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2025年7月15日

1502.  日赤 廃棄血液製剤(FFP)の事案解説 番外

本 ブログに関係ないが、報告が遅れたことが問題であり、あえてUpする。

東京都赤十字で血液製剤1・3万本使用不能に…冷凍庫の電源喪失で、日赤は1か月後に厚労省に報告 読売新聞Web 特ダネ

以下引用

 関係者や都赤十字血液センターによると、5月11日午後10時半頃、血液製剤を保管している同センター辰巳供給出張所(江東区)で、冷凍庫の電源が落ちて警報が作動した。通報で駆け付けた業者が修理して約4時間後に復旧した。
 だが、温度監視システムを確認したところ、冷凍保管の基準温度(マイナス20度以下)を上回る状態が2時間半続いていたことが判明。120ミリ・リットル容量の1691本、240ミリ・リットルの1万1796本、480ミリ・リットルの261本のFFPが使えなくなった。

引用終わり

 冷凍庫の電源が落ちて警報作動までは通常の状態、温度管理システムは2系統あり、冷凍庫本体に元々付属するものと、それが故障した際の別の温度監視装置があり、これが両方とも警報を発報したようだ。

 冷凍庫の扉を開けなければ冷凍庫内の温度の急上昇はないが、容量一杯に詰め込んでいる場合は温度上昇の速度が速まる。

  冷凍庫のFFPを別の冷凍庫に移送して修理を行なえば問題は発生しなかったが、そんなコンテンジェンシープランは無かった。そのため保管したまま修理を行なったと推測できる。

 修理後 温度管理ロガーの温度を確認したところ-20℃以上になっていたというのが真相だろう。

 血液製剤の製造規範GMPの逸脱で、保存温度上昇が貯法-20度以上になったことが判明したためで 凍結状態が解除され液体になったわけではない

血漿分画製剤を ご理解いただくために 以下引用


今回は、多分全血採血からの新鮮血漿製剤なので以下の赤枠内の物となる


 以下は日赤Web情報

今回のFFPは、全血採血と血漿だけ分離する成分採血が混ざっている。
貯法温度 逸脱のFFPは緑枠内の血漿分画製剤用原料となる


 新鮮凍結 血漿(FFP・Fresh Frozen Plasma)なので赤血球は、混ざっていない。赤血球は、CPD液を加えた後、遠心分離して除かれているので単黄色の液体 これを凍結して製剤化している。

 凝固因子が含まれているので凝固因子が働き凝固するのでCPD液を加えて凝固因子が働き出さないようにしている。クエン酸は凝固因子の働きを抑えるキレート剤として加えている。ブドウ糖は等張にするため。リン酸塩はPH調整

新鮮凍結血漿-LR「日赤」 添付文書

原則 1採血者=1バックとなる。

 使用期限があるので、使用期限が過ぎたものは、アルブミン製剤・グロブリンの原料として再利用される。

 今回は温度上昇による逸脱なので、全量廃棄とはならず北海道にある血液センターに送られるか血漿分画を行なっている製薬メーカー(JB・ベネシス・武田)に送られアルブミン製剤の原料として再利用される。

例 赤十字アルブミン25%製剤 添付文書

アルブミン製剤は保存は室温で保管できる。
カプリル酸は血漿製剤からγグロブリン製剤を使用する際に使われる。
不要化ヘパリンによる吸着処理は、血液凝固因子の除去に使われる

 カプリル酸処理は温和な方法で簡単にグロブリンが得られるが、カプリル酸は臭い。実験中に匂いが衣服に染み付き後まで残る。その匂いは一口で言えば腋臭!!

 報告が一番遅れたのは問題となる。GMPの逸脱なので保管管理責任者の責任は重大であると考える。