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2020年5月14日

968. 番外 新型コロナウイルス感染症 抗原検査試薬の臨床試験成績 (中医協資料を引用)

昨日承認され保険適応された富士レビオ抗原検査試薬の臨床試験成績と使用法

以下は中医協資料から引用

SARS C o V 2 抗原検出用 キット の活用に関するガイドライン (案) pdf注意
中医協資料から引用

抗原検査については、過去記事がある。
962. 番外 新型コロナウイルス感染症の検体検査 雑感 随時加筆 ブログリンク
この記事の中でSARS CoV用の過去に取得されたMoAbを使う可能性について言及したが
申請内容を読むと、全くその通りで共通の抗原認識部位をもつSARS CoV用MoAbが使われていることが判る。

富士レビオは過去にSARS が広がった際にSARS-Con検出用にMoAbを作っていたので、ためしにSARS CoV-2組換え体抗原で検出できるか反応性をみたら当たったので急遽 組み合わせを選んでキットを組み上げている。その後 臨床検体、感染研パネルを当てて感触を掴み、申請承認に漕ぎつけた。

添文を読んでみてもMoAbがSARS-Covのどの部位を見ん指揮しているかは書かれていない。通常 新しく抗原に対するMoAbを取るには2か月以上は係る。短時間で上市できた理由はSARS CoV用MoAbを利用したことに尽きる。

また感度に関しても、RNA100Copy以上で83%、400Copy以上で93%、1600Copy以上で100%の陽性一致率となり感度的にはPCRよりも劣る。←初期の検討データ
どれくらいのCopy数があれば感染が成立するかは、まだ臨床的に明らかにされていない。

 6/16 PCR法との相関が、感染初期に一致することが判明しPCR法にとって代われると厚労省が使用基準を変えた。検体は、現在 呼吸器スワブ検体であるが、唾液検体の治験も行われているようであり、そのうち唾液でも検査できるようになる。

抗原検査の使用方法の見直しについて  厚労省発表リンク

川崎市健康安全研究センターデータ引用
○抗原検査キット(エスプライン)の添付文書に記載されている臨床性能試験の概要では、RTPCR法と抗原検査キットの陽性一致率は、 1,600 copy 以上の検体に対して一致率100%(12/12 例)、 400 copy 以上の検体に対して一致率 93 14/15 例)である。
引用終わり

 6/16の厚労省の使用基準変更に伴いイムノクロマト法による抗原検査とPCR法が感染初期では同等の検出となるので、これより感度が高い全自動高感度測定法(ルミパルス)は、将来的にPCR法にとって代われる存在になる可能性が高い。

感度上昇への方策
 富士レビオは、全自動高感度免疫測定装置(化学発光:CLIA)ルミパルスをイムノクロマトとは別にプラットホームとしてもっているので、高感度対応の抗原検出試薬が申請されるのも時間の問題であろう。実際 申請された。
富士レビオのイムノクロマト法は、BCIP発色基質を利用したアルカリフォスファターゼ(ALP)標識抗体を利用している。ルミパルスは同様に化学発光基質AMPPD(ALPで加水分解すると発光する)を利用しているので、イムノクロマト法で確立したMoAb(ALP標識MoAb)を利用すれば組み替えは容易となる。感度は、PCR法と同等のようだ。
6/25 保険収載され、使用可能となる。

6/19大臣会見内容 引用
加藤大臣会見概要 (令和2年6月19日(金)  11:13~11:44) リンク
二点目でありますが、新しいコロナウイルス感染症の検査についてです。抗原量の測定ができる、富士レビオ社が開発した検査試薬を薬事承認いたしました。これによって抗原検査としての検査が行われることができます。この検査は、従来の抗原簡易検査キットよりも感度は高い、いわゆるPCR検査と同様の対象者に使用することができるというわけであります。鼻咽頭検体については、有症・無症を問わず全ての対象者に、また、発症から9日目以内の有症状者に対しては、唾液検体も可能となりまさにPCRと同じ適用ということになります。
 この検査には、専用の検査機器が必要です。多少機能性の高いものと低いものがあるようでありますが、既にトータル800台くらい設置されているということであります。それから検査に要する時間は30 分程度と非常に短いということです。1時間あたり60件から120件の検査が可能と聞いております。
 この抗原検査は定量で測ることができます。これまでの簡易キットは陽性か陰性かしか分かりませんが、これはどのくらいの量があるのか、ということを測ることができます。こうしたことによって我が国の検査能力の向上に寄与するものと考えております。先般の唾液もそうでありますけれども、様々な技術が開発されております。我々としても積極的に、そういったものを取り入れて検査能力の拡大を図っていきたいと思っております。
引用終わり


以下中医協のデータを引用する。
新型コロナウイルス感染症診断薬の承認について医薬・生活衛生局 医療機器審査管理課 発表 PDF注意

以下部分引用
2.審査の概要
(1)臨床性能
○本品の臨床性能に関して、主に以下2つの試験の結果が提出された。この他に国内検査検体を用いた試験成績が参考資料として提出された。

①国内臨床性能試験
国内で行われた、RT PCR 法との 比較に基づく臨床性能 試験成績( n= 72例 )は、陰性一致率 98 % 44/45 例)、 陽性一致率 37% 10/27 例 )で
あった 。陽性検体についての陽性一致率を、 RT PCR 法テスト試 料中の換算 RNA コピー数 (推定値 に応じて比較すると、 100 コピー テスト以上の検体に対して 陽性 一致 率 83% 5/6 例) であった 。

②国内検査検体を用いた試験
RT PCR 法との 比較に基づく 試験成績( n=124例 )は、 陰性一致率 100% 100/100 例)、陽性一致率 66.7 %16/24 例)であった。
陽性検体 についての陽性一致率を、 RT PCR 法テスト試料中の換算 RNA コピー数 (推定値 に応じて比較する と、 1,600 コピー テスト以上の検体に対して一致率 100% 12/12 例)、 400 コピー テスト以上の検体に対して一致率 93%14/15 例)、 100 コピー テスト以上の検体に対して一致率 83% 15/18 例) であった。

審査においては、限られた例数における検討であるものの、本品は一定量以上のウイルスを有する検体に対して約8~9割の陽性一致率( 100 コピー テスト以上 で約 80 %、 400 コピー テスト以上 で約 90 %)を示し、また、陰性一致率はほぼ 100% であった。

このため、本品は、RT PCR 法と比較して感度は低いものの、一定の症状を有する患者等に対し、陽性判定をもとに感染診断を行うこと の臨床的有用性を期待できるものと考えられる。さらに、現時点で、本邦においてSARS CoV 2 抗原の迅速かつ簡便な検出が可能な 体外診断用医薬品は 存在しないこと 、医療機関等での検査能力の迅速な拡充が求められていることを踏まえると、

i )製造販売 後に実臨床での臨床性能の検証を求める承認条件を付すこと

ii )添付文書で偽陰性の可能性等を情報提供すること、

を前提として、本品を臨床現場に提供することは 許容可能と考えた。

(2)交差反応性
〇本品は 、遺伝子組換えヒトコロナウイルス抗原 SARS CoV と反応 を示したが、遺伝子組換え ヒトコロナウイルス抗原( MERS CoV 、 HCoV 229E 、 HCoVOC43 、 HCoV NL63 、 HCoV HKU1 及び不活化インフルエンザウイルスInfluenzavirus H1N1 、 Influenzavirus H3N2 、 Influenzavirus B )とは反応を示さなかった。 1)

〇 本品は、 SARS CoV 以外、交差反応の可能性がある主な抗原で反応を示さなかったことから、本品の開発の緊急性を鑑み、 SARS CoV との反応性を添付文書で注意喚起すること、追加で検討が必要な交差反応性試験を今後速やかに実施することを前提に、 本品を臨床現場に提供することは許容可能と考えた。


(3)安定性
○本品の安定性については、実保存条件での長期安定性試験成績は提出されていないが、同 社の 類似の 検査薬 に基づき、暫定的に有効期間が設定 された。

審査においては、本品の開発の緊急性を鑑み、 製造販売後に 本品 の長期安定性試験 を実施することを前提に 有効期間を暫定的に付与することは可能 と判断した。


(4)その他
○本品を使用する上で必要な注意喚起については、添付文書に記載することとした。
(5)専門協議
○専門協議を実施し、(1)から(4)の判断は支持された。なお、(1)について、非感染の確定診断のための PCR 検査等の追加実施の必要性を添付文書で明確に注意喚起すべきとの意見があり、これに対応した。
引用終わり

1 )この他、ヒトコロナウイルス( HCoV 229E (ATCC VR 740) 、 HCoV NL63 (AmsterdamI) HCoV OC43 ATCC VR1558) HCoV OC43 (Tokyo/SGH 36/2014) HCoVHKU1 (Tokyo/SGH 15/2014) 培養液と反応を示さなかった。



5/19 もう一つの新型コロナウイルス感染症 抗原検査 イムノクロマト法が研究試薬として発売された。
新型コロナウイルス抗原テスト 株式会社マルコム リンク

これらの製品は、SD BIOSENSOR INC.社製のイムノクロマト法を用い高速テストを可能とした製品

「ヒト鼻咽頭に存在するSARS-CoV-2の特定核タンパク質抗原を判定します」とあるのでSARS-CoV-2特異的なMoAbを利用していると思われる。
以下引用
新型コロナウイルスSARS-COV-2抗原開発の際には、これらのウイルスの遺伝子組み換え技術を使用・応用し短時間に抗原を開発、これを使用することで特異性の高い最適な抗体の開発に成功した。
引用終わり

ちなみに 富士レビオの抗原検出試薬は、SARS-CoVの抗原に対するMoAbを使い同じく核たんぱく質を標的としたものである。SARS-CoVとSARS-CoV-2の共通配列部分を使用している。


検出感度
TCID50(TCID50(Median tissue culture infectious dose, 50%感染量)とは、ウイルスを細胞に感染させて細胞が変性する%が50%となったときの希釈倍数を示す単位。
PCR法のCopy数とは比較できない単位