2018年2月20日

750. JR東日本 内房線 直直デッドセクションはあるか 大貫変電所 回生電力貯蔵装置の実態

内房線 直直デッドセクションはあるか 大貫変電所 回生電力貯蔵装置の実態

2019年 現在 回生電力貯蔵装置は、試験期間が終了し撤去された。



2018年 まだ試験設備はある。





大貫変電所は、グーグルマップ上では表示名が表示されない
受電:JR東日本 佐貫町変電所よりの き電補助線33kV 1回線受電
き電:内房線
特徴:狩野山測地観測所の地磁気測定に擾乱を起こさないよう  き電区間が約5kmで区切られている。変成設備容量も3,000kWと小型化されている。直直デッドセクションは、無い。 
この画像の空いている部分に回生電力貯蔵装置が設置された。
 Wikipediaの気象庁地磁気観測所の項目には、鹿野山にある建設省国土地理院の測地観測所で行っている地磁気観測に影響を及ぼさないよう、内房線(房総西線)電化の際に、直直デッドセクションを設け、変電所間隔(大貫・佐貫町・竹岡変電所の区間が該当)を短くして地磁気観測に影響を及ぼさないように対応したとの記載がある。実際のところ2014年に調査した際には、変電所間隔は、約6kmに区切って設置されているが直直デッドセクション(トロリ線の間にセクションインシュレーターを挟んだもの)は、見つけることができなかった。
電化当時のき電系統(房総西線と呼称されていた) 実は君津変電所は整流ポスト(Rectification post)であった。
また佐貫町変電所からのき電補助線で33㎸の給電を受けていた

木更津変電所 君津変電所間のエアーセクション 
車中より 木更津変電所 君津変電所間のエアーセクション 直直デッドセクションは無い

 君津変電所 大貫変電所間のエアーセクション 
車中より 君津変電所 大貫変電所間のエアーセクション 直直デッドセクションは無い 奥に大貫変電所
 大貫変電所 佐貫町変電所間のエアーセクション 

車中より 大貫変電所 佐貫町変電所間のエアーセクション 直直デッドセクションは無い 奥に佐貫町変電所

 佐貫町変電所 竹岡変電所間のエアーセクション 

車中より 佐貫町変電所 竹岡変電所間のエアーセクション 直直デッドセクションは無い 奥に竹岡変電所

 今般 大貫SSに回生電力貯蔵装置が設置されて運用開始しているという報道があったので、ひょっとして直直デッドセクションをトロリ線に、挟んでき電区分を厳密に区切って測定しているかも?!という予測が働いたが、結局のところ空振りであった。以前のままのエアーセクションで き電区分が行われていた。
大貫変電所 と君津変電所間のエアーセクション 変化なし 現地2018年
JR東日本
列車位置情報を活用した変電設備スリム化の実証試験について JR東日本 pdf 注意

JR EAST Technical Review No.63 - 2019より引用Special edition theme 「エネルギー・環境」

電力貯蔵装置を用いた変電設備スリム化と 列車位置情報制御の実証試験 JR東日本 評価発表pdf注意

JR EAST Technical Review No.62 - 2019より引用Special edition theme 「オペレーション&メンテナンス」


蓄電機能を応用した変電システムスリム化の研究pdf注意


以下引用
「列車位置情報を用いた効率的な蓄電池の充放電制御」に関する実証実験
当社で既に導入している回生電力貯蔵装置(拝島変電所・桶川変電所・久喜変電所)は、架線電圧の値によって充放電を制御し、電車に電力を供給しています。その結果、実際は電車が電力の供給を必要としない場合でも架線電圧によっては充放電してしまうことがあり、蓄電池容量はこの不必要な充放電を考慮して決定される課題が生じていました。
「列車位置情報を用いた効率的な蓄電池の充放電制御」では、GPS による列車位置情報を用いて適正な位置に列車が在線しているときのみ充放電する制御を行うことで、蓄電池の小型化ならびに長寿命化の実現が期待できます。
2. 試験内容
(1)試 験 箇 所 内房線 君津~上総湊間 大貫変電所
(2)実 施 時 期 2017 年10 月25 日~2018 年6 月(予定)(試験終了後に装置は撤去予定)
(3)試 験 内 容
① 回生電力貯蔵装置による列車への電力供給データの取得
② 回生電力貯蔵装置の列車位置情報を用いた制御方法の優位性の検証
③ 隣接変電所の異常時を想定した、回生電力貯蔵装置による列車への電力供給データの取得
引用終わり
 この区間は、過去の論文で き電補助線33kVの維持もしくは撤去を念頭に電力貯蔵装置の設置をシミュレーションしていた区間であり今回も、検討事項の中で変電所のスリム化として代替の対象として電力貯蔵装置の設置が謡われている。

また事のついでに総武本線、成田線(我孫子支線、空港支線を含む)、外房線、内房線にある全ての変電所の取材を行ったのでこの項の後に順次記事をUpする。

 大貫SSには、プレハブの建屋が建て増されていたほかは、試験設備機器の増設は見当たらない。電車からの位置情報取得用のアンテナも見られない。(JR東日本の発表資料では、電車位置情報を電波で大貫SSに送っているように見受けられる)

中央建屋に回生電力貯蔵装置が設備されている

直流高速度遮断器が収納されているアルミプレハブに新設されたアンテナらしきもの
拡大 平面アンテナ? ペリカンの防水ケース様に収納 左からケーブル
 帰線にもCTは着いていないし、き電線にもCTは付いていない。大貫SSは、他の変電所に見られるような延長き電用の断路器は、外部に露出して設置はされていない。
き電線引き込み部分
右 整流用変圧器、バスダクト直結シリコン整流器SR3000kW、直列リアクトルSL 変化なし
33㎸ き電補助線 佐貫町変電所から

佐貫町変電所方
33㎸ 受電最終鉄構 避雷器が咬ましてある 大貫変電所
 プレハブの建屋は、大小二連が連なったL字型で大きいほうは、JRの報道からみると蓄電池が設置されている。小さいほうは、計測機器や、蓄電池の制御用機器が納まられていると思われる。

奥のプレハブ建屋が回線電力貯蔵装置が収納されている

手前 アルミプレハブ 直流高速度遮断器収納 正極、負極母線断路器収納 建屋
奥 回生電力貯蔵装置が収納されたプレハブ建屋


中央建屋に回生電力貯蔵装置が設備されている


 以前からあるアルミプレハブには、直流高速度遮断器、正極、負極母線断路器が設置されている。高床式なので下部が き電線の引き回しに当られているが、この部分に先のプレハブ建屋から2経路のき電ケーブルが引き込まれている。変成設備の直流母線に片方がつながり、もう片方が帰線側だと思う
き電線が建屋に入る 多分 帰線側
既存き電線が立ち上がる部分にき電線が収容 多分 母線側
既存き電線がクリートでと留められている

奥の回生電力貯蔵装置にケーブルが延びる コルゲート菅で保護
 君津駅から竹岡駅間の勾配をプロットしてみた。但し地形図からのプロットなので線路の道床の高さ・路盤の高さは考慮していない。そのため湊川の橋梁部分では、海面高なので0mを記録している。
大貫変電所から竹岡変電所間は、かなりのUpDownの連続
 大貫SSから竹岡SS間は、かなりのUpDownのある線区であることが伺える。このUpDownを上手に利用して、大貫駅交換、佐貫町駅交換の単線運転でのデータ取りを行うようである。報道内容からGPSを利用した列車位置情報の取得を行うようであるが、大貫SSからは、トンネルもありさらに山間部に入るため電車でのGPS信号の受信がコンスタントにできるかが問題であろう。また電車位置を大貫SSに戻すためには、動いている電車からデータを取り出さなければならない。
 このデータに欲を言えば、運転台の架線電圧と電流計(力行・回生)をつけて大貫SSの処理装置に送りデータ処理を行えば、運転手の癖による運転パターンの解析を含めて回生電力の有効利用が検討できると思う
 すでにJR東日本では、GPSを活用した列車接近警報装置が開発されており、Know-Howの蓄積は十分と踏んでのことだろう。
GPS端末としては、報道の情報から見ると、タブレット型に端末であることが伺える。
 
御殿場線の運転席GPS端末(JR東海)例
GPSで位置情報を取得 リアルタイムで表示

さて試験項目は以下の通り
① 回生電力貯蔵装置による列車への電力供給データの取得
② 回生電力貯蔵装置の列車位置情報を用いた制御方法の優位性の検証
③ 隣接変電所の異常時を想定した、回生電力貯蔵装置による列車への電力供給データの取得

このような試験を行う背景は以下の通り
既に導入している回生電力貯蔵装置(拝島変電所・桶川変電所・久喜変電所)は、架線電圧の変電所出力端の電圧値によって充放電を制御し、電車に電力を供給また回生電力の受領をしている。
 その結果、実際は電車が電力の供給を必要としない場合(回生状態)でも架線電圧によっては蓄電池を放電してしまうことがあり、その逆で供給を必要する場合(力行状態)でも架線電圧によっては蓄電池を充電してしまうことがある。そのため蓄電池容量はこの不必要な充放電を考慮して決定されることとなっていた。
「列車位置情報を用いた効率的な蓄電池の充放電制御」では、GPS による列車位置情報を用いて適正な力行。回生ポイントを把握して、架線電圧によらない蓄電池の充放電を制御することになる。

 ただこの力行、回生の電力をうまく使うには、変電所母線からの次変電所への横流をどう制御するかが必要である。直流変電所の場合、すべて並列接続であり、所内母線を介して電力のやり取りが発生する。相模線の例では、相模線の回生電力が、橋本変電所の母線から横浜線へ横流でとなって流れる状態が確認されており、この内房線の例を考えると、大貫変電所から君津変電所へ、また大貫変電所から佐貫町変電所への横流が想定される。

廣瀬 寛ら:運動エネルギーの定量化
JR EAST Techical Review;2012,No.40,pp.29-32

リンク 運動エネルギーの定量化 JREAST 文献 pdf

架線電圧によらない充放電だと、蓄電池の出力を電力変換装置で架線電圧より高い電圧での送り出し(放電)、また架線電圧より低い電圧での充電。この場合昇圧して蓄電池の電圧よりも高い電圧での充電が発生するがいったいどのような状況で充放電を行うのか知りたいところだ。

 今回の回生電力貯蔵装置は、大掛かりなものでなくコンパクトにまとまっており、蓄電池として何が使用されるかは資料に書いていない。ただ竹岡変電所に電力貯蔵装置を設置するシミュレーションでは日立製のB-Chopシステムを想定して計算をしていた。

 変電所がなくとも、回生電力の貯蔵のみで君津変電所⇔佐貫町変電所、佐貫町変電所⇔安房勝山の間を補間するには、特急電車が無いものとして運行を行えば耐えられるシステムが作れるかもしれない。この区間のき電補助線33kVの撤去を考えるなら、早く手を打たないと、既にトンネル部の山越えの33㎸送電線が、ケーブル化されている区間も発生しているので、無駄なコストが発生する。

既に山越えの送電線を廃止して、トンネル沿いに敷設している区間 内房線


グーグルアースより 送電線のケーブル化箇所
送電線が引き下され白のトラフが線路沿いに敷設 右トンネルをぬける 
おまけ 
現在のき電系統
現在は、変電所と格上げ



電化当時のき電系統(房総西線と呼称されていた)
整流ポストと呼ばれていた(RP)
上図と同じ変電所 単結線図 過去のもの
RP=整流ポストには、遮断器も直流高速度遮断器も無い。ただ断路器はある
中心のSSが佐貫町変電所に該当 右 竹岡RP 左 君津、大貫RP
青掘駅構内 背高の架線柱 かつてこの部分に33kV き電補助線が張られていた
手前君津方 奥 大貫方

大貫変電所 君津変電所方 背高の架線柱 かつてこの部分に33kV き電補助線が張られていた

電化当時は、君津変電所は、佐貫町変電所からのき電補助線33㎸で給電されていた。
また君津、大貫、竹岡は「整流ポスト」=RPと呼ばれ、変電所とは区別されていた。違いは
交流側の遮断器と直流高速度遮断器が省かれ、佐貫町変電所で事故時の停電を操作していた。
理由としては、安価にする。変成設備の収容面積を最小にすることである。
今は、変電所に格上げ

そのため以下の変電所(過去整流ポスト)は、線路沿いの狭隘な場所に押し込まれている

114.君津変電所   君津変電所 ブログリンク
116.大貫変電所          大貫変電所 ブログ リンク
117.竹岡変電所          竹岡変電所 ブログ リンク

国鉄時代整流ポストとして運用していたのは、この場所と同じようにき電補助線が引かれていた村上変電所(村上整流ポスト)が該当する。
700. JR東日本 村上変電所(交直)とデッドセクション 羽越本線 700投稿記念 元旦号 ブログリンク
過去の平林変電所と村上整流所(整流ポスト・RP=Rectification Post))
 

君津変電所は、その後君津駅始発電車の増発および近郊都市圏内の最終端として増強されて
66㎸受電となった。


Google Anal.での分析で東洋経済の記事が反応したので別途書き起こし
887. JR北海道 交流変電所分布と直流変電所(整流ポスト)東洋経済の記事の考察 ブログリンク

参考文献
市原 剛ら;内房線への電力貯蔵装置の検討:
電気学会全国大会論文集(CD-ROM),No.5-083,2014,pp.145-146
 この論文では、竹岡変電所への設置での検討。大貫変電所への設置にも言及
竹岡変電所は、取り付け道路が狭く変電所敷地も空きがないため、大貫変電所に白羽の矢が当たった模様
丹羽 正信ら;整流ポストRP:電気鉄道,1968,Vol.22,No.6,pp.25-26
藤村 敏郎ら;房総西線整流ポスト区間人工故障試験:鉄道技術研究資料,1970,Vol.27,No.6,pp.14-15

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