目次と免責事項

2013年12月1日

1.  JR東日本 武蔵境交流変電所(直流併用)とその周辺

 武蔵境交流変電所
 

以下に武蔵境交流変電所22㎸、66㎸ C-GIS設備の内容の記載あり
 
 
グーグルマップではJR変電所と表示

 JR東日本の電力を賄っている変電所であり、信濃川水力とJR東日本 新鶴見交流変電所を経て送られてくる川崎火力の合流点 154kVの電圧を66kV、22kVに降圧して、各地の鉄道沿線上の直流変電所に送るとともに、拠点となる交流変電所に送電を行っている。 信濃川水力は、3つの水路式発電所を備えており、途中谷川岳の横 清水峠を越え、岡部にある交流変電所を経てJR岡部・武蔵境線154kVとして引き込まれている。(地図左上)
岡部交流変電所から送られてくる岡部線154kV送電線
また154kVの武蔵境・新鶴見線として新鶴見変電所を経て川崎火力に繋がっている。(地図左下)
手前 新鶴見交流変電所から送られてくる新鶴見線154kV送電線
奥 環境配慮型鉄塔の境八王子線66kV

新鶴見線2号鉄塔
 
 新鶴見交流変電所間では、電力の連系を行っている。変電所内には154kVの母線が張り巡らされており、新鶴見変電所間では断路器・遮断器・避雷器などを経由している。
 
母線1号から主変3、4号には地中ケーブルでつながる
一部の154kVは地中ケーブル化されて送出されている。
奥に見えるのはOFケーブル用の圧力油槽

 
 武蔵境駅近郊のJR人孔 この人孔は、かつて新宿交流変電所の送電していた66kVのOFケーブルが敷設されたいた可能性がある。現在は154kVのOFケーブルで新宿交流変電所に線路沿いのトラフで送電されている。
 
154kV新鶴見線母線引き回し
 
154kV 母線1号

送出は、66kV武蔵境・戸田線(地図右上)
154kVとは違い、こじんまりした地中ケーブルの立ち上がり
レトロな建物の前あった直流饋電施設は取り壊されていた。
レトロな建物
この建物の中には以前は変圧器が収められていたようだ。
 
出典 国立科学博物館 電力用変圧器 技術発展の系統化調査より
Vol.4 2004.March pp60
1937年芝浦製 18MVA 154kV 鐡道省 武蔵境SS納品
 
66kV武蔵境・戸田線 
66kV武蔵境戸田線(途中・戸田開閉所があるため)
下の鉄塔と同じ場所に立っている鉄塔 構造(ダブルワーレン)だが腕金部分にダイヤモンド補強を追加

東京受電所時代の蕨武蔵境線66kV 左奥に新鶴見66kV 右奥に境八王子線が薄ら見える。

66kV受電時代(1928年東京受電所と呼ばれたいた)のチャンネル鉄構
66kV受電時代(1928年東京受電所と呼ばれたいた)建物 レトロな建物は66kV 受電時代には見られない。やはり1939年の154kV 信濃水力の導入時に建てられたものであろう。

66kV武蔵境・八王子線(左下の環境配慮型鉄塔の部分)
 武蔵境・戸田線及び武蔵境・八王子線は架空送電線で送出されている。(但し武蔵境・戸田線は、送出のみだけではなく受電も行っている可能性がある。)その他多数の地中ケーブルで送出が行われており、詳細は不明である。武蔵境・戸田線は途中の戸田開閉所で埼京線沿線に 電力を供給している。戸田開閉所からは、蕨にある交流変電所と金町にある変電所(かつては広大な敷地の交流変電所であった)に送電を行い、金町からは金町 小岩間の貨物線上を門型鉄塔で繋ぎ小岩の交流変電所に繋がっている。地図中央に大きな変圧器が見える。これは154kVを降圧し66kVにしてケーブルでGIS化 されたMC(メタルクラッド)の母線群に接続されて各地の変電所に地中ケーブルで送出されている。

左より主変1号(LTC付) 2号主変(撤去) 3号主変(LTC付) 4号主変(LTC付)
1号主変の左下には電力用コンデンサと分路リアクトルが見える。
 
 中央の建屋には静止形無効電力調整装置(STATCOM)が設備されている。STATCOMの右下には66kV の母線がGIS化されている。
1号から3,4号主変は、ガス絶縁式のLTC付変圧器10万kVAに交換されているが2号主変は7万kVAの旧来の変圧器であるのが、画像をみると良く分かったが画像が新しいものと差し替えになり2号主変は撤去されている。3,4号が新しい。
 
静止形無効電力調整装置(STATCOM)静止形調相機 
 武蔵境変電所の中心部にある装置。1942年当時は66kV系統の電圧安定化のために回転形調相機(RC)が設置されていた。回転形の老朽化により振動等が近隣に伝わり、またメンテナンスの面から新幹線で導入されている3レベルインバーター方式の静止形に変更する工事を行い2013年3月から稼動している。

 武蔵境変電所には4台の主変圧器が154kVの母線に繋がっていた。そのうち1,3,4号主変圧器が負荷時タップ切替器付の変圧器(LTC付)であり2号は、LTC付ではない。14号の主変圧器には3次巻線があり11kVの出力が出ている。2号主変は撤去されている。

 この11kV3次巻線に1号主変には電力用コンデンサ3台が接続され、2号主変には電力用コンデンサと分路リアクトルが接続されていた。この電力コンデンサと分路リアクトルを使用して夜間の66kV母線の電圧上昇を補正している。
 3、4号の主変には回転形調相機が接続されていた。今回この回転形調相機を静止形に交換する工事が実施された。主変の二次側には66kVの母線が接続されており、この66kVの電圧安定化のための装置となる。
 STATCOMの定格容量は25MVA2台構成である。定格電圧は10.75kVインバーター構成 単相3レベルインバーター×3相、直流電圧3kVとなる。首都圏の自営電力系統は、電車数の増加や駅ビル等の増加により日々負荷が増加しており日内変動が大きく現れるようになっている。ラッシュ時の激しい電車負荷で電圧の変動が増加傾向にあった。これをうけて交換設置された静止形調相機は高性能、高速応答性を持ち66kVの基準電圧から0.4kVの変動幅に66kV母線電圧を保つことができている。

主な年表

1919年鉄道省による鉄道電化調査委員会により東京受電所(現武蔵境交流変電所)を扇の要として信濃川水力系と赤羽・川崎両火力系をむすび154kV架空送電線を軸として東海道、東北、総武、中央、常磐方面に放射状に伸びる66kV系と都心の相互の連系としての22V系の大送電計画が策定された。


現在都心ではJR東日本系の繁華街施設は22V化されつつあり、直流変電所では中央線、総武線、山手線の一部に22V系の地中送電線が残っているだけでほとんど66V化されている。
以前は東電 和田掘線と武蔵境変電所は連系していた
1928年 武蔵境変電所内に66k受電施設を新設(東京受電所)
1930年 66kV八王子回線新設
1939 信濃川水力154kV送電線完成、和田堀線と東電(旧日本発送電)で連系
1953年 66kV新鶴見線を154kVに昇圧     
1961 東電和田堀線との連系解除
1968 東電中東京線(中信線)と連系
1993 1,2号新宿線 66kVから154kVに昇圧  
1999 66kV母線主変14号二次側GIS 
    154kV3,4号主変7万⇒10万kVAガス絶縁変圧器LTC付に交換   
2012 154kV1号主変7万⇒10VAガス絶縁変圧器LTC付に交換


新宿1号154kV(武蔵境駅構内ホーム下)
新宿2号154kV、境・吉祥寺66kV(武蔵境駅構内ホーム下)
 
また直流変電所の機能を持ち、最新型の小型化された変電所が地図右下にみえる。

 
SRTrとは整流用トランスSiliconRectifier Transformerの略でありDTrとは配電用6.6kV Distribution Transformerの略である。
 

武蔵境交流変電所内の直流変電所ケーブル接続点 左から武庫22H(豊田車両センター武蔵小金井派出所)急行上下線で4本、三庫21H(三鷹車両センター)の各き電線が見える。合計6本。(次変電所は、国分寺変電所・吉祥寺変電所)
 
 直流高速度遮断器が設置されているアルミパッケージユニット 最近アルミパッケージユニットが増えている。(錦糸町、渋谷、大宮、熊谷各変電所等)
 

この直流変電所は、中央線上下と武蔵小金井のある豊田車両センター 武蔵小金井派出所・武庫22Hと三鷹にある車両センター・三庫21Hに専用線で1,500Vの饋電を行っている
(東小金井駅にある専用線)
インテグレート架線とは別に饋電線がある(東小金井構内)
 

武蔵境⇔吉祥寺 下りき電線
 
黄色は、三鷹車両センター 奥の紫は武蔵境吉祥寺 下りき電線
中央線の次の饋電区間は、下り方面が国分寺変電所、上り方面が吉祥寺変電所である。
国分寺変電所には、線路脇のダクトを経由して22kVの交流が地中ケーブルで送られていたが現在は別ルートで66㎸が送らている。また同様に吉祥寺変電所にも66㎸送られている。
奥の長方形金属のダクトが154kV および66kVのケーブルが収納されている。
ケ―ブルが見えるのが1,500V直流饋電線

東小金井駅のトラフ(国分寺変電所、立川変電所・西国分寺変電所向け2回線の66kVケーブルが収納されている。)
この辺の詳細は、国分寺変電所火災の際の国土交通省の報告書を読むと国分寺変電所の次の立川変電所まで66kVの地中ケーブルでつながっていることが伺える。資料5 事故等の再発防止のための行政指導(通達) - 国土交通省 http://www.mlit.go.jp/common/000050925.pdf


武蔵小金井駅を通過する武蔵境変電所から送られてきた武庫22H専用線


武蔵小金井駅を通過する武蔵境変電所から送られてきた武庫22Hに断路器で接続されている武蔵境変⇔国分寺変のき電線(インテグレート架線上部のき電線)
 
拡大 断路器は開(OFF)の状態


この武蔵境変電所の隣には、東電の梶野変電所がある。
GIS化された変電所
受電は地中ケーブルで行われている。
(特徴的な人孔が2つ見られる・これが特高地中ケーブル受電の印である)
 
 
 
武蔵境変電所の脇には154kVの東電中富線が通っている 
中富線の下には…
 
この中富線の下にはスタジオジブリがある。
 

中富線は、トトロにでてきた猫バスが走った送電線のモデルと言われている。
 
西武多摩線武蔵境駅
π饋電方式(終端)

 
 
右 JR中央線との接続部 ここに2m間隔でインシュレーターは入った直直デッドセクシションがあった。2015年5月 追記
 
 
JR東日本の武蔵境・八王子線は架空送電線で、どうゆう訳か西武多摩線のそばを南下して是政付近で北上し八王子変電所に繋がっている。
鉄塔は、強化されつづみ型・ブライヒ結構になっている。
 
西武多摩線多摩駅には、多摩線全体に饋電している西武多摩変電所がある。
地中ケーブルで受電されており、傍の東電車返線とは多摩変電所付近では接続されていない。
 
 
多摩変電所からの饋電線は2本出ており、1本は、武蔵境駅方面
2本目の太い饋電線は是政方面に伸びている。途中断路器を経て中間部のトロリ線に饋電されており、この方式をπ饋電方式と言うらしい
 
多摩変電所への帰線が繋がるインピーダンスボンド
 
お約束の特高受電の印である2つの人孔
多摩変電所の使用されていない古い変電所
 
東電車返線
 
車返線は、多摩線の上部を門型鉄塔を利用して送電しているが、多摩変電所の場所は、下に饋電用の門型鉄塔があるため、脇に別の鉄塔が立っている。
多摩線踏切脇のインピーダンスボンド 中性線に選択排流器の線が繋がれている
公益社団法人日本電気技術者協会リンク 電食のはなし 選択排流器
排流器が収まられている多摩線脇の旧電電公社機器箱 踏切下に電話線の管路が敷設されているため電気防食のため設置されている。



東電小金井変電所 
受電は、そばの鉄塔から引き下ろされ一旦地中ケーブルになり変電所構内に配線されている。気中接続部があるので、他のところに地中ケーブルで送電している。地中ケーブルは、この変電所より地中にもぐり多摩線に平行して敷設されている。途中 野川を越える橋の部分は、裏側にケーブルを収めたダクトが見られる。小金井変電所は、配電用変電所の機能を持ち66kV から6.6Vへの降圧を行っている。 
 
上段は、久我山線その下は、国分寺線 国分寺線から送電線が引き下ろされている。

近傍には東電小金井変電所があり地中ケーブルのケーブルヘッドもあることからここから地中ケーブルを引き込んでいる。


66kV から6.6kVに降圧する配電用変圧器

 
一番左から気中接続部のケーブルヘッド 遮断器 変電所母線 奥にJR境八王子線が通る
気中接続部の拡大 送電鉄塔から引き下ろされたケーブルが変電所内のケーブルヘッドに繋がる。断路器が見える  ケーブルヘッド同士が結線されているので、ここから地中ケーブルが変電所の外に伸びている。
変電所構内に引き込むためのケーブルヘッド 小金井線 避雷器が接続されている。変電所構内に繋がる。
 


 
配電用のミニクラッドがあり、地中送電線の6.6kVのケーブルがつながっている。良く見るとアース線にクランプメーターのクランプが噛まされている。






多摩線上部の4回線(3×412本)の架空送電線が繋がる鉄塔。上部1回線(久我山線)はスルーされているが下部の回線は、多摩線上部の門型鉄塔(右・国分寺線、左車返線)に分岐されている。

野川公園に向かう道 野川に掛かる橋に下には東電地中ケーブルが敷設されている。
西武 多摩変電所方面に向かう地中ケーブル


参考文献

STATCOM
近江正太郎ら:JR東日本自営電力系統への静止形調相機の導入について
IEEEJapan,2013,IST-13-48 ,TER-13-74, pp.97-101
 
東京受電所
東海道線東京近郊電化寫眞帖よりの引用
鉄道省東京電気事務所 編 鉄道省東京電気事務所 1928

中央線電化記念寫眞帖よりの引用
鉄道省東京電気事務所 編 鉄道省東京電気事務所 1931