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2017年6月23日

549. JR東海 新幹線 新大阪・京都 6月22日 架線 切断トラブル 考察 鳥飼SSP

JR東海 新幹線 新大阪・京都 架線切断トラブル 考察 鳥飼SSP
 
キーワード 東海道新幹線 架線 切断 トラブル セクション き電区分 き電区分所
        新大阪 京都 西面南 溶断 事故 トロリ線 架線 SSP 断線


JR東海の新大阪・京都間 架線破断事故 番外
JR東海の発表によると大阪府高槻市西面南付近で架線が破断したとの発表 6月22日 

JR東海発表東海道新幹線 京都駅~新大阪駅間下り線における架線の断線について pdf注意

架線の破断箇所には架線磨耗を検知する検知線が入っていたとの情報から考えると、この付近にある鳥飼補助き電区分所のセクション間での電位差による異常電流が原因と思われる。
この時は2回停電が起きたことは、公表されていない。

JR東海発表 事故現場:大阪府高槻市西面南 南にある鳥飼補助き電区分所からのき電線が
この部分に伸びている。(約2Km)これがキモ

JR東海発表 事故現場:大阪府高槻市西面南のエアーセクション箇所
架線ブラケット上にトロリ線 磨耗検知器の表示部が見える(奥 下り線側)


以下設置例 大崎変電所 付近 セクション部  磨耗検知器
上部 ATき電線Fとトロリ線Tおよび下はSN接続
トロリ線ブラケットに架線摩耗検知表示部




トロリ線ブラケットに架線摩耗検知表示部 上り線


SN部(中セクション)トロリ線接続 下り線 上部にTとFがまだ残る
拡大 SN部(中セクション)トロリ線接続 下り線 上部にTとFがまだ残る。







架線ブラケット部に磨耗検知センサー表示部

今回の事故現場の構成

鳥飼補助き電区分所(SSP)のエアーセクション部での異常電流 鳥飼SSPのセクションはこの図ではSSP直下にあるが、実際は高槻方2.1km付近にある

 JR東海のセクション部分には、トロリ線のアークが発生して磨耗する場合の対策として検知線入りのトロリ線が使用されている場合がある。検知線とトロリ線が磨耗して接触すると架線ブラケットの表示器に表示が出る仕組みで早期に磨耗状態を把握して交換するシステムになっている。しかしこれは、その部分だけの検知なので点検しないと発見できない。
 新幹線総合運転所では感知できない異常である。一応セクション部には、カメラが設置されて異常を確認できるようにはなっているが、夜間であり検知器の表示が小さいので見落としていたのかもしれない。異常を無線で飛ばせば察知できるがそこまでは、全線に設置は、まだ改善されていない。


トロリ線ブラケットにトロリ線摩耗検知センサー  武蔵小杉駅付近
多摩川 沼部駅から武蔵小杉駅付近が
多摩川き電区分所のSN部 中セクションがある部分


エアーセクション部 監視カメラ 
同様な監視カメラは、ポイント部など設備故障が想定される部分に設置されている。



次世代光ファイバー式警報トロリ線システム pdf注意
この次世代光ファイバー式警報トロリ線システムは、実試験運用中である。
現在 東海道新幹線 全線にワイヤー式警報トロリ線システムが設備されている
がセクション部での異常磨耗には対応できていない。あくまで運行終了後の本線
停電時に目視で確認するのみである。リアルタイム検知のため光ファイバー検知線を
20kmのセクション毎に設備する予定である。この場合新幹線総合指令所で大体の
磨耗の位置が関知できるようになる。

トロリ線摩耗検知装置 センサー線が入ったトロリ線がエアーセクション部に架線されており
ある程度摩耗するとトロリ線内部に埋め込まれているセンサー線と短絡。
この四角の箱の検知器が作動し表示がでる。本線停電時に作動するよう
電池とタイマーが設置されて四角の窓の部分に表示がでる。25,000V架線上に設置。

新幹線のお仕事 トロリ線の摩耗検知装置について  リンク  JR東海
トロリ線の中に埋め込まれている検知線は、弱いものなので検知線だけでは、トロリ線の張力を支えられず破断する。アークによる異常磨耗と次列車のパンタが「トドメ」をさしたのであろう。
今回のトロリ線破断は、トロリ線だけの破断でありヘビーコンパウンドカテナリーの補助吊架線は、幸いなことに破断していない。


JR東でエアーセクション部の破断では、異常電流でトロリ線が異常磨耗している。(直流であるが)

JR東海 電力①「新幹線が目の前を通過 Q:トロリ線が数日で急にすり減ってしまうことはないのですか?

時系列 JR東海の1回目の発表では、停電が瞬時停電・停電の2回であった。
起因列車は、第241列車東京駅発新大阪駅行G26(N700A)編成 たぶんセクションで停止 再起動時にアーク発生 
最後部の12号車パンタにはアーク痕り車体上部周辺に穴が見られている。列車がセクションを離れる最後尾12号車パンタでセクション間のアーク発生、
この時間が19時48分 瞬時停電発生 
トロリ線がアーク発生部分で破断寸前まで異常磨耗。

900m後方を走行していた第391列車 先頭車両から5号車の先頭パンタで弱くなっていたトロリ線の異常磨耗部分を破断 トロリ線が車両上部に接触して地絡発生。 
19時53分停電
補助吊架線は破断しなかったので、架線ブラケット損傷などのトロリ線を巻き込んだ拡大事故は、防げた
鳥飼補助き電区分所
 
鳥飼補助き電区分所ここから高槻方2.1km地点にエアーセクションの部分がある
 
新鳥飼変電所 車両基地き電及び本線き電

原因
セクション間での電位差もしくは、異相差によるアークの発生

新鳥飼変電所(SS)及び鳥飼補助き電区分所(SSP)通常運転時
の電力供給形態


 この区間は、京都寄りに新高槻変電所 新大阪寄りに新鳥飼変電所(車両基地用と併用)がある。通常変電所間には、き電区分所があるがこの区間にはない。補助き電区分所があるだけである。同一の関西電力からの送電線で受電し、高槻・新鳥飼で同じ位相の交流をき電線にき電すれば並列き電が可能となるが、関西電力側で両変電所に繋がる送電線を一時系統変更して別系統となったためか、それともRPCの異常か RPCは自励式なので発振を起こした可能性もある

 通常は、新高槻変電所から新大阪間は、M座き電 文献の図を見ると補助き電区分所の両端は、M座き電であり、延長き電と上下タイき電中 セクション間に電位は、発生しないはず
 それが、電位差が大きくなり第241列車セクションから離線時にアーク発生、トロリ線異常磨耗となった。

 JR東海の発表によると新高槻と鳥飼SSPの間には、6編成の新幹線が数珠繋ぎ状態で在線していた。これら新幹線が力行状態とセクションを抜ける第241号列車が回生状態を作り出せば、またはその逆であれば、セクション間での電圧差は、発生するであろう。特に新鳥飼変電所とSSP間のき電線の長さが約2.1kmあるのでそのインピーダンスにより電圧差が発生する可能性もある。
 その後の調査でセクション部は、さらに鳥飼補助き電区分所より約2㎞高槻寄りにあることが判明。
 新鳥飼変電所からのき電線は、セクション部まで約2.1㎞。そこから約2㎞の部分までき電線を引っ張っていた。合計で約4㎞ 6編成の新幹線に電力を供給するのは、少し無理がある。

追記
 今までは、下り線ばかりを見ていたが、鳥飼SSP以降 新大阪方にも在線している新幹線があることはが判明。JR東海の記者会見では、鳥飼SSPの高槻方の上下線に新幹線が数珠繋ぎ状態であったことも確かである。

 また新大阪駅のホームにも在線している新幹線があり、新大阪打切り 鳥飼車両センターに回送の列車もあったことが伺える。
 文献によると鳥飼SSPは、上下タイき電・延長き電が定位であったので、かかる状況で新高槻変電所・新鳥飼変電所(自励式電力補償装置のみ運転)がき電を担当した場合完全に変電所の容量オーバーの感は拭えない。
 新塚本き電区分所⇔新高槻変電所の距離は、約25km 以前は、新大阪変電所があったが新鳥飼変電所の新設で、廃止になっているので、その分新鳥飼変電所の自励式電力補償装置でまかなうはずであったが、あまりにも多数の新幹線が新高槻変電所⇔新塚本き電区分所の区間に在線したこと、新鳥飼変電所・鳥飼SSPそしてセクション部までの距離があったので、き電線のインピーダンスによりセクションで電位差が発生したことが伺える。新鳥飼変電所は、77kV受電も行える設備(本線停電時)なので77kV受電も、今回の時間帯に行ったかもしれないが、RPC(自励式電力補償装置)の運転パターンがどうなっていたか解析する必要がある



 自励式電力変換装置の連係運転制御は、非常に難しく連係中の電源が脱落した場合RPCは制御不能となり周波数異常、電圧変動を発生させる。そのため連係電源が脱落した場合速やかにRPCを停止させる必要がある。
本線上の6編成の新幹線が作り出した電流の異常消費が瞬時停電を発生させて架線破断に至ったかは、今後の解析が必要である。


種別列車番号先頭位置km先頭位置先頭車両 車両長400m最後尾と次列車先頭位置
差分km最後尾位置km差分km
のぞみ241号503.9  503.5  
のぞみ391号503.0 0.9 502.6 0.5
のぞみ51号501.5 1.5 501.1 1.1
ひかり521号500.8 0.7 500.4 0.3
のぞみ243号500.1 0.7 499.7 0.3
こだま669号498.1 2.0 497.7 1.6


新高槻SSから鳥飼SSPの間 10.4kmの区間に6編成の新幹線が在線

各新幹線編成との間隔は、最低300m 最高1.6km 一部編成は列車長以下に接近

遠因は、過密ダイヤにあるかもしれない。同様な線区が沼津以北の50Hz電源系で60Hzを作り出している区間に当てはまる。まさに綱渡り制御である。

追記
おりしも24日西相模周波数変換変電所でトラブル 東海道新幹線は、また遅れてしまった。
西相模周波数変換変電所は、1台が回転型から静止型周波数変換装置に交換になったはずだが他の周波数変換変電所と各き電用変電所間の連系運転に問題があるのかもしれない

半導体系素子の大電力フィードバック制御は、難しい

追記 ほほ発生した原因については、当たり 「なぜ」が簡単すぎる 7/23

JR東海発表 7/13 東海道新幹線 京都駅~新大阪駅間におけるトロリ線断線の原因について pdf注意
JR東日本の対応 架線柱の赤帯


JR東日本の新幹線は、補助き電区分所等の架線重複部には、架線柱に赤の帯が入っている。
拡大 JR東日本の対応 架線柱の赤帯



参考文献(順不同)
出口善高;新幹線車両基地変電所への自励式電力補償装置の導入
:鉄道技術連合シンポジウム講演論文集,2012,(CD-ROM),19th,論文No.1620,(J-RAIL2012))

石津成一:東海道新幹線における「警報トロリ線」の実用化
鉄道と電気技術;1996,Vol.7,No.11,pp.19-22

加藤直文ら:光ファイバー式警報トロリ線システムの監視延長に関する検討
電気学会論文誌/D/産業応用部門誌,2015,Vol.135,No.4,pp342-347

メンテナンス技術チーム:光ファイバー式トロリ線磨耗検知システム:JR東海技報,2005,Vol.4,No.3,pp.30-33

クローズアップテクノ(1)警報トロリ線:2003,No.5,pp.36-39

出口善高ら:新幹線新鳥飼変電所の新設:鉄道と電気:2012,Vol.23,No.1,pp.38-40