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2021年10月26日

1153. 東京都交通局 都電  荒川線 電力貯蔵設備導入後の状態とその周辺 

 電力貯蔵設備導入後の状態とその周辺

 終点側の早稲田駅停留場付近で電圧降下により、電車線電圧が420Vになることがあった。(最低電圧は400Vを死守) 2018年にそのための対応として高戸交差点付近にリチウムイオン電池が導入された。

 そもそも早稲田駅は、き電末端に当たり電圧降下が発生しやすい下地があった。き電線は、庚申塚変電所より1回線ではなく、途中にき電区分を入れて2回線引かれてあり分割き電を行っている。都電の特殊性(路面電車)により変電所から負き電線もレールとは別に引かれており、電食対応がなされている。 以下図参照

庚申塚変電所は、王子駅が末端き電区分で早稲田駅までを担当している。
図中太い線が軌道のき電系統 その下の庚申塚1~4号線は(ー)記号がついている負き電線
今回 王子駅から順にき電線の敷設状況について調査した。

過去記事

873. 東京都交通局 都電 荒川線 西尾久変電所

872. 東京都交通局 都電  荒川線 王子変電所(廃止)

王子駅から早稲田駅方面へ

庚申塚3号線 真中庚申塚3号線(ー)両側が庚申塚3号線(+)

王子ガード下 剛体架線モドキ 右ガードに沿ってコルゲートチューブ保護き電線

コルゲートチューブに標識

拡大

王子ガードを潜り 庚申塚3号線(+)がトロリ線にき電

600Vの電圧絶縁は簡単な仕様

西ヶ原四丁目 き電区分 三ノ輪から7.263㎞

セクションインシュレーター 右 庚申塚3号線き電 左 庚申塚2号線き電



レール間ジャンパ線

トロリ線間も均圧線でジャンパ

庚申塚3号線(+、ー)
過去記事
 
871. 東京都交通局 都電  荒川線 庚申塚変電所

左からの青い線 限流抵抗器を経た庚申塚4号線(ー)
その上は庚申塚1,2号(+、ー)

線路脇を引き下される庚申塚4号線(ー)

線路を潜ってレールにボンド庚申塚4号線(ー)

庚申塚4号線(ー)レールにボンド

庚申塚1,2号(+、ー)き電線が早稲田方に延びる

トロリ線間でジャンパ

レール間ジャンパ

庚申塚1,2号(+、ー)

庚申塚2号(ー)

庚申塚1号(ー)

レール潤滑剤塗布装置




塗布部

急カーブに対応

庚申塚2号線(ー)青のケーブルが線路脇に引き下される

庚申塚2号線(ー)青のケーブルが線路脇に引き下される

庚申塚2号線(ー) 嘗ては負き電線は青碍子 正き電線は茶色碍子が多用されていた

庚申塚2号線(ー)レールにボンド

残るき電線は庚申塚2号線(+)と庚申塚1号線(+、ー)

大塚駅前 左架線柱に庚申塚2号線(+)と庚申塚1号線(+、ー)

庚申塚2号線(+)と庚申塚1号線(+、ー)

大塚駅 剛体架線モドキ

パンタグラフはL字鋼に触れている

庚申塚2号線(+)最後のき電分岐

雑司ヶ谷区分 三ノ輪から10.268㎞ 西ヶ原から3.005㎞

き電線は、庚申塚1号(+、ー)

参考資料では鬼子母神で庚申塚1号線はレールに
ボンドされているが実際は、学習院下方面に延びている。

庚申塚1号線(ー)レールにボンド 学習院下付近

庚申塚1号線(ー)が引き下される。庚申塚1号線(+)が残る。



庚申塚1号線(+)が残り、トロリ線にき電

学習院下駅より鬼子母神方面 上り坂

学習院下駅より早稲田方面 下り坂

学習院下 庚申塚1号線(+)き電分岐


庚申塚変電所は、王子駅が末端き電区分で早稲田駅までを担当している。
図中太い線が軌道のき電系統 その下の庚申塚1~4号線は(ー)記号がついている負き電線
一番右にあるのが電力貯蔵装置

鬼子母神からの下り坂を下り切ったところに電力貯蔵装置がある
三ノ輪から11.462㎞ 
西ヶ原区分セクションから4.199㎞
庚申塚2号線区分セクションから1.194㎞
早稲田から740m 

各盤の働き

制御部と入力盤 正極断路器と遮断器 負極断路器が内蔵

FL盤 フィルター回路 コンバーター盤 高耐圧IGBT素子によるDC/DCコンバーター

出力盤 直列リアクトルとコンデンサ、断路器
蓄電池盤2 12モジュール(96セル)345.6V


蓄電池開閉器盤 蓄電池1,2を並列接続
蓄電池盤2 12モジュール(96セル)345.6V 1セル3.6V

コンパクトに纏まっている


電力貯蔵装置の最終断路器は「開」
即ち現在は運用していない。


最終断路器「開」状況

断路器は手動で操作する。


 実際の運転には苦労していることが資料から読み取れる。 早朝、夜間において蓄電池に電気を貯めず調整放電を行っている時間帯があったり、夏季では昼に逆に調整充電を行っている時間帯もあるなど、必ずしも効率的な運転状態ではない。
  同様な例として、桶川の電力貯蔵装置も効率的な運用ができていない。

 私見であるが、き電線を太くし、き電線による電圧低下を軽減させ、位置を最終の早稲田駅にもっていけば効率的な運用ができるかもしれない。鬼子母神から早稲田方は下り勾配なのでトロリ線が上下一括き電状態ならば、都電の運行頻度で回生電力の融通が発生し坂下に置いた電力貯蔵装置が上手く働いていないように思える。

参考資料
栗原 一浩;東京さくらトラム(都電荒川線)における電力貯蔵装置の導入と電圧降下補償:鉄道と電気技術,VOL.31,No.3,pp.44-50