2018年6月6日

807. JR東日本 小島谷変電所 越後線

小島谷変電所

#架線凍結  #着氷 #着霜 防止
 

グーグルマップで表示名がでる
アプローチ:小島谷駅 電車の本数が極端に少なくなる
受電:東北電力 桐島線よりT分岐
 全 JR東日本管内273か所の全直流変電所を巡って、初めて見た装置DC-VR装置がある。AC-VR装置は、数々の線区(新幹線を含む)でみたがDC-VR初めてであった。このDC-VR装置は、越後線では、この小島谷変電所と礼拝変電所に置かれている。
 
 小島谷と礼拝変電所にはDC-VR装置が設備されている。また着霜除去装置が小島谷変電所に設備され礼拝変電所先柏崎・吉田間で作動するようになっている


架線レス化計画と想定路線(https://kumoyuni45.net/archives/2662)で当ブログが紹介されているが、もともと運行回数が少なく、架線着霜のための特殊な装置  着霜対策ダイオードがき電線分岐部分ごとに設けれてい要る等 架線レスにすればこれら特殊装置は不要となる。
もっともな意見である。



  

 小島谷・吉田変電所間は16.2km、礼拝変電所間は19.5kmとかなりの間隔が空くが
東京近郊でも20㎞を超す変電所間隔が空く場所がある。それは八高線 高麗変電所・拝島変電所間である。
 八高線との違いは、その輸送密度である。
越後線 吉田以南は3時間に1本程度となり極端に少なくなり変電所変成設備も2,000kW/SSと最小レベルとなる。また近隣送電線の関係で変電所の間隔も大きく取らざるをおえず、そのためDC-VR装置が設備され架線電圧の嵩上げが行える装置が設備されている。

DC-VR装置の結線図

通常の整流器に+されたSCR型整流器 ベース部の嵩上げを行い送り出しDC電圧を高くする


DC-VR装置の接続例 サイリスタ整流器を直列に入れて嵩上げを行う
DC-VR装置の原理は。直流負荷が無負荷もしくは弱負荷の場合SCRのゲート制御で、直流電流は、フライホイールシリコンダイオード(バイパスダイオード)を通過させておく。負荷が増加して変電所の内部電圧降下により出力電圧が低下しようとすると、出力電圧または負荷電流の大きさを検知して、必要とする補償電圧が得られるようにゲート指令をサイリスタに与えて位相制御し出力電圧を一定に維持する

それでは、見てみよう

導入部
これは、新幹線新潟基地開放の時に撮った隣接する直流 訓練線の架線柱の上に載っていた装置である。
この時は、新型の避雷器か、DC-CTかと思った

越後線
直接吊架方式が開始 吉田駅以南 直線部分

越後線
直接吊架方式 吉田駅以南 カーブ部分

越後線
直接吊架方式が開始 吉田駅以南 駅部

謎の装置 現る

越後線
直接吊架方式が開始 吉田駅以南 駅部 謎の装置が現る

橋梁部は、直接吊架式ではなくシンプルカテナリーに変更
また強風が吹く部分もシンプルカテナリーとなる

直接吊架からシンプルカテナリーへの移行部

シンプルカテナリー

シンプルカテナリーから直接吊架式への移行 奥に謎の装置 結構 出現頻度は高い
 


越後線
直接吊架方式 吉田駅以南 カーブ

小島谷駅で下車
ここにトロリ線の着氷測定用の温度計、露点温度計、風向計が設備されていた。

謎の装置が直上にあった。出現頻度から考えると き電電分岐線と思われるが
JR東日本 全直流変電所273か所を見てきたが、他の線区では見ていない
越後線特有の装置のようだ

拡大 どこかに銘板があるはずであるが見つからない

反対側 銘板は無い


単体をさらに拡大
上下金属部分と中間部は絶縁されている
傍にある小さい機器は、サージアブソーバーのようだ

小島谷変電所に向かって歩く 横向き頭頂部に銘板がある


拡大 まだ読み取れない

謎の機械 これは読み取れそうだ


読み取れた 着霜対策ダイオードと明記


明電舎の特許製品で着霜対策ダイオードと小型の部品は保護回路であった




着霜対策ダイオードとは何か  肝 トロリ線 着氷霜対策の目玉設備

電化当時は、まだ装着されていない。
着氷霜が多く発生したため独自に解決方策を策定し、実行に移された。しかし近年の温暖化の影響で出番は少なくなってきている。
 通常は、き電線からき電分岐線でトロリ線にき電。列車を通じて帰線を経て変電所に戻るが列車非運行時(夜間・着氷霜が起こりそうな天候時) トロリ線からき電線を経由して変電所に逆流させて戻す際に、トロリ線加熱用ダミーロードを入れてトロリ線自体を発熱させて着氷霜を融解除去する装置が、この着霜対策ダイオードの役目であった。 通常の順方向では、き電分岐線の役目。夜間着氷霜発生時には、トロリ線からの逆流を防ぎ、加熱が行われる。
500m間隔で入れてある


単体をさらに拡大
上下金属部分と中間部は絶縁されている
傍にある小さい機器は、サージアブソーバーのようだ


 着霜対策ダイオード諸元
着氷霜防止電流200Aを連続通電できること
電車運転最大電流(短時間)に耐えられること(順方向)
柱上配置のため1素子で構成
繰り返しピーク逆電圧 3200V
平均順電流 3100A
サージ順電流30,000A
質量10kg
 
全体の構成
変電所送りだし電流絶対値監視 300Aを越えたら停止 通常の着氷霜融解電流は200A
送り出し電流と戻り電流の差分を検知(整定値30A)差分が大きくなったら何らかの漏れ電流発生で停止として安全対策をとっている。
 
 
実際のトロリ線の温度上昇と電流・抵抗値の関係 一例
 
 
 
 






単純な構成であるがDC-VR装置があるため変成設備部分が若干複雑となる 全体構成
右 最終受電鉄構 断路器、避雷器、MOF、避雷器の順

左 遮断器、MOF、避雷器、整流用変圧器 整流用変圧器の二次側の出力端が3×2の構成



右 整流用変圧器 出力端が3×2の構成
手前 DC-VR SCR型整流器、その後ろがシリコン整流器
DC-VRの直流端からシリコン整流器へ分岐
この部分でDC-VRとシリコン整流器が直列となる


DC-VRの直流端からシリコン整流器へ分岐
DC-VRの直流-端は89Nへつながる
正極・負極母線断路器の部分


DC-VR銘板
296kW 定格電圧200V 三相ブリッジ 定格電流1335A 定格周波数60Hz???
東北電力管内なので50Hzのはず


整流用変圧器 銘板
定格容量 340kVA 定格周波数50Hz
 

整流用変圧器から手前DC-VRとその隣シリコン整流器へ分配

奥にあるのは、直列リアクトル

直列リアクトルの一部結線は分離してCTを通る 多分これが電流制御用のセンサー
DC-VRのサイリスタゲート制御用


シリコン整流器 2000kVA
直流端+がCTを通る

越後線でよく見られた電力沪波器 頭頂部にケーブルヘッド



正極・負極母線断路器
89P側 建屋に入る。一部分岐して電力沪波器へ

変電所出力端 右 礼拝変電所 左 吉田変電所

左右に分離 右 礼拝方 左 吉田方
左 架線柱への立ち上がりは帰線 右 架線柱の電線は、き電線

インピーダンスボンド中性点に繋がる帰線

特徴的なダミーロード
初めは、回生電力吸収用だと思ったが調査するとトロリ線加熱用のダミーロードであった
当初は、左側の2列を設備して小島谷・吉田間を加熱
その後 増設して 小島谷・礼拝間を加熱

ダミーロード 3バンク こちらは1バンク合計8Ω

一番端は、数が少ない 合計4Ω?

一番左 合計8Ω?

中間タップ付きダミーロード

変電所 直下のトロリ線へのき電部分 ダイオードが無い エアーセクション部


列車通過


ダミーロード切替用交流6600V用高圧切替開閉器を流用 左右の2回路分を使用 耐塩構造
断路器として使用

ダミーロード切替用交流6600V用高圧切替開閉器を流用 左右の2回路分を使用 耐塩構造
2組 状況合わせてダミーロードの抵抗値を8-6-4Ωに切替
断路器として使用

右 変電所よりのき電線
左 ダミーロード切替配線


トロリ線には最大でも200Aしか流さないので400Aで十分
但し 通電時切替は行わないで一端停電させて
切替を行う 断路器的な役割



参考文献

図1 電化工事概要図
蔵田 幸一;越後線・弥彦線-東三条間電化開業:交通技術,1984,Vol.39,No.6,pp.14-15

図2 送電き電系統図(一部追記改変) 図3 変電所単線結線図(礼拝・小島谷SS)
小坂橋 光; 越後線、弥彦線(弥彦-東三条間)電化設備:電気鉄道,1982,Vol.36,No.10,pp.3-6

DC-VR装置解説 図1 き電電圧補償用整流器の構成
三浦 梓;赤穂線に設置したき電電圧補償用整流器について:電気鉄道,1970,Vol.24,No.9,pp.7-9

トロリ線 着氷霜対策
渡辺 義孝;越後線のトロリ線着氷霜対策:鉄道と電気技術,1994,Vol.5,No.2,pp.10-12
NDLの個人向けデジタル化資料送信サービスで内容が読める

渡辺 義孝ら;保守を軽減するトロリ線着氷霜防止システム:明電時報,1995,Vol.244,No.5,pp.36-37

白石 秀夫ら;トロリ線の着氷霜対策:鉄道と電気技術,1991,Vol.2,No.8,pp.40-44
NDLの個人向けデジタル化資料送信サービスで内容が読める

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