端的に言えば 糸魚川静岡構造線の地下を避けるためである。
この部分を避けるために迂回せざる終えなかった。しかし土木技術者はもっと壮大な夢を持っていた。それはアルプスルート なんと唐松馬岳直下と黒部渓谷の黒部渓谷鉄道の終点 欅平直下を横断する約70㎞のトンネルルートも思い描いていた。
この場合黒部周辺の破砕帯、高熱隧道を避けることができないのでルート案だけで終わっている。迂回ルートの場合でも飯山トンネルの膨張泥岩、天然ガス問題は避けることができないわけだが、アルプスルートよりも先人の経験(北越急行・鍋立山トンネル)が生かされる。
この迂回のため新潟県の50Hz地域の走行が必要となり、新上越変電所だけがJR西日本管轄で東北電力50Hz受電となっている。
新上越変電所の周辺には、この154kV 50Hzの西上越線だけしか通過していない。0710が新上越変電所の供給線となる。 1491. 北陸巡検2 JR西日本 北陸新幹線 新上越変電所 デマンドオーバーには注意 150万円/回 |
もうひとつ挙げるとすれば長野オリンピック開催の輸送力確保との大題目があったため。長野駅経由が必須であった。下のルート図では長野の下 川中島から大きくカーブして長野駅を経由していない。最短で北陸と東京を結ぶには長野駅経由は考慮されていなかった。
長野県してはオリンピック終了後の観光資源活性化のためにも迂回ルートが押しであり、機構としても通し易い飯山経由を選択するのが一番の得策と考えていた。たとえそれが60Hz-50Hz-60Hzの地区通過としても、既に軽井沢で50Hz-60Hzの通過実績もあるし地上設備だけで完結する。
ただJR西日本としては機構から移管後1ヶ所だけ50Hzの変電所を入れなくてはならず、デマンドオーバーに注意が必要になった。
時として技術者は、突拍子もない無い計画を立てる。同様な例では、在来線の碓氷峠越えで軽井沢駅が地下350m(d案)に設けられるというものもあった。
さて迂回地区の50Hz地域を通らないで、かつ北陸電力管内の変電所で完結されるためにはアルプスルートのほか千国の下を通すルートも存在していた。しかし糸魚川周辺に北陸電力の154kV送電線が存在せず新幹線用の変電所を設けることはできない。
この場合 現在の新長野変電所(JR東日本管轄・中部電力60Hz)の位置を変更し、中部電力の中信北信線154kVが通過している川中島付近に変電所(中部電力60Hz・JR東日本管轄にする)を設け、現在の新黒部変電所(JR西日本管轄・北陸電力60Hz)との中間 大糸線平岩付近の地下部にき電区分所を設ければ60Hzで一気通貫でJR西日本は北陸電力で受電を統一できたわけだが、このルートも癖があり糸魚川静岡構造線を地下で通過する必要がある。まったく未知の部分に北陸新幹線を通す必要がある。そのため無難な迂回ルートが採用された。
結局 無難な迂回ルートを経由 新潟県の東北電力からの受電が必要となった。
参考資料(順不同)
吉村恒;横川ー軽井沢間(アプト区間)改良計画/信越線 Ⅰ 線増工事について:電気鉄道,Vol.15,No.11,pp2-12,1961
鉄道建設・運輸施設整備支援機構鉄道建設本部東京支社;北陸新幹線工事誌 : 長野・糸魚川間:2017,3