中央本線において超電導送電で営業列車に電力を供給します -超電導き電の実証試験-pdf注意
公益財団法人鉄道総合技術研究所(以下、鉄道総研)では、これまで超電導き電システムの研究開発を進めてまいりました。このたび、東日本旅客鉄道株式会社の中央本線日野駅・豊田駅間において、本システムの適用による営業線における実証試験を開始します。
引用終わり
とうとう日野実験場の超電導き電線の実証実験が始まるので現場を見てきた。過去の実験の際の外観は変わらない。超電導き電線も過去に設置されたものの再利用。
構成は大仁の実験設備と同じものと思われる
今回の超電導き電線が敷設されている実験所 |
屋外に放置された超電導き電ケーブルは液体窒素を抜かれ、乾燥窒素ガスで置換されていたはず。同心円に配置されている内部導体にスペーサーは入っているものと思えるが重力で偏心を起こしている可能性もある。外部からの熱で常温状態の超電導き電ケーブルの内部コアと外部断熱管の摩擦も発生しているはず。(膨張率は同じではない)
下りき電線13FからT分岐 |
左に断路器 現在開放 |
超電導き電線末端が収容されている建屋 |
右 枕木の上から超電導き電線が引き込まれる |
実証実験で内部に直流高速度遮断器があるので開閉所設備に該当 64Pも整備されているはず |
建屋反対側からの画像 超電導き電ケーブルが引き込まれている ガス放出のステンレスパイプが引き出さている |
下りき電線13FからT分岐 |
日野変電所の下り方エアーセクションは約500m 豊田方にある 黄色が今回の実験で13Fが繋がる日野変電所の八王子方架線 緑色は日野変電所の立川方架線 11Fが繋がる 豊田方から観察 |
日野変電所の下り方エアーセクションは約500m 豊田方にある 黄色が今回の実験で13Fが繋がる日野変電所の八王子方架線 緑色は日野変電所の立川方架線 11Fが繋がる 日野方から観察 架線柱にセクション標識 |
下り方き電線13FからT分岐する超電導き電線接続部へのケーブル |
断路器が噛ましてある |
液体窒素容器 通称エルフ 1本 約150Lの液体窒素が真空断熱ボンベの中に入っている 全部で13本あるから1950L 超電導き電ケーブル右の黒いパイプ状のものが建屋内に引き込まれている |
超電導き電ケーブルを予冷しているものと思われる。自転車があるのは終端と約500m離れているための移動用
空冷のチラーユニットとその奥 リザーバータンクが見える |
クーリングタワーがあるが使われていない |
超電導き電ケーブル右の黒いパイプ状のものが建屋内に引き込まれている |
ターミナルに超電導き電ケーブルが繋がっている |
ターミナルは大仁にあったものより大きい 碍管が太い この碍管の上部に端子があり通常のき電ケーブルが繋がっている 電源端子部 外気温16度前後と過冷却液体窒素温度沸点-197℃ 温度差約213℃ 超電導き電線と銅ケーブルの接続点 銅ケーブルが接続される銅ブスバーは循環液体窒素で予備冷却されていることだろう |
大仁実験施設にあったターミナル部 小さい |
日野実験場の超電導き電線接続部 |
大仁にあった同部分 日野の方が碍管が大きいし全体も大きい |
実証実験で内部に直流高速度遮断器があるので開閉所設備に該当 64Pも整備されているはず |
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実証実験での配線 |
1.超電導き電ケーブルが繋がる直流高速度遮断器 解放 断路器開放
2.超電導き電ケーブルが十分冷却されて電気抵抗が0になったことを確認
3.日野変電所の13F 直流高速度遮断器 八王子11F 直流高速度遮断器 解放
4.実験場の両断路器投入
5.日野変電所の13F 直流高速度遮断器 八王子11F 直流高速度遮断器 投入
6.超電導き電ケーブルが繋がる直流高速度遮断器 投入
まずは通電無負荷状態でケーブル全体の検査を行うだろう。夜間実験でケーブルの状態を確認。徐々に電流を流すことはできないので、通勤時間帯を避けた閑散時間帯に直流高速度遮断器を投入して実用試験が始まるのだろう。
き電線の電流は電気抵抗0の超電導き電ケーブルに流れる。き電線側にもごく少量分流するが無視できる状態。
き電線を途中でぶった切ることはしない。
電車走行 超電導き電線を通じて日野変電所の13Fが流れる
超電導き電ケーブルの直流高速度遮断器を開放すると通常のき電線に電流は流れる。
日野変電所の13F方を定電流源として3000A流せるとして仮定
超電導き電線の長さ408mの抵抗値は0Ω 終端部に3000A消費の電車が在線するとして
超電導き電線が並列に入っているき電線の長さ408mとして抵抗値を求めて電圧低下を計算
0.0172μΩ×408m/325㎟=0.0215Ω 2本並列接続なので 0.0215/2=0.01075Ω
3000Aの電流を流すとV=IRなので3000A×0.01075Ω≒32Vの電圧低下
超電導き電ケーブル採用で約32Vの電圧低下が帳消しできる。
しかし八王子変電所と並列き電なので八王子変電所からも電車位置に対して電流の供給がある。また立川変電所からの横流もある。(日野変電所内の直流母線で繋がっているため)力行、回生も一様ではないのでこの32Vの電圧低下はき電線の電圧変動の波に隠されてしまい正確には測定できないのではないかと思う。
この実証実験は、ただの超電導き電ケーブルへの通電試験で通電時の温度変化、液窒の消費度、電流の流れの方向等の簡単なデータ取得に終わるだろう。
JR東日本、総研のプレスリリースから引用 |
一番簡単な対策は、JR東日本が忌避している上下一括き電を行なえばよろしい
超電導き電ケーブル運用に際して250mおきのき電分岐装置への対応。地絡時の線路対地電圧の上昇(もろに大電流がながれるので対地電圧が急上昇)変電所に戻る帰線電流がレール抵抗値のまま等々いろいろ課題がある。
超電導技術の応用は、電力貯蔵、超電導電磁石等が望ましい。エントロピーの法則から考えても き電線への応用は課題が多い。但しドライアイス温度での超電導線が開発されれば大いに利用すべきだと思う。