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2022年11月1日

1257. 信州巡検18 JR東日本 北陸新幹線 被災新赤沼き電区分所の現状 延長き電の実態

 新赤沼き電区分所

 
アプローチ:豊野駅 歩く 
き電区分:新坂城変電所―新赤沼き電区分所―新長野変電所 
     新坂城変電所-36.3㎞-新赤沼き電区分所-5.7㎞-新長野変電所
     新赤沼き電区分所から新長野変電所までは5.7kmしかないので、当初の想定は
     新坂城変電所からの延長き電を第一選択すると思う。

 新幹線 上越妙高駅⇒上田駅間を乗車中 新赤沼き電区分所を通過してもコンセントにつないだ充電器の電源がOFFにならなかった。つまり新長野変電所、もしくは新坂城変電所からの延長き電を行っている。どちらの変電所が延長き電を行っているかは、多分新坂城変電所だろう。

 新坂城変電所も新長野変電所も同一の電源 但し新坂城変電所の主変は変形ウッドブリッジ結線変圧器(同一タンク内に昇圧変圧器を内蔵)、新長野変電所の主変はルーフデルタ結線変圧器の差がある。
明電時報 Vol.344,No.3,pp23-34から引用一部改変
新坂城変電所が77㎸吉田変電所経由受電となっているが間違い(
正しくは275kV信濃東信線から受電


変電所にき電区分所を挟んだき電系統の運用
 北陸新幹線は、赤で囲んだ上下一括=方面別異相上下同相き電で上下タイき電を定位としている。
 今回の水害で新赤沼き電区分所が使用不能で、まだ運用されていない(2022/8現在)は
両端の変電所が同一電源の場合、青の相互延長 並列き電が行われる場合と片方の変電所からの延長き電(緑)が想定できる。



 新坂城変電所は、新軽井沢き電区分所に き電を行っており、両方向にき電を行わないと微妙な新軽井沢き電区分所との連携が取れない。新坂城変電所も新軽井沢き電区分所にも き電母線に並列コンデンサが設備されており回路定数が決まっている。片方き電ではバランスが崩れる。
 
 新長野変電所は、そのような微妙な差が無いし、ルーフデルタ結線変圧器の片座使用が三相交流の一次側不平衡に表れにくい短絡容量をもっているのだろう。新長野変電所は、50Hz受電の新上越変電所が受電不能の場合、救済き電で60Hz電源を新糸魚川き電区分所まで延長できるので短絡容量は大きいと思う。

 新赤沼き電区分所は2019年の水害で水没し、切替開閉器室や機器室が水没している。2022年の夏になっても運用が開始されていない。と踏んだ。

 さて延長き電はどのような方法だろうか? 
制御機器が水没のため使用不能の場合。SN部の断路器を手動で延長き電に切り替えて運用はできる。しかし手動切替のため事故が発生した場合の回復時間が掛かる。またF,Tき電線の延長き電用遮断器も動かす必要がある。

 一番簡単なのは、エア―セクション(中セクションを跨ぐ)をエアージョイント化して1本のトロリ線として運用することだと推測した。つまり新坂城変電所から一気呵成に新赤沼き電区分所を通過して新長野変電所まで 延長き電することである。これならば新坂城変電所から光ケーブルを延長して新長野変電所間で制御を行えば自動制御可能となる。北陸新幹線のき電は、方面別異相上下同相き電で上下タイき電を定位としている。同時にAFき電線(F)も新坂城変電所⇔新長野変電所間を新赤沼き電区分所の線路上のき電区分所架線柱部分でジャンパ線で直結すれば、簡単だ。

 そのため、新長野方のエア―セクションからSN部の中セクション、新坂城変電所方のエア―セクションを調査することにした。
 
 まずはGoogle Mapでエア―セクション部を探すことを行ったが、線路近傍のStreet viewは、過去画像(2012年)で新幹線開業前の画像しかなかった。並行して走るアップルラインの国道からの画像は、最新の画像であったので、それを色々さがして場所を特定した。特に き電線の配置。通常はATき電線(F)だけだが、き電区分所が近くなるとトロリ線側のTが加わりさらに中セクション用のSNき電線が加わる。

 
    新長野SS方エア―セクション部 き電線2本とテンションバランサで確認
 新長野方が判明したら新赤沼き電区分所までトロリ線が見える道を探して新坂城方を見つけるだけとなる。

エア―セクション部の探索範囲
この範囲の中でエアージョイント化されている部分を探す

現地訪問の前に自習

架線は、ヘビーコンパウンドカテナリーだが構成は同じと考えた

エアージョイント部
エア―セクション間を左右のジャンパ線で接続 ジャンパ線部はブラケットで保持
エアージョイント部 左架線柱 最終保持ブラケット 右にテンションバランサ

 右側 テンションバランサ引き止めヘビーコンパウンドカテナリーから 左側 ヘビーコンパウンドカテナリーへジャンパ線で接続 右側最終保持ブラケット これより左はエア―セクション開始

 エア―セクション間のジャンパ部 ジャンパ部は硬点を発生するためブラケット付近にもうけられている

左側 テンションバランサ引き止めヘビーコンパウンドカテナリーから 右側 ヘビーコンパウンドカテナリーへジャンパ線で接続 左側最終保持ブラケット

ジャンパ部拡大

エアーセクション部(セクション間ジャンパ線で接続) パンタ通過中

相互のヘビーコンパウンドカテナリートロリ線間隔は15㎝位か?

エア―セクション部 SNセクションと片方の変電所き電線部

エア―セクションのSN側架線は、碍子絶縁後変電所側の架線(赤)とジャンパ線でつながる

 誘導電圧の均圧化と架線のギャロッピング、ジャンピングした際 変電所側の架線と接触した際の事故防止と思われる

SN部架線(緑)とテンションバランサ側架線(赤)は碍子で絶縁される
碍子部にはブラケットがある
セクション前の標識がある

別角度

次の架線柱 表示がセクション内に変わる 
中セクションき電線(緑)が架線につながる
ここからエア―セクションが始まる

中セクション(緑)のき電線がSN部架線(緑)につながる

SN部トロリ線(緑)にはき電分岐装置が入る
変電所側架線(赤)にもき電分岐装置が入る

エア―セクションの交点

エア―セクションの交点


変電所側架線(赤)に碍子が入る 碍子後のテンションバランサにつながる架線(緑)はSN部の架線とジャンパ線でつながる
架線柱にはセクション0両クリアの標識

比較
確認する部分は絶縁用碍子のエア―セクション交点側に
ジャンパ線でSN部と変電所側が繋がっている部分



現地訪問 

 長野新幹線車両基地変電所も観察しなければならず、その後上田に戻るため時間が限られている。事前学習をして見どころを確認した。


新赤沼き電区分所とき電線引出鉄構

通常のき電区分所 AT4台 切替開閉器上下各2組 延長き電用遮断器で構成

き電線引出鉄構部分

拡大 新赤沼き電区分所に向かう引出き電線は、ジャンパ線が全て外されている。
PWとNWは生かされている。新赤沼き電区分所は分離されて機能していない。

上り方 切替開閉器室前の断路器は閉路 もう一組の予備は開路

下り方 切替開閉器室前の断路器は開路 もう一組の予備は閉路

き電線引出部のき電線配置例 スルー化処理
 赤線11Fと13F,12Fと14Fをジャンパ線で繋げれば新坂城変電所からのATき電線(F)は通過。トロリ線同士11T,13T。12T,14Tは結ばなくともエア―セクションのエアージョイント化で対応可能。SN(中セクション)はいじらない。き電区分所への引出ジャンパ線は、すべて取り外し。

エア―セクションのジャンパ線接続の状態

比較
エアージョイント部のブラケット部分に碍子を入れた状態


まずは、新長野変電所と SN 中セクションのエア―セクション部のジョイント
新長野変電所側エア―セクションのエアージョイント化部分 右にテンションバランサ

拡大

新赤沼き電区分所側エア―セクションのエアージョイント化部分 左にテンションバランサ


拡大

右 新赤沼き電区分所からのT(トロリ線)き電線が架線につながる



Tき電線(トロリ線) とFき電線(ATき電線)


次は、新坂城変電所と SN 中セクションのエア―セクション部のジョイント

新坂城変電所側の架線を引き止めるテンションバランサ


エア―セクションを形成する部分 架線上碍子奥にジャンパ線


エアーセクションのエアージョイント化部分


新赤沼き電区分所からのSN 中セクションき電線が架線柱に引き止められる


新赤沼き電区分所からのSN 中セクションき電線が架線柱に引き止められる

跨線橋からエア―セクション部のジョイントを眺める
エア―セクションの間は50cm位

拡大 絶縁碍子の奥がエアージョイント部 ジャンパ線で接続

エアーセクションのエアージョイント化部分

左に見える跨線橋から観察 き電線はT上り線、F上り線 上りセクション
右 架線上の碍子部分の右がジャンパ部 左は誘導電圧の均圧化のためのジャンパ線



新赤沼き電区分所に向かう き電線 とトロリ線は新坂城変電所側となる

結論
新坂城変電所からの延長き電(エアーセクションのジョイント化)で新長野変電所までつなげている。並列き電かどうかは調査していない。多分 緑で囲んだ方式が無難であろう
緑が無難


参考資料
変電所一般 き電変電シリーズ:日本鉄道電気技術協会