ATのみを置いている場所もある。ATP=(AT Post)ATが置かれている場所は、補助き電区分所として設備され、工事、事故時の限定き電区分を担ため、エアーセクションが構成される場合もある。上下タイき電も行うことがある。通常時エアーセクション両端の電位差は無いので、エアーセクションでの融通が可能であるが、ACVR設置の場合は、電位差が大きいのでデッドセクション化される場合がある。SVC(TSC型)が置かれる場合がある。
参考文献
石塚紘彰ら;奥羽本線・羽前千歳--秋田間の電化:鉄道ジャーナル,Vol.9,No.12.pp42-45.1975
石塚紘彰;奥羽本線・羽前千歳--秋田間電化開業:鉄道ピクトリアル,Vol.26,No.1.pp40-43.1976