2020年3月19日

962. 番外 新型コロナウイルス感染症の検体検査 雑感 随時加筆

新型コロナウイルス感染症の検体検査 雑感 随時加筆

968. 番外 新型コロナウイルス感染症 抗原検査試薬の臨床試験成績 (中医協資料を引用)ブログリンク

国内での開発状況は以下でわかる

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)

AMEDは、新型コロナウイルス感染症の診断、治療、予防に関する研究開発課題を支援しています。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の研究開発課題について 診断法開発 リンク
研究概要 引用
中国湖北省武漢市を発端とする新型コロナウイルス感染症は、最初の患者の発見からわずか2ヶ月程度の間に感染者数4万名、死者1000人を超える大規模な流行となっており、世界的に迅速かつ有効な対策が求められている。
 しかしながら、このウイルスの性状や病原性などの解析は未だ十分でなく、ウイルスの病原体検査系に関しても医療現場で使用可能な迅速診断系や血清抗体診断法は未だに確立されておらず、COVID-19疑い患者の病原体検査は極めて困難な状況である。
 本研究では、COVID-19の迅速診断キット開発に関する基盤技術の開発とプロトタイプキットの開発、血清抗体診断系の開発を行う。COVID-19は世界中に蔓延する可能性が危惧されており、この感染症の実態を把握し適切な医療を提供するためにも、診断法開発は緊急に進める必要がある
引用終わり

朝日の抗原検査飛ばし記事
どうやら朝日の記事は、厚労省大臣の話をスクープとして出したようだ。現在記事は消されているが、他の人が引用で広げている。15:30現在 また表示されるようになった。
15:00市場終了後のUpを行う予定だったが、間違えて午前中にUpされ、慌てて取り消したようだ。

検体検査について

 検査(PCR)はあくまで診断の補助、医学的には血中酸素濃度の低下、CTで肺炎の所見が得られたらPCRを待たずに防護処置をとり肺炎の治療(対症療法)が先、インフルエンザの除外診断(POCT検査)、レジオネラ、肺炎双球菌の除外診断(POCT検査)。炎症マーカーのCRPとPCT(プロカルシトニン)で細菌性の炎症とウイルス性炎症の鑑別、血栓のマーカー D-ダイマー(新型コロナウイルス感染症の突然死は血栓によるものが多い)
最終段階の確定診断でのみPCR検査を行うべき。PCRは1かOかの判定しかできない。
現時点で有効な治療法は、見つかっていない。

自衛するならパルスオキシメーターでSpO2を測定95%以下(もしくは90%以下)で病院へ(パルスオキシメーターは、一般の人でも購入可能)SpO2を測定95%以下は説得力がある。

感染研 雑感

感染研でPCRが多量処理できない理由

そもそも感染研は研究者の集団
その研究者の下に研究者に従属するテクニシャン(手を動かす作業者)がいる構図
このに、スワブ検体が多量に送られてきても、処理できない。処理する装置も無い。
感染研で新型コロナウイルス検出に関する標準的なプロトコール(SOP)を確立し、地方の衛生研究所、保健所等に新型コロナウイルス検出は、このSOPで行って下さい。という通達を出すだけ。

感染研は、検体分析を行う検査センターの役割はしていない。せいぜい地方の衛生研究所(保健所等)から送られてきた確定診断のための業務を行うだけである。
PCRの手技は、一般的な方法だが慣れが必要。かつ感染防御下での手技が必要(安キャビ内)おいそれと、不慣れな、テクニシャンを入れるわけにはいかない。
特に新型コロナの場合、喀痰サンプルが多いのでPCRの前に前処理が必要。この操作に手間がかかる。
そこに、全国から多量の感染性があると考えられている検体が特殊輸送形態(3重包装)で送られてきたのだから多量処理できない状況が続いていた。これは医学系大学でも同様な状況。

やはり多量検体の処理は民間検査センターに、早期に委託すべきであった。民間検査センターは感染性のある検体輸送にも独自のルートで実績がある。患者ID受付・付与から分析し測定結果の付与までの一連のフローが確立している。PCRでの品質管理方法も確立している。感染研では、そこまでのフローは全部手作業でおこなうので、時間がかかるのは当然である。システム的に完成していないと多量処理はできない。

感染研の役割(実務面)は、
1.確立した新型コロナウイルスのPCRをブラシュアップして感度特異度を上げたプロトコールを確立し随時SOPの改定を行う(プライマーの更新)
2.ウイルスの培養系を確立して、標準ウイルス株を研究機関に分与し、治療法・検査法開発を促進させる。
3.過去に流行していたコロナウイルス感染検体の遡及調査を行う(核酸・抗体)疫学検査
2.ウイルスの培養系を確立して、標準ウイルス株を多量培養し、ウイルスを潰して(lysateウイルスたんぱく質を分画し、研究機関へ分与して検査法開発を促進させる
4.全国の衛生研究所(保健所等を含む)から定期的に新型コロナウイルスをサンプリングして変異状況を調査する。
5.新型コロナウイルスの疫学調査、感染拡大防止のモデリング
6.過去に確立されたSARSに対するMoAbを全国の研究者に呼びかけ収集解析を行うとともに、研究者に分与しSARS-Con-2に対する共通抗原を持つMoAbを選択し抗原検出系を作る手助けを統括する。(SARSとSARS-Con-2は部分的に共通の配列構造を持つ)

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)PCR検査法の開発と支援の状況について 感染研リンク

感染研、地方衛生研究所、検査センター以外で、感染症のPCR検査(NAT検査)を多量に行っているところがある。日産10K検体くらい。

それは日赤の血液センター。血液で感染するHIV、HBV、HCVのウイルス検査を全血でNAT検査(PCR検査)行っており、献血検体全てを対象に検査をしている。輸血に使うのでPCR検査の感度特異度も向上させて、ほとんど99.999%の確度で陽性/陰性の判定を行い陽性血液は廃棄されている。PCR検査は前処理からPCR測定まで全自動で行われている。Rocheのコバス8800を多数導入使用
サンプリングも採血用の血液バックにつながるチューブから自動で行われる。
ただし、いまのところ新型コロナウイルスの検体としては、呼吸器系のスワブ検体であるので、すぐには応用できない。
新型コロナウイルスが血中に出現している報告も中国で発表されているので(血液からのPCR検査)全血検体での検討を行うべきであり、日赤としても若年層(献血を行える層)での発症前の不顕性感染者をPickUpするためにも検討は開始しているはずである。
原理としては新型コロナウイルス用のプライマーを設計して合成し、全自動装置に入れて測定するだけである。RNAウイルスのHIV、HCVと同じ原理での増幅が可能と判断する。Rocheのコバス8800を使用

新型コロナウイルス検査法(臨床検査・IVDの範疇)の現状

 2/29の安部首相の15分で検査できる装置 杏林製薬から発売されているGeneSoC リアルタイムPCRの手法を使い本体と検知器(1~4台)を増やすことで15分/4検体同時測定が可能。
 ただし検体の前処理は必要な訳で、検体の前処理を含めて15分ではない。
100検体の分析をすると25台の本体と(検知器最大4台)を並べて時分割で行うにしても1人ではできない。多量処理には向いていない。あくまで医院等の出先での対応。ただし医院等に配布しても、前処理等の操作を不慣れな医師(看護師)が前処理を含めて対応しなければならず、根本的な解決策にはならない。

多量処理は、医院での患者からの検体採取、検体の包装とPicKUp(低温輸送兼感染性物質輸送のためには3重の包装が必要)、輸送、開梱、検体登録、BSL2レベルの安キャビ内での開封と前処理、PCR測定室(BSLレベルは必要とされない)での測定、結果の確認と照合。QC上の基準を行程がクリアしているかの確認。医院等への報告。このフローが確立されていなければない。特に新型コロナは、感染力が強いようなので、結核菌なみにエアゾル感染に対する防御を行いながら前処理を行わなくてならない。

新型コロナウイルス感染症(SARS-CoV-2)抗体検査の現状
NHKでニュースにしたイムノクロマト法(ELISA)は、ウイルスが感染し体の免疫応答でウイルスに対する抗体を検出する方法。この方法では、既感染しか判らない。ウイルスが体から排除されても免疫応答の結果だから抗体は産生され続けている。抗体検知用の抗原(ウイルス本体のたんぱく質)は、多分大腸菌組換え体であるので、大腸菌に対する抗体を持った人は偽陽性の可能性がある。(この大腸菌に対する抗体を持った人は、かなりの頻度で見つかるので、この非特異的反応を抑える手法が必要)

イムノクロマト法(ELISA)=Lateral flowと同じ

“新型コロナウイルス感染を15分で判定” 検査キット販売へ  NHK リンク切れ注意

ウイルス抗原そのものをキャプチャしなければ、感染しているかは判らない。抗体検査では既感染結果だけ 過去にこの新型コロナウイルスが流行していた場合も検知するのでretrospectiveにスクリーニングしたら陽性がでるかもしれないので、注意が必要となる。

「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗体検査試薬キット」の販売開始について  クラボウ pdf注意

感染研で抗体検査の評価結果が出ている。

迅速簡易検出法(イムノクロマト法)による血中抗SARS-CoV-2抗体の評価 感染研リンク
以下引用
結果から、発症6日後までのCOVID-19患者血清ではウイルス特異的抗体の検出は困難であり、発症1週間後の血清でも検出率は2割程度にとどまることが明らかになった。また、抗体陽性率は経時的に上昇していき、発症13日以降になると、殆どの患者で血清中のIgG抗体は陽性となった。一方、IgM抗体の検出率が低く、IgG抗体のみ陽性となる症例が多いことから、当該キットを用いたCOVID-19の血清学的診断には発症6日後までの血清と発症13日以降の血清のペア血清による評価が必要と考えられた。
引用終わり
SARS-CoV-2のどの部分を抗原として使い、抗体検出をしたかが、重要な点で感染研では触れられていない。またセロコンパネルができたようだ。C型肝炎感染の抗体検査では初めにc100-3抗原それからCore、NS3、NS4と抗原が追加され検出感度が上がっていった経緯があるので、SARS-CoV-2のどの部分が感染初期から抗体が作られていくか研究が進んでいると思うが、なかなか論文が出るまで公表はされないであろう。


この報告とは別に、どうやらバキュロ発現系で発現させたウイルスたんぱく質でのELISA系測定法が開発さたようだ。これも抗体検出系

A serological assay to detect SARS-CoV-2 seroconversion in humans リンク



左 コロナウイルスのたんぱく質立体構造
右 SDS-PAGEによる発現させた各ウイルスたんぱく質部位の電気泳動パターン
文献から引用


発現させたウイルスたんぱく質 2種で非感染健常者と感染者血清で比較
RBD=レセプターバインディング部位では、健常者と感染者はあまり差がないが
SPIKE部位では、健常者と感染者でdiscrepancyがでており、検出可能

この文献によると発症初期から3日目で免疫応答によるウイルス特異的抗体が出ているので、鑑別診断が可能となる。(既感染に関して)


このELISA法がサイエンスに引用 投稿されている 多量スクリーニングに適とあるが
既感染者の炙り出しに使えることは、たしかだ。

New blood tests for antibodies could show true scale of coronavirus pandemic サイエンス引用

 HCVによるC型肝炎罹患の検査は、初期のころC型肝炎ウイルスの抗原認識部位c100-3(組換え体)を抗原として使い、感染者の免疫応答で生じた抗体をキャプチャしてスクリーニングを行い、輸血後肝炎の減少に大きく寄与した。抗原もさらにNS3、Core等が追加され検出感度も上昇してきた。その後PCR法、抗原検出法がルーチン化されている。

 HCV感染によるウイルス血症検査は、PCR法と抗原検出法が、セロコンを使うとほぼ同時期に陽性となる稀有な事例であった。新型コロナウイルス感染症でも呼吸器検体と血液検体同時サンプリングによるPCR法検討が行われ血液からも新型コロナウイルスが検出されているので検討数を増やし傾向をみる必要がある。

 HCVによる発症は重篤な肝炎をもたらすので、当座 c100-3抗原に対する抗体検査でのスクリーニングが導入されたが、新型コロナウイルス感染は、発症化しない不顕性の感染者も多く存在すると言う報告もあることから抗体検査の導入までは必要ないと考える。ただし疫学調査 不顕性の感染者が、現にどれくらい存在しているかは、今後疫学モデル構築のため行うべきである。(集団免疫状況の確認)

 政府は、発症化しない不顕性の感染者を抗体検査であぶりだそうとしている。経済が委縮するのと感染の拡大は、トレードオフの関係であり、経済が重篤に陥る前に、積極的に抗体検査を行い、新型コロナウイルス感染症との共生を図ったようだ。ただ抗体が産生されても、ウイルス中和抗体としての産生されなければ、2度感染する可能性もある。
 また通常の風邪のように抗体が産生されていてもウイルスが中和されなけれな、いつ重篤化するかわからない。ウイルスのどの部分に対する抗体が中和抗体として有用なのか、HCV抗体検出系を作成したときのように、特異的な抗原が見つかることを期待する。


 市中感染頻度の検討を疫学的に検討する際はELISA法(プレート法)による多量検体処理は有用な手段となる。イムノクロマト法では手間と、一検体=一検査担体によるコスト高が障害となる。

 日本におけるSARS-CoV-2に対する抗体検査結果が、だいぶ発表されてきているが、PCR法で陽性となった患者以外(感染者・不顕性の感染者)以外の一般人スクリーニング検査での抗体検査で陽性が検出されている。

 これを陽性ととらえるか偽陽性ととらえるかだが、抗体検出には、SARS-CoV-2の部分抗原を、ペプチド合成、大腸菌による組換体、バキュロウイルスによる組換体、CHO細胞による組換体、横浜国大が開発したコムギ胚芽無細胞法による組換体などにより生産される。この中で大腸菌、バキュロウイルス、コムギ胚芽無細胞等は、抗原精製の途中で微量の宿主たんぱく質が混在し、これに対する抗体を持つ群が少なからずいる。

 例えば大腸菌発現抗原だが、抗原をSDS-PAGEで単一バンド(CBB染色・銀染色)まで精製しても、大腸菌に対する抗体を持つグループが少なからずいるので、SARS-CoV-2抗原に対する抗体がなくても反応(陽性)してしまう、バキュロにしても然り、この偽陽性反応をなくすのが抗体検査におけるKnow-howとなる。つまり検出用抗原の精製度が高くないと偽陽性がでやすくなる。

 つまり現段階で、一般的なスクリーニング検査で陽性と判定される例のなかには偽陽性(抗原発現宿主に対する抗体)を持つものが含まれていると考える。

これを回避するためには

1 SARS-CoV-2抗原を2つの別(宿主が違う)の組換体を用い、イムノクロマト法で2つとも陽性の反応が出た場合だけ、陽性と判定すればよろしいがコストが高くなる。

2.確認試験として吸収試験を行う。前処理として検体に十分量の抗原を加え、抗原抗体を起こさせてから、検査にもちっこむとSARS-CoV-2抗原に対する抗体は吸収されているので陰性化したもが陽性、陽性がかわらないものが偽陽性となる

 どちらにしてもイムノクロマト法による抗体検査は、カセットごとに用手法で行わなければいかず、多量処理には向いていない。
 抗体検査をおこなうならイムノクロマトほうではなく、プレート、磁性粒子を使ったELISA(CLIA)法で行う方向に進まなくてはならない。


 インフルエンザの簡易検査(イムノクロマト)はインフルエンザウイルス(抗原)を検知する方法なので、まだ新型コロナの抗原検知試薬は完成していない。←富士レビオが抗原検出試薬を開発したそうだ。(4/28発表)
 追記
 昨日の19時のNHKニュースで「抗原検出」の検査試薬が、来週中にも承認され、PCR検査と組み合わせて運用されると紹介されていた。


PCR以外
核酸利用 一番早いかも
栄研化学のLamp法(SARSの時にキットが出来上がった)感度面でPCRより劣る 現在開発中 2/14栄研発表 PCR利用のGeneSoCとほぼ同時に開発が完了するようだ。

やはり一番早くLAMP法原理の核酸検出キット及び装置が立ち上がった。
引用
開発する新型コロナウイルスRNA検出試薬は、栄研化学株式会社が開発したLAMP法(注4)を原理としたもので、当社が提供する小型等温増幅蛍光検出装置で検出するものです。従来法(リアルタイムPCR法)に比べて簡便かつ短時間で検出できることが特長で、現場近くでの検査により適しています。
迅速な新型コロナウイルス遺伝子検査システムの開発開始について キャノン リンク
(注4) 栄研化学株式会社が開発した核酸増幅法であるLoop-Mediated Isothermal Amplification (LAMP法)。

但し、大量処理には向いてない。

ウイルスたんぱく質を用いる方法(ELISA・イムノクロマト法)抗原検出系
ウイルス本体のたんぱく質を利用してウイルスを抗原としてキャプチャする。各社開発中 
オーソドックスな方法1
ウイルスを細胞培養系で増殖させ、たんぱく質として回収・精製、そのたんぱく質をマウスに免疫し、MoAb(抗体)を作成。
MoAbのターゲットとしては、エンブ、キャプシドたんぱく質もしくは、ウイルス中心部のコアたんぱく質
MoAbのスクリーニングは、ウイルスたんぱく質かペプチドで行う

オーソドックスな方法2
ウイルスの全体の核酸配列が判明しているので、核酸配列からアミノ酸配列を作り、立体構造を取らせて抗原となる部位の配列からペプチド合成しそのペプチドを抗原としてMoAbを取る。 アフィニティーの高い抗体は得られにくい
MoAbのスクリーニングは、ウイルスたんぱく質かペプチドで行う

オーソドックスな方法3
ウイルスの全体の核酸配列が判明しているので、核酸配列からアミノ酸配列を作り、立体構造を取らせて抗原となる部位の配列を大腸菌もしくは、バキュロ系(蚕感染ウイルス)で組換抗原を作成し、MoAbを取る。
MoAbのスクリーニングは、ウイルスたんぱく質かペプチドで行う

どちらにしても抗原抗体反応でウイルスを捕まえるのでアフィニティーが強い抗体(MoAb)を見つける必要があります。

中国で以前のSARS-CoVの検出に使ったMoAb群の中から新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を捕まえるMoAbが見つかった(共通抗原部位)との報告がある。
A human monoclonal 1 antibody blocking SARS-CoV-2 infection リンク

これを、固相にコートし新型コロナウイルス抗原をキャプチャ。SARS-CoV-2特異的な配列の組換体を抗原としてMoAbを作れば、抗体(共通抗原)―抗原―抗体(新型コロナ特異的抗原)で抗原検出系が出来上がる。開発期間の短縮が可能となる。

横浜市立大学でMoAb 2株をSARS-CoV-2をキャプチャする抗体として確立

MoAb=モノクローナル抗体

新型コロナウイルス抗原を特異的に検出できる モノクローナル抗体の作製に成功 横浜市立大 医学部 発表 リンク

部位は、抗NP抗体(ヌクレオカプシド部分)と抗SP抗体(スパイク部分)
横浜市立大学発表資料からの引用

横浜市立大学発表資料からの引用
WBでのSARS-CoV-2に特異的な反応を示す
SARS-CoV-2を感染させた培養細胞に確立された抗体で免疫染色 特異的に検出


技術上のボトルネック 
1. 抗原発現系がコムギ胚芽無細胞法であること 量産に向いていない
2. すでにSARS-CoV-2に感染していると、免疫応答で抗体が産生されるので体内では免疫複合体を形成されSARS-CoV-2のMoAb認識部位がマスクされてしまいMoAbの反応性が低下する(検体が血清の場合)
呼吸器からのスワブ検体でSH処理を行う場合は、検査試薬中のMoAbが開裂する可能がある。(検体がスワブの場合)

3. 抗NP抗体(MoAb)は、SARS-CoV-2の内部にある部位に対する抗体なので、SARS-CoV-2を壊して内部を露出させなければならない。この操作は通常界面活性剤で検体を処理すれば構造は破壊されるが、界面活性剤存在下でMoAbを反応させなければならないので、界面活性剤存在下でSARS-CoV-2と結合できるMoAbの選択が必要。

4.部位は、抗NP抗体(ヌクレオカプシド部分)と抗SP抗体(スパイク部分)なので免疫染色にはつかえるが、ELISA系を組むためにはSARS-CoV-2の同一配列の違う部分(エピトープの違う部位)を2種の抗体でキャプチャしなければならない。抗NP抗体(ヌクレオカプシド部分)と抗SP抗体(スパイク部位)ではSARS-CoV-2の違う部位を認識する抗体なのでキャプチャできない。SARS-CoV-2を界面活性剤で壊して抗NP抗体でキャプチャしても本体(SARS-CoV-2)がバラバラになっているので抗SP抗体を入れてもSARS-CoV-2をサンドイッチでできない。

取得した抗NP抗体のエピトープが、SARS-CoV-2キャプシド抗原の各々違うエピトープを認識すれば、キャプチャできる。同様に抗SP抗体も同じ

通常MoAbを取ろうとすると、大体同じエピトープを持つものが得られることが多い。そのためサンドイッチ系のELISAを組み立てる場合、MoAbを取るときのマウスに免疫する抗原の作製法を変えたり、免疫する方法を変えたりして、違うエピトープを持つものを得られるように工夫して選択する。

日本で初めて「抗原検査」でのIVDが申請された。検体は明記させていない。

短時間・簡単「抗原検査」の承認申請 富士レビオ 新型コロナ抗原検出系 朝日新聞リンク タイムスタンプが富田洸平2020年4月28日 15時00分となっている。 11:00時点での内容  
12:00時点で記事が削除されている。なにか問題があったかも

どうやら朝日の記事は、厚労省大臣の話をスクープとして出したようだ。現在記事は消されているが、他の人が引用で広げている。15:30現在 また表示されるようになった。
タイムスタンプは15:00で復活 本来は、市場が閉まってからUpする予定が間違って?!午前中にUpしてようだ。

以下引用
新型コロナウイルスに感染しているかどうかを調べる「抗原検査」について、加藤勝信・厚生労働相は27日、国内の1社から検査キットの薬事承認の申請があったことを明らかにした。短時間で簡単にできることから、現在のPCR検査とともに診断に使うことができれば、検査件数を増やせる可能性がある。
抗原検査はウイルスを形づくるたんぱく質を直接検出する方法。鼻やのどの奥をぬぐってウイルスを含む粘液を採取する。その場で検査し、すぐに結果が出るためインフルエンザウイルスの検査などに使われている。厚労省によると、申請した企業は「富士レビオ」。優先的に審査し、承認するかどうかを決めるという
引用終わり


みらかホールディングス株式会社のグループ会社 富士レビオ株式会社でイムノクロマト法よる抗原検出試薬がIVDとして申請をおこなったようだ。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗原迅速診断キット製造販売承認申請について

昨日の19時のNHKニュースで「抗原検出」の検査試薬が、来週中にも承認され、PCR検査と組み合わせて運用されると紹介されていた。

5/13めでたく承認 SARS-CoV-2 NCたんぱく質に対する複数のMoAbを使用している。
これは、イムノクロマトで用手法で検査を行わなければならないので、多数処理には向いてない。富士レビオではイムノクロマト法以外にCLIA(化学発光検出)のルミパルス全自動分析装置のプラットフォームを持つので、さらに高感度化された抗原検出用IVDがでるのは、時間の問題だろう。

次なる開発項目は、抗原と抗体を両方同じプラットホームで測定する試薬となるが、こちらはハードルが高い(HIVの第四世代検出試薬と同様な抗原、抗体を検査するIVD)


以下は別記事となります。富士レビオの抗原検査とは違います。HIV抗原検査の戦略です。

 ウイルスのどの部位が、抗原性が高いかは、回復した患者さんの血液からIgGを分離。(多数の患者さんのカクテルIgGが必要)
 増殖したウイルス本体を、潰しSDS-PAGEで電気泳動。患者さんから分離したIgGを検出系に使ったウエスタンブロットで、反応性の高いバンドを特定。そのバンドのIgGが掛かっていない部分を切り出し限定加水分解でしMS分析して抗原性が高いウイルスたんぱく質の配列を特定しスクリーニング用のペプチドもしくは組換え体たんぱく質をつくり、抗原としてスクリーニング、MoAbの作成に利用する。

HIVにおける人体の免疫応答 ウエスタンブロット(WB)の結果
HIVのウイルスたんぱく質をSDS-PAGEで電気泳動 転写膜に転写して抗体による反応性を確認する
右のgp160とか書かれているのはウイルスたんぱく質の名称と分子量による大きさの位置を表す
上部ほど高分子 黒くなっているバンドは、ウイルスたんぱく質に結合した免疫応答の結果生じた抗体
急性期では、P24、gp160に対する抗体が強く産生
その後各ウイルスたんぱく質部位に相当する抗体が産生されてくる
感染初期にはp24のウイルスたんぱく質を検知するELISA(抗原検出)が有効
但し感染後期にはp24だけでは陰性と判断されるため、他のウイルス抗原を混ぜる必要がある
gpは糖タンパク質を表す。gpは、大腸菌組換え体では作成できない、バキュロ系またはCHO系での発現が必要

SARS-CoV-2のWBも行っているはずであるが文献が出ていない。感染後の経時的血液サンプリングでSARS-CoV-2のどの部分の抗体が先に出てくるか、再感染者の抗体はSARS-CoVのどの部分で活性が落ちてくるのかSARS-CoV-2のどの部分の抗体が中和活性が高いかSARS-CoV-2各種抗原部位に対する各種抗体のプロファイルがどのようになっているのでか


前処理(検体 呼吸器系)
但し、PCRと同様に前処理が必要となる。喀痰は粘性が強いので、SH剤(DTT,DTE、NAC等)で粘性を弱める必要がある。
PCRの場合 SH剤が入っていても抽出操作で抜けるが、ウイルスたんぱく質の検出の場合 検体にSH剤が入っていると抗体(MoAb)が開裂して抗原抗体反応が弱まる場合がある。

ウイルスに対する抗体作成それもアフィニティーが強く、SH剤に抵抗性がある抗体(MoAb)を見つける。サンドイッチ系でELISAを行うためには、違う抗原認識部位のものを2つ見くけなくてはならない。
そのためハードルが高い。

PCRと比較してELISA法で感度がでるかどうか、ウインドピリオドの立ち上がりが核酸と同様にたんぱく質でも同様に立ち上がるかがキーポイント。たんぱく質が遅ければ早期検出の役はなさない。

SARSが発生した時 SARS抗原検出を試みるためSARSに結合するMoAbの作製が多く行われていた。SARSとSARS-CoV-2は遺伝子レベルで80%の相同性があるとのことなので、このSARS-CoV-2とクロスするSARSに対する抗体がスクリーニングできればSARS-Cov-2の抗原検出系ができるかもしれない。現時点で流行しているのは、SARS-Cov-2なのでSARSとクロスするにしてもネグレるはずだ。


ウイルス血症の可能性

今までPCR用の検体は、呼吸器からサンプリングしてたが、どうやら血中にも糞便中にもウイルスが出ている模様。糞便は感染初期に下痢、嘔吐等の症状があったので、さもありなんだが、血中にも移行しているようだ。ウイルス血症(バイレミ)
 ウイルスの種類によっては、感染初期にウイルス本体に核酸が無いたんぱく質を産生するものがある。これが初期に血中に漏れ出てくるなら、ELISAで検出がPCRと同様にできるだろう。

ウイルスに対する抗体は、確実にできているようだ。新型コロナと相同性が高い部分を使った組換え体キャプシドたんぱく(NP)で感染後 IgM(初期状態)IgG(遷移状態)を検知できている。ただこれは抗体検知なので、既感染状況しかつかめない。
中国のWantai, Beijing, Chinaでは、新型コロナウイルス系の抗体検出ELISAが、すでに販売されている。

デング熱における人体の免疫応答(血中ウイルスの消長を含む)
最初はウイルスが血中にでてきている。Viraemiaウイルス血症状態
その後 免疫応答でウイルスたんぱく質に対する抗体(初期にIgM、続いてIgG)ができてくる。
血中のウイルスたんぱく質は、抗体でブロックされている(免疫複合体)状況が続く
そしてウイルス消失
デング熱の場合 免疫複合体がさらに悪影響を及ばす場合もある
NS1は、デング熱ウイルスの非構造たんぱく質 
感染細胞からのNS1の放出は多く血中からNS1(抗原)を検出することで
感染の確定ができる

風疹における人体の免疫応答(血中ウイルスの消長を含む)
最初はウイルスが血中にでてきている。Viraemiaウイルス血症状態
その後 免疫応答でウイルスたんぱく質に対する抗体(初期にIgM、続いてIgG)ができてくる。
血中のウイルスたんぱく質は、抗体でブロックされている(免疫複合体)状況が続く
その後ウイルスは増殖できなくなり消失
血清検体の場合
血中のウイルスたんぱく質を測定する際、自己のからだが免疫応答で作った抗体(IgM,IgG)がウイルスたんぱく質と結合すると、ウイルスたんぱく質の抗原認識部位がマスクされるので、ELISA等のMoAbでウイルスたんぱく質を検出できなくなってしまう。早期に自己の抗体(IgG,IgM)のタイターが上がるようなので、ウイルスたんぱく質を血中から検出するためには、免疫複合体の前処理が必要となってしまい、開発のハードルは高くなる。免疫複合体の前処理=免疫応答で産生されたIgG、IgMを壊しウイルス抗原を露出させる操作が必要となる。
さらに抗原検出系の感度を上げる為には、ウイルス本体の表面たんぱく認識部位に限らず内在するウイルスたんぱくに対する抗体で見つける方法がある。免疫複合体の前処理の際に界面活性剤を入れウイルス本体の構造を破壊、内在するウイルスたんぱく部分を露出させて、この部分に結合するMoAbを拾ってくる手法である。この場合 検出に使うMoAbは立体構造認識ではなく、直線構造認識で且つ、界面活性剤に耐性を持つMoAbを拾ってくる必要がある。

血清検体の場合
 抗原検出試薬系の開発には、Sero conversion panel (感染初期から定期的に血液をサンプリングした単一患者の時系列検体)が必要になるが、日本ではまだ出来上がっていない。中国では患者数が膨大なので作られている可能性が高いが日本には入ってこないだろう。どうやら感染研で作られているようだ。同時にスワブ検体のセロコン(セロではないが)もあるようだ。

新型コロナのPCR以外の簡易迅速検査法(抗体・抗原)の開発は、現時点でセンセーショナルなトピックであるが、PCRと同等の感度、特異度を出すためには PCRと平行作業でデータを蓄積(×2倍の仕事量)しなけらばならず、時間が掛かる。そこまで検査が必要とは、私は思えない。

能性
年齢者に対する致死率が高い理由 過去に感染したコロナウイルスに対するミミック抗体ができており、それが新型コロナウイルスと結合 免疫複合体を形成 サイトカインストームを起こす。核酸情報だけの相同性とそれから形成されるたんぱく質相同性が同じとは限らない。スペイン風邪の若年齢者の致死率が高かった場合とは逆の反応。



治療薬

クロロキンが有効であるという報告がある。←効き目がないとの判断が多くなる
Breakthrough: Chloroquine phosphate has shown apparent efficacy in treatment of COVID-19 associated pneumonia in clinical studies 文献リンク




免疫応答の図、HIV WB結果は以下から引用
2012 04 Serology for the Bewildered Biochemist  勉強会資料
Craig Leeman
SydPath
St Vincent’s Hospital Sydney





JR四国 本四備讃線(瀬戸大橋)で架線切断で立ち往生

1394. JR四国 本四備讃線(瀬戸大橋)で架線切断で立ち往生 2024/11/10 随時記載

 NHKによると以下引用 JR瀬戸大橋線で列車が立往生 架線断線 車内に乗客約150人  11/10  以下引用  10日午前、JR瀬戸大橋線で架線が断線し、高松発岡山行きの快速列車が瀬戸大橋の上で立往生し、5時間あまりにわたって乗客およそ150人が列車内に残さ...

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