目次と免責事項

2021年10月18日

1146.  JR九州 日豊本線 南宮崎変電所の特殊性(単相受電・M座供給・予備変電所)とその周辺

南宮崎変電所の特殊性

文中に出てくるACVR、SVCについては以下のURLで解説

  
 66㎸ 1回線受電(単相) 断路器が有るような無いような


         
      別角度 66㎸ 1回線受電(単相)がはっきり判る

  
 架線柱とは別建てで66㎸ 1回線(単相)を変電所まで架空送電線で送る。
碍子3個はATき電のAF

 
 1回線受電(単相)避雷器は断路器直結、断路器は「開」、断路器の次は3相用遮断器の内2相を利用、その次がMOF、66㎸受電単相変圧器は別置き ATき電設備と離れた場所に置かれている

   
 66㎸ 1回線は「T」と「R」を使用

   
66㎸受電側(一次側) 
一応三相の66㎸ブッシングが出ている。そのうち二相を使い一相はアレスタに繋がる

 
    相間44㎸降圧側(2次側)はブッシングが2本

 
AT収容ハウジングがあり、HMCR装置が2組ある。

 
 一応ATポストとして機能はしている

南宮崎変電所に特殊性は、電化開業の歴史を紐解けば判る。
 日豊本線は先に1967年10月に小倉ー幸崎がBT電化で開業した。その後7年後1974年に幸崎ー南宮崎が開業している。もうお判りであろうか 南宮崎変電所は、その時点で日豊本線の末端にあたるのである。
 末端にあたるので本来ならATPを置けばよろしいのだが、日向市変電所から72.98㎞もあるので、電圧降下がACVRだけでは、防げなかった。末端のためスコット結線変圧器は置けず単相の変圧器が置かれた。
 その運用は、日向変電所の停電作業、大元の九電の送電線作業等で日向市変電所運用停止時 川南き電区分所ー南宮崎変電所の区間44.02㎞をき電する役目を持っていた。
津久見変電所⇔北村き電区分所(延長き電)⇔川南き電区分所(突合せ)⇔南宮崎変電所

1974年電化当時のき電系統
CRと書いてあるのは高調波抑制のCR装置が置かれていた場所(直川SSP、北川・川南SS)

津久見(AT・BT)変電所から北川き電区分所間60.4㎞
北川き電区分所から日向市変電所間32.69㎞
日向市変電所から川南き電区分所間28.578㎞
川南き電区分所から南宮崎変電所間44.402㎞
と変則的な間隔である。

 そのため津久見(AT・BT)変電所から北川き電区分所間60.4㎞間には直川補助き電区分所が設置された。だいたい30㎞前後でき電区分所、補助き電区分所が置かれ10㎞間隔でATポスト(ATP)が置かれている。

 御多分に漏れず、ここでも特急増発、貨物輸送量増大なので電圧降下が大きくなりACVR(交流架線電圧補償装置が設備されることとなった)
南宮崎までの区間でのACVRの運用形態
 平常時のき電系統は、津久見SSと日向市SSが北川SPで突合せ。直川SSPに置かれたACVRは津久見SS→北川SP方向に電圧を上げている。
 日向市SS、南宮崎SS間は、川南SPにおかれたACVRが日向市SS→川南SP(ACVR稼働)延長き電で南宮崎SS(運転停止)である。
 北川SPのACVRは運転停止(突合せ)となっている。
 
異常時のパターン
1.日向SSが落ちた場合 津久見SS、直川SSP(ACVR稼働)北川SP延長き電(ACVR稼働)日向市SS(突合せ)

2.津久見SSが落ちた場合 日向市SS、北川SP(ACVR稼働)、直川SSP(ACVR稼働)津久見SS(突合せ)
等いろいろなパターンが取れる。

 設備されているACVRは、方向性があるため両方向でのACVR稼働を行うためACVRの前段に切替用の断路器が設備される。

 1979年(南宮崎電化の5年後)南宮崎ー鹿児島間が電化開業

 日向市SSー川南SP(ACVR)ー南宮崎SSは変わらず、都城SSを新設、隼人SPにACVRを設備
都城SSと日向市SS間の南宮崎SSをき電区分所として運用し予備変電所とした。

 南宮崎変電所は電化当時10,000kVAのき電用変圧器であったが7,500kVAに変更されている。ATPは9ケ所

 鹿児島SSPを新設。AT-BT間のき電を鹿児島ATPに担わせることになった。
隼人き電区分所のACVRの方向性は、都城変電所と西鹿児島変電所の系統が同じなので両方向性である可能性が高い。

 日向市SSー南宮崎SS(き電区分所化)73.27㎞
 (日向市SSー川南SP28.59㎞ー南宮崎SS44.40㎞)
 南宮崎SS(き電区分所化)ー都城SS48.952㎞
 都城SS-隼人き電区分所(ACVR)39.66㎞
 隼人き電区分所(ACVR)ー西鹿児島変電所31.289㎞

 日向市SSー南宮崎SS(き電区分所化)73.27㎞は距離が長いので、予備変電所として置いてある南宮崎変電所からのき電ができるようM座の位相がでる変圧器が置いてある。
デッドセクションを挟んで日向市SS側にき電線がワザワザ書き込まれている

 九電の系統を見ると、大淀第二水力発電所からの系統に日向市変電所、南宮崎変電所の系統が繋がっている。反対側の都城変電所は途中大淀第一水力発電所、第二発電所が繋がっており、西鹿児島変電所も繋がっている。

ではACVRの現状はどうなっているか
直川補助き電区分所
 
ACVRは、撤去されている。

北川き電区分所
ACVRは撤去されている。HMCR装置が2組設備されている。


川南き電区分所
ACVRは、撤去されている。HMCR装置が1組設備されている。

隼人き電区分所
 
ACVRは、撤去されている。T,Fに直列コンデンサが入っているようだ。HMCR装置が2組ある。

電圧補償は、デッドセクションがいらないSVCが高鍋駅に設備されている。
日向変電所⇔南宮崎変電所間に設備されている


参考資料(順不動)
石津 紘明;日豊本線幸崎ー南宮崎電化開業:電気車の科学,Vol.27,No.4,pp.58-60,1974
永弘 康則;交流架線電圧補償装置(ACVR)運転表示盤:電気鉄道,Vol.31,No.10,pp.32-34,1977
小野 文雄;日豊本線南宮崎・鹿児島間送電設備について:電気鉄道,Vol.33,No.10,pp.16-21,1979