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2024年1月15日

1346.  JR四国 琴平駅出発を待つ EF210-312+ザ・ロイヤルエクスプレス+マニの電源事情

 ロイヤルEXP運行に向けて準備始まる カギは安全運行、運転士講習2023年朝日デジタル

以下引用

 私鉄大手の東急(東京)の豪華観光列車「ザ・ロイヤルエクスプレス」が来年1~3月、初めてJR四国の路線を走る。3泊4日で96万円以上と破格の高価格帯のツアーで、カギを握るのが安全運行だ。運転士の講習が実施されるなど、本番に向けた準備が本格化している。(中略)

 ザ・ロイヤルエクスプレスは架線から電気を取るパンタグラフやモーターのついた電車だが、JR予讃線には、車両の大きさに比べて断面積が小さいトンネルがあり、パンタグラフを取り外さなければ通過できない。このため、全区間を電気機関車が牽引(けんいん)する。

 担当するJR四国の運転士は電気機関車の運転免許を持つ40~60代の6人。児島―高松間はJR西日本所有のEF65形電気機関車、高松―琴平間、多度津―松山間、松山―今治―高松間はJR貨物所有のEF210形を使う。

引用終わり


 JR四国の電化路線の変電所は一部を除いて3,000kWシリコン整流器1台の設備である。これは10㎞間隔に変電所があるとしても弱い き電設備である。そのため高松貨物ターミナルができた際のEL入線のために新しく、鬼無変電所が増設された。JR四国 高松変電所からの自営送電線22㎸で受電されている。
 ザ・ロイヤルエクスプレスが運行される児島ー高松間の き電は四国連絡橋部分が上下方面別き電 宇多津き電区分所から高松駅までが上下一括き電、宇多津き電区分所から丸亀駅までが上下方面別き電で丸亀駅の宇田津方で上下方面別き電線が1本にまとまり上下一括き電となっている。

 さて 琴平駅まで電化されている土讃線には変電所は無い。分岐点の予讃線 多度津変電所からの き電を行っている。つまり琴平駅-多度津駅間11.3kmは予讃線 多度津変電所からのき電のみで電車を運行している。多度津変電所から片送り11㎞は末端で電圧降下を起こす。

土讃線 多度津ー琴平間のき電状況 Google my Map

  ここにELのEF210形が単独入線すると末端の琴平駅で運転時にどれだけ電圧が下がるか概算してみた。EF210形は1パンタで入線。直吊架線方式なので2パンタにすると押上力が強くなるため。
 文献よりトロリ線は110㎟、き電線は硬アルミ撚り線510㎟×2条、き電分岐装置は250m間隔。距離11kmとした。但しき電線とき電分岐装置間の抵抗値は0Ωとした。またパンタ摺板とトロリ線に間の抵抗も0Ωとした。直吊架線方式なので吊架線の抵抗は無い。帰線となるレールの電気抵抗も0とした。車輪とレール間の電気抵抗も0とした。

抵抗率 トロリ線 110㎟ 0.1592Ω/km 
    硬アルミ撚り線510㎟ 0.05463Ω/km/1条 

 トロリ線250m分の抵抗と硬アルミ撚り線250m2条の抵抗の並列抵抗値を算出して直列に44個(11㎞/0.25㎞)繋げた場合の抵抗を算出

250m分の抵抗 0.00582Ω
トロリ線250mの抵抗値0.03955Ω 
硬アルミ撚り線の抵抗値0.01366Ωが2条並列で0.00683Ω
これが並列接続された時の抵抗値を求める。

 250m分の抵抗(き電線510㎟×2+トロリ線110㎟) 0.00582Ωこれが44個直列に繋がると0.2561Ωとなる。

V=IRで電圧降下を算出 ちなみに硬アルミ撚り線510㎟2条で約1,860A流せる(常用温度)
多度津変電所の送出し電圧は1,600Vで2,000Aまで定電流・定電圧とする。(タップ切替で電圧を高め設定していると仮定)

 文献によると3,000kWのシリコン整流器が設備されているので1,600V 1,875Aが通常定格となる。但しシリコン整流器の定格はE種なので電流は120% 2時間までは耐えられる

末端で起動時1,000A消費された場合 0.2561Ω×1,000A≒256V
1,600V-256V=1,344V末端電圧

末端で起動時1,500A消費された場合 0.2561Ω×1,500A≒384V
1,600V-384V=1,216V末端電圧

末端で起動時2,000A消費された場合 0.2561Ω×2,000A≒512V
1,600V-512V=1,088V末端電圧


 ちなみにJIS 60㎏/mの断面積77.50㎠の鋼の線条11㎞の抵抗値は0.1419Ωとなる。線条だから2本並列繋げると0.07095Ωとなる(鋼の抵抗率を抵抗率 ≒10.00×10-8 [Ωm])但し漏れ電流もありこの計算通りにはならないので省いた。

 帰線電流を考慮する場合 架線+き電線の合成抵抗値と線条抵抗値を直列にしたことに単純化できるので0.2561+0.07095=0.3271Ωとなる。末端で1,500A消費された場合
0.3271Ω×1,500A≒491V 1,600V-491V=1,109Vとなる。

 EF210形 定格出力 3,390kW(主電動機565kW×6) 1,500V 2,260A 1C1M×6で制御
でVVVFインバーターが働く最低電圧は約1,100Vとすると力行電流1,500Aが最高値になる。1C1M制御で6個の電動機を制御して架線から取る電流を1,500A以下にしないといけないので土讃線運行時は当然ノッチ制限が掛かる。

 多度津変電所は、土讃線だけでなく予讃線にも き電しているのでEF210形が電力を多く使うと繋がっている予讃線も電圧降下を起こす。このため使用電力が大きいサンライズ瀬戸(編成出力220kW×8 = 1,760kW)や今度入線するザ・ロイヤルエクスプレス EF210牽引(3,390kW)が入ると土讃線の電車運用が一部気動車運用になる。

 多度津変電所は以前は3,000kWのシリコン整流器2台で運用していたが現在では1台運用となり四国電力からの回線も66㎸2回線から1回線に変更になっている。2台運用なら余裕だと思うが、設備減縮のため1基停止、受電契約も1回線にしている。

JR四国 多度津変電所 1Lから受電 但し2021年時のGoogle street View
 四国電力の66㎸系統図でも四国電力 多度津変電所66㎸ 需要家線(No.84)1回線受電となっている。
手前 断路器(開路)と上部母線間のジャンパ線は取り外されている
奥にあるのは整流用変圧器、横のキュービクルはFL(電力沪波器)だが頭頂部のき電線が無い
但し2021年時のGoogle street View

 奥に見えるのは現在運用中の変成設備 3,000kWのシリコン整流器と正極負極母線断路器
2基の変成設備があるが1基だけで運用。2基目の整流用変圧器からの交流1200V線は取り外されておらずシリコン整流器に繋がる。シリコン整流器からの正極、負極母線は取り外されていて無い。 但し2021年時のGoogle street View

2024年のGoogle street View上空画像
2021年と比較して変化が無い 変成設備(整流用変圧器・シリコン整流器)は1基で運用


参考資料
小林健蔵;電車線路電気抵抗はなぜ距離に比例するのか-1- :鉄道と電気,Vol41,No.9,pp.
57~60,1987
小林健蔵;電車線路電気抵抗はなぜ距離に比例するのか-2- :鉄道と電気,Vol41,No.11,pp.
63~68,1987
小林健蔵;電車線路電気抵抗はなぜ距離に比例するのか-3- :鉄道と電気,Vol41,No.12,pp.
43~53,1987
小林健蔵;電車線路電気抵抗はなぜ距離に比例するのか-3- :鉄道と電気,Vol42,No.01,pp.
52~59,1987