目次と免責事項

2017年3月26日

487. 直流電化区間のデッドセクションとエアーセクション 

487. 直流電化区間のデッドセクションとエアーセクション 


 実は、直流電化区間でもデッドセクションの表記は、実務上存在している。しかも都市近郊での私鉄での運用が多くされている。JR東日本では、都市近郊のすべての直流変電所を調べたが見つけることができなかった。これは企業風土によるものだと思われる。

 さて内房線には、地磁気観測所(鹿野山測地観測所)があるので直直デッドセクションがあるとのWikipediaの項目で交流電化・気象庁地磁気観測所の記事があるが、実際に確認したところ交直デッドセクションや交交デットセクション・直直デッドセクション(他社乗り入れ線区等)でみられるような、FRP製のインシュレーターでの死電区間は、架線には存在していない。
該当する変電所は、君津変電所・大貫変電所・佐貫町変電所・竹岡変電所
となる。

この項 佐貫町変電所 佐貫町変電所 ブログリンク
竹岡変電所   竹岡変電所 ブログリンク
大貫変電所  大貫変電所 ブログリンク
大貫変電所 最新記事 
750. JR東日本 内房線 直直デッドセクションはあるか 大貫変電所 回生電力貯蔵装置の実態 ブログリンク
君津変電所  君津変電所 ブログリンク
各変電所の区分区間は、単なるエアーセクションである。変電所間隔は約最大6km

木更津変電所および安房勝浦変電所は、鹿野山より約18km離れている

鹿野山測地観測所と各変電所の間隔

それゆえ内房線には直直デッドセクションは存在しない。変電所の区切りはエアーセクションで、通常の直流電化区間の変電所の区切りと同じである。 

直流電化区間で、表記上の実際のデッドセクションに遭遇したのは、メトロ和光変電所が初めてである。 

特徴:エアーセクションで挿まれたデッドセクションがある。デッドセクションは上り(A線)、下り(B線)にあり変電所から直接き電線が繋がっている。この方式を練馬変電所の時に述べた72Fき電方式もしくは3き電方式と言う。
き電線 正き電線和光市方面A線 和光市方面に変電所有り



なんと デッドセクションの表示

平和台方面 正き電線B線

こちらもデッドセクションの表示


左より 和光市方面 デッドセクション 和光市方面き電線A、B線 
平和台方面き電線A、B線 デッドセクション
と言うことで、和光市方面と平和台方面に変電所あり
   直流でのデッドセクションは、パンオーバー対策で変電所のき電区分部分に設けられている。パンオーバーとは、たぶんパンタグラフ オーバーの和製英語であると思われるが接地された(停電している)区間に電車が進入し、パンタグラフで直流引き通し線上の接地(停電)部分パンタとき電されたパンタ部分がつながることを意味している。それにより停電作業中の作業員の感電、パンタ・架線の溶断・機器の損傷などを引き起こす。工事等で停電作業を行うときは、電力係員が当該区間の該当変電所のき電停止を電力指令に通告し、架線の検電を電力係員が行い、接地線を架線に接続してパンオーバーが発生しても作業員の安全が保たれるようになっている。また大規模工事などは、電力係員がいなくとも動力式検電接地装置で接地作業が行うことができる。

動力式検電接地装置

またターミナル駅での電車屋根上の積雪除去での利用もある。停電して屋根の上の雪を除雪する際に架線を停電させる。

東京駅 中央線 の場合は、動力式検電接地装置ではなく区分断路器方式
この設備は、撤去された。

中央線 インテグレート架線の区分 給電点 
積雪時のホームでの電車屋根の雪おろしのため駅手前で
インテグレート架線が区分され停電が可能な形となっている。
右 き電区分にある 断路器(キュービクル収納)
上部インテクレート架線部 区分
トロリ線部もインシュレータで区分




左 き電区分にある 断路器(キュービクル収納)
上部インテクレート架線部 区分
トロリ線部もインシュレータで区分




キュービクル部拡大 



改良型インシュレータ


直流電化区間のでのデッドセクションは、FRPインシュレーターが連なっている訳ではなく電車長の架線両端に、エアーセクションを設け、そのエアーセクション間をデッドセクションと呼んでいる。

 東京急行電鉄では72D方式、東武鉄道では、Zセクション方式もしくは中間セクション方式、小田急電鉄ではW方式と呼ばれている。

このエアーセクションが2段重ね対策は、セクションオバーを防止するため設定されている
セクションオーバーの定義(日本鉄道電気技術協会編:直流高速度遮断器より引用)
地絡事故で停電あるいは、停電工事を施工している区間に電車がエアーセクションを通過し
たため故障区間と健全区間のトロリ線を一瞬短絡した場合
出合い頭の事故として
1.地絡箇所に再度地絡電流が流れて事故被害拡大
2.電線に触れていた人が感電
3.パンタグラフを介して流れた電流が原因で、トロリ線やすり板を損傷

JR東日本では、数々の変電所を巡ったが、この方式は巡り会わなかった。

直流接触器(72F)を利用した方法 こちらが一般的
平常時すべて「入」の状態 54F3部分で地絡発生
54F3停電とともに72F0も開放
停電区間に54F1区間から電車が侵入したとき72F0と54F3のエアセクションをパンタが短絡しても
事故電流が流れない
「鉄道に関する技術基準(電気編)」の記載の方式
平常時54Fすべて「入」の状態
54F3地絡発生時 54F3開放 54F0も開放
停電区間に54F1区間から電車が侵入いたとき54FF0と54F3のエアセクションをパンタが短絡しても事故電流が流れない



上記 説明と同じ 但し直流接触器がここでは高速度遮断器54Fに変更されている

東京地下鉄 有楽町線 例示 和光駅付近エアーセクション 上述
  
和光市方面 B線エアーセクション 架線が二重



デッドセクションと表示された き電線が繋がる。一番右のき電線
エアーセクション 表示 和光市方面 デッドセクションと表示された き電線が電柱に引き止められる

エアーセクション部拡大 南千住変電所でも同様な、ごついセクション部
架線が強化されている
エアーセクションで構成されたデッドセクションで停止中(かなりの長時間)
エアーセクションで停止してもトロリ線が溶断しないよう強化されている。
このエアーセクションで挟まれたデッドセクション部に電車が停止すると、一定時間後に変電所が自動的にき電停止を行うと教科書には書かれているが、和光市のこの部分では、有楽町線・副都心線・東武線が乗り入れを行うので恒常的な遅れが発生し、和光市駅手前の高架部で長時間電車が停止することがあるが停電(き電停止)することはない。

小田急電鉄 足柄変電所 セクションオーバー防止装置 Wセクション方式

変電所 直下のセクション部



足柄変電所 松田寄りにある断路器 Wセクション用


き電区分 部分


Wセクションの断路器


小田急線 湘南台変電所 き電部 セクションオーバー防止装置 車軸検知方式

セクション部の注意標識




セクション部に電車が止まると検知する装置 セクションオーバー防止装置
線路に検知用センサー黄色が見える

セクション標識は大きい
小田急電鉄 東海変電所 き電部 セクションオーバー防止装置 車軸検知方式

セクションオーバー防止センサー 線路の白い部分


東海変電所区間はWセクション方式とはないので
セクションオーバー防止装置が設備されている


 JR東日本では、き電区分区間の停車(エアーセクション部)で架線溶断事故(並列き電変電所間の電位差が原因)を何回も発生させているが、東京近郊の私鉄では、めったにこのような事故は発生していない。この電位差による溶断は先に述べた72F(D)き電方式もしくは3き電方式で回避できているのか、はたまた架線強化で対応できているのか不明である。
東京都交通局の大江戸線は、駅部がこのエアーセクションで区分されたデッドセクションで構成されている。

この部分からエアーセクション(変電所き電区分)

JR東日本のエアーセクション部での溶断防止策は、いろいろ執られているようである。

この発表の標識提示されている写真(ゾーン表示のイメージ)は、なぜか交流電化区間であり直流ではない。その証拠は碍子の数が全然違う また発生防止策で述べられている強化架線は下記に述べる。

TC型エアセクション強化架線 JR東日本 pdf注意 

現場確認(現在 撤去されている)
西立川・立川間 青梅方面下り線 TC型エアーセクション入り口
区分標識がある

TC型エアーセクション

架線とTC型架線の取り合い 導入部


TC型エアーセクションと注意喚起標識
 強化架線の敷設は、事故を起こした、大宮・さいたま新都心駅間、錦糸町・両国駅間、立川・西立川駅間(現在撤去されている)等で行われているが、すべてのエアーセクション(変電所き電区分)での対応は、エアーセクション部を抜けたことを標識で確認することが主である。

例示引用 JR西日本の場合 標識 JR東も同様な標識があり 

 変電所のシリコン整流器をPWN型のコンバーターにし、変電所間の電圧・電流の情報をIoT技術で制御すれば、変電所間の電位差が少なくなると考えるが首都圏全域の交換は無理な話である。 

 少なくとも変電所 直下にエアーセクションがあれば変電所側は、母線で繋がっているので電位差は出ないはずである。しかし高密度線区だと回生電力も加わり架線電圧の差が生じやすくなっている。本線と支線間の区分でも、同様に電車密度の関係で電位差が生じる。

この項 橋本変電所の項参照
 茅ヶ崎線 茅ヶ崎方面(橋本の方が高度が高い)に向かう電車の回生電力が横浜線に母線を通じて流れ込む。相模線 次変電所 海老名変電所16.2km
相模線は、単線ため、走行する列車本数も少なく発生した回生電力を変電所区間内で消費できない。そのため変電所母線を通じて、他路線へ融通される場合があるそうである。相模線の場合、橋本変電所の母線電圧が低いため、相模線から横浜線側に融通されることが多いそうだ。

 またエアーセクション部が変電所と離れた部分に位置する場合は、架線およびき電線の距離による抵抗が生じ架線電圧が変化する。

 つくばEXでは、直流電化区間に変電所間の電位差が少なくなるようにPWN型のコンバーターを導入して運用をしている。これは、地磁気観測所が柿岡にあるためでもある。


備考 本Webではエアーセクションと記載しているが、グーグルの検索で
エアーセクションでは約433,000件 
エアセクションでは約406,000件
“エアーセクション”-“エアセクション”では422件
なのでエアーセクションで通す。
なお鉄道技術用語辞典(鉄道総合技術研究所編)ではエアセクションで引っかかる。

参考文献 

日本鉄道電気技術協会編:直流高速度遮断器 pp.30図4.6.2、pp.31図4.6.3 引用
日本鉄道電気技術協会編:き電変電シリーズ、変電所一般 pp.34図1 引用