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2026年4月2日

1561. 越後線は”非電化”化されない。JR東日本の資料から読み解く(変電所から見た方向性)

 越後線は”非電化”化されない

「X」にポストした記事を掘り下げてみた。その結果重要な記載があることが判明した。

 そのJR東日本資料は「鉄道と電気技術誌」に掲載された髙林克史ら;「越後線小島谷変電所高圧受電化について」:Vol.37,No.2,pp.43-50、2026である。

 変電所寿命を30年として越後線の電化が1984年。30年経過後の2014年当初は柏崎駅ー吉田駅間の非電化計画が検討されていた。そのため小島谷変電所の更新計画は見送りとされていた。しかし運用車両に対する課題等から非電化計画は中止となる。

 非電化化が中止となったため2020年4月に小島谷変電所の更新計画が改めて策定された。また数年後にはE129系に全て置き換えられることが計画されていた。E129系を導入することでピーク電力、消費電力の減少が想定されていたので小島谷変電所の設備スリム化とメンテナンスコスト抑制を趣旨とした設備計画の検討を進めることとなった。

資料から引用 車両がE129系になったため電力のプロファイルが減少に変化

 JR東日本では初めての6.6kV受電の直流変電所が誕生することとなった。と資料には書いてあったが実は南古谷変電所が6.6kV受電の変電所として2023年以前に完工している。

1325. JR東日本 川越線 南古谷き電区分所 しれっと変電所化(但し小容量) 

JR西日本、JR東海、JR四国では既に6.6kV受電の変電所が多く運用されている。(閑散区間等)

 以前は66kV受電でき電を行なっていた。また霜付着を防止するため架線加熱式の霜取り装置が付けられている。架線加熱式の霜取り装置については以下の記事に詳細が記載してある。

807. JR東日本 小島谷変電所 越後線 2018年6月6日投稿  

 私鉄では6.6kV受電の直流変電所は多数あるがJR東日本では本格的き電用6.6kV受電は初めてとなる。

最近66kVから6.6kVに受電変更された私鉄変電所は以下の変電所がある。

1333. 上信電鉄 福島変電所 受電設備66㎸受電から6.6㎸受電へ変更 2023年11月15日投稿

小島谷変電所の単結線図

 単に受電が66kVから6.6kVに変化しただけでなく並列12パルス整流を行ない高調波抑制、直列リアクトルの廃止、電力濾波器の廃止、DC-VRの廃止を行ない機器のコスト低減を行なっている。(コピーの文字が潰れて読めない!!)資料より引用


 左にあるのが2重三相シリコン整流器用変圧器(Δ、Y結線)、バスダクトで明電舎製シリコン整流器(並列12パルス)へシリコン整流器の横の四角い架台に載っているのは所内変圧器OT、資料より引用

直流電鉄用ヒートパイプ自冷式 シリコン整流器  明電時報 pdf

最近のJR東日本はこの型のシリコン整流器が多い

 コスト削減のため1回線受電で52R開放の場合所内変圧器より所内電源を受電。定位はOTから所内電源を確保。しかし東北電力停電の場合は、可搬型発電機で所内電源を確保 資料より引用

 主直流高速度遮断器54Pを省略したため52R開放後の停電時89Pの主母線断路器で設備切り離し、連絡遮断装置等が動作した場合、52R開放で停電を行なう。

 66kV受電の場合整流用変圧器の上位側が避雷器、断路器、遮断器、避雷器の構成となり66kV 場合設備コストが掛かる。6.6kV受電の場合汎用の一般需要家用の台数が出ている機器を使用するのでコストが下がる。


Google street Viewから
東北電力桐島変電所から専用線6.6kVで約250m引込
工事用の作業所が変電所上方に確保されている


Google street Viewから
既存の6.6㎸引込口を改修して再利用した模様 旧小島谷変電所

6.6kV化された際の引込口 PAS、VCT、所内変圧器はキュービクル内に収容

左の小島谷変電所の既存の6.6kV受電設備をそのまま改修利用 専用線を右電柱から東北電力桐島変電所から引込 Google street Viewから


左の電柱から右の桐島変電所まで専用回線を引込 
既存の電柱を利用しているのでコスト削減

ライフサイクルコストによるコスト比較分析をJR東日本では行なっている。
  1. イニシャルコスト(建設費・電力会社負担金) 特高受電が優位 既存受電経路使用
  2. ランニングコスト(動力費・修繕費)電気料金では特高受電が優位。修繕費では高圧受電優位
  3. 廃棄コスト 高圧受電優位
1~3のコストのライフサイクルコスト 
 高圧受電は負担金や電力料金単価が割高となるが修繕費が抑制されることからトータルコストでは高圧受電が優位となっている。修繕費を抑制できることはメンテナンスコスト抑制の趣旨と合致するので高圧受電に切替えて設備更新を行なっている。

 東北電力側は、電鉄負荷変動(パルス状)が一般需要家に影響を与える可能性があるため専用線での引込となった。また一般需要家配電線からの受電なので電源供給の信頼性低下の懸念が電力会社側から示されたがJR東日本が信頼性低下を担保する(停電やむなし)ことで高圧受電にこぎつけている。


2024/12 小島谷変電所 Google Earthから

2025/4 小島谷変電所 Google Earthから
新しい6.6kV対応機器が運び込まれている。

 さて6.6kV受電化された後の霜取り用のトロリ線加熱装置は撤去されているかであるが、単結線図をみるとまだ残っている。

赤丸 ダミー抵抗、緑 高圧開閉器89NF、青丸 断路器89PF
紫の部分回路不明?直流母線から分岐 〇2つの団子はDC用電圧計のようだ

ダミーロード切替用交流6600V用高圧切替開閉器を流用 左右の2回路分を使用 耐塩構造
断路器として使用

これが青丸部分の断路器とダミーロードへ向かう回線部

ダミーロード切替用交流6600V用高圧切替開閉器を流用 左右の2回路分を使用 耐塩構造
2組 状況合わせてダミーロードの抵抗値を8-6-4Ωに切替
断路器として使用
地絡保護はCT1とCT2の電流を計測して保護を行なう資料より引用
 



赤丸 ダミー抵抗、緑 高圧開閉器89NF、青丸 断路器89PF
紫の部分回路不明?直流母線から分岐 資料より引用


 〇2つの団子はDC用電圧計のようだ。脇から出ている線を辿ると64Pを経て帰線に繋がっている

資料より引用

 上記の単結線図から推測すると青丸を投入するとき電線にき電 ダイオードに順方向の電流が流れ き電を行なう。青丸の右横の線はトロリ線に繋がる。トロリ線加熱時は赤丸の高圧開閉器を投入、青丸を開放すると電流はトロリ線を経由してダイオードには逆方向なので流れず末端のき電線分岐装置からき電線を経由ダミー抵抗を経由して接地されることになる。

 同様に柏崎ー吉田駅間には小島谷変電所の柏崎方に礼拝変電所があり、ここも66㎸受電の変電所であるのと、小島谷変電所と同時期(1984年)に設備されたので設備更新の時期を迎えている。近傍(525m)に東北電力の礼拝変電所があるのだが、こちらは66kV受電のままで設備更新を行なうそうだ。理由は東北電力から提示された負担金が大きくライフサイクルコスト比較分析の結果特高受電となったそうだ。

Google street Viewから
 JR東日本も約550m先の東北電力礼拝変電所(赤丸部分)から専用線を引けば高圧受電できそうだが特高受電となっている。

808. JR東日本 礼拝変電所 越後線 compleat 2018年6月7日投稿

 礼拝変電所は2022年8月にシリコン整流器を明電舎製に交換してDC-VRを廃止しているようだ。

 さらに2023年8月特高受電関係(遮断器、断路器、避雷器)シリコン整流器周りの設備更新が行われている。ここは66kV受電のままでよく見ると電力濾波器は撤去、直列リアクトルはまだ残っている。整流用変圧器も電化当初のままであるので、この後整流用変圧器の交換が行われると推測する。


JR東日本 礼拝変電所6.6kV受電口 既に一般需要家の高圧配線で電柱が満載
 これにあと1回線の専用線を足すとすれば6.6kVCVTケーブルで敷設するか、別に1本電柱を建植しなければならなくなるので負担金が高くなるのであろう。Google street Viewから

 このように越後線の柏崎ー吉田間は閑散区間で、長閑な農村地帯を運行し昼間の運行間隔が4時間も空くが2つの変電所の設備更新を行なうため”非電化”化は当面は行われない。


参考資料

髙林克史ら;「越後線小島谷変電所高圧受電化について」:Vol.37,No.2,pp.43-50、2026

トロリ線 着氷霜対策
渡辺 義孝;越後線のトロリ線着氷霜対策:鉄道と電気技術,1994,Vol.5,No.2,pp.10-12
NDLの個人向けデジタル化資料送信サービスで内容が読める

白石 秀夫ら;トロリ線の着氷霜対策:鉄道と電気技術,1991,Vol.2,No.8,pp.40-44
NDLの個人向けデジタル化資料送信サービスで内容が読める