新上越変電所
アプローチ:高田駅 林道歩いていく途中でJR西日本の下ってくる車とすれ違った。もう少し 早く着いたら現場で鉢合わせで取材はできなかったであろう。
受電:東北電力 西上越線_0709分岐 新上越変電所線0710 154kV
北陸新幹線開業時点では、東北電力の50Hz 154kVの送電線が最短の供給元であった。
その後上越火力発電所から中部電力の60Hz 275kVの上越火力線が2011年運開した。が時遅し、新高田SP、新糸魚川SP区間だけ50Hzでのき電区間となった。
赤丸が新上越変電所 東北電力の送電系統図 上位に大所川発電所を2ヶ所、デンカの発電所3ヶ所が繋がっている。 石曽根の黒丸はデンカ青海工場。石曽根開閉所は、デンカのカーバイド製造プラント電気炉(アーク炉)に大電力を供給している。そのため新幹線電力として十分な短絡容量を持っている |
上位(大所)には発電所がある |
き電:スコット結線変圧器2台 全管路形GIS設備 変圧器、AT(単巻変圧器)も管路形GIS
で繋がっている。
外に見えてる部分は、受電設備の引込ケーブルヘッドと変圧器の放熱器、OT(所内変
圧器)とその二次側
この下のき電系統図を見て判るように、隣の新高田き電区分所(60/50Hz)境界とは2.3㎞の距離しかない。
赤が正確な配線 ×は間違い |
通常 スコット結線変圧器の二次側は、M座、T座とも同容量のの電力を使うように設置場所が選択されているが、この新高田変電所、隣の新長野変電所とも隣のき電区分所までの距離が短い。この場合一次側での電力平衡率に変動がでると思う。(交流式電気鉄道では電気設備技術基準第55条及び同基準解釈第260条に基づき、連続2時間の平均負荷で三相交流電圧不平衡率 が3%以下にするよう規定されている)。一次側が短絡容量が大きい送電線に繋がっている場合は、二次側の少々の不平衡はネグレッシブなのかもしれない。
新上越変電所は、先に述べたように全屋内式で管路形GISで設備が組み上がっているので見るべき設備が無い。但し 変電所正面左に側道があり金網に沿って入れるようになっている。立ち入り禁止の表示も特に見られない。
この変電所からJR西日本管轄 |
林道から俯瞰 |
新上越変電所線0710 154kV |
1L側 この左から側道がある |
手前 △帽子は避雷器、その奥 CVT(コンデンサ形電圧計)と一部ブロッキングコイル |
CVT(コンデンサ形電圧計)と避雷器LA Arと表示する場合もある |
2L側 2L、1Lどちらから受電しているかは不明 |
所内引込ケーブルヘッド 154kV |
AT1とAT2 銘板を撮ろうとしたが出来ず 50/60Hz共用のはず |
OT(所内変圧器)二次側は外部へ |
AT2のき電側は管路形GISで所内へ |
スコット結線変圧器 |
50,000kVA 1台 50 MVAは容量としては小さい 一次側、二次側とも管路形GIS接続。き電区間が両座合わして40㎞で通常の半分。ここからの延長き電は考慮しなくてよいため。両端とも60Hzの地区になるので延長き電できない。 |
コンデンサ形計器用変圧器 設備一式は日立製作所納品 |
所内のき電線引出部(右側)と思える画像 日立論評日立評論 2016.01-02から引用 |
新箕郷変電所の管路形GIS設備 このような設備が屋内に収容されているのだろうと想像
切替開閉器もGIS化されている珍しい例 |
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新上越変電所が落ちた場合は、新黒部変電所からの救済き電で50Hzき電区間が60Hzき電区間に切り替わる。そのためAT、計器用変圧器、変流器などは50/60Hz両用対応形になっている |
新長野変電所方からの救済き電もできるはずであるが、管轄がJR東日本とJR西日本に分かれているため新黒部変電所からの救済き電で新高田き電区分所突合せとなる。
電気料金算出における新上越変電所の特殊性
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新上越変電所のみ東北電力受電で個別契約 北陸電力受電のその他変電所は、総合契約なので電力量が平均化される |
契約デマンドは5,350kWhに設定されている。デマンドオーバー1回で150万円で過去には複数回のデマンドオーバーを発生させた実績があった。
東北電力のWebで調べるとデマンドは最大契約電力kWで表示されるものであり、30分の測定範囲の積算電力契約電力が5,350kW以内なら割増金が発生しない。一度でも契約電力を超過する最大需要電力が記録された場合、その超過した最大需要電力が、その月以降の契約電力として自動的に適用される。この新しい契約電力は、その後11ヶ月間(またはそれよりも高い最大需要電力が記録されるまで)維持される。
確かにうちの変電所のデマンド値も30分毎に積算されていき、最大電力(kW)が記録された時点で契約電力の変更があった。そのため電力メーターのパルス出力を積算表示するデマンド警報器を自作して設定域に近づくとメインエントランスのパトライトが点滅するようにして管理していた。
デマンドオーバーは空調を多く使用する夏場に発生していたが、研究所の性格からいって空調を切るような研究環境悪化は行わなかったので
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30分の積算値 デマンド上限値は5,350kWh 5,000kWh がノッチ制限の要請基準 |
30分で5,000kWH消費する際
5000kWh/30分=10,000kW=10MW
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1列車当たりの使用電力量を1分毎に平均化した表 横軸はき電区間(SP)に進入した時刻を0として進出するまでの時間 |
かがやきは、上りは最初小さな山がありその後大きな山を越えて下る10分で区間を抜ける
はくたかは、大きな山を越えて回生を掛けて次の山を越える15分(停車が入る)で抜ける「かがやき」の場合10分間を全部合計すると約960kWh/10分平均電力に直すと5.8MWになる
「はくたか」の場合15分間を全部足すと約1060kWh/15分平均電力に直すと4.2MWになる
雑な計算で電源容量は10MW(デマンドオーバーの規制値)なので、かがやき、はくたか各1本を最大電力使用で動かせるがマージンがない。実際は、刻々と変化する電力量の積分値の合算が10MWを越えなければデマンドオーバーしないのでさらに列車数をふやして動かせる。
変圧器の容量は50MVAなので力率0.9としても45MWなのでデマンド値(契約値)を大きくすれば本数増加、スピードもUpできるはず
指令長は、予想ダイヤから列車遅延や列車走行本数、また電力系統システムのデマンド積算値を把握して、経験をもとにデマンドを予測してノッチ制限の要否を判断していた。この判断は、定量的基準が無く指令長の経験による判断に委ねられていた。デマンドオーバーが見込まれる場合5ノッチ以下で走行するように列車司令へ手配(ノッチ制限)をしていたそうだ。
そのためデマンドオーバーの多数回発生と真逆の列車遅延(ノッチ制限)が発生する場合もあった。
時間帯としては10:00~11:00間がノッチ制限時間帯となるため5ノッチ以下の制限が掛かっていた。しかしノッチ制限を一律に指令したため時にはデマンド値が3,600kWhになり4本の列車に4~1分の遅延を発生したこともあった。
このデマンドオーバー制限の5ノッチ以下制御の判断は、基準があいまいであったためJR西日本では、ノッチ制限する列車を限定する手法の確立を行ないアプリを作成して対応したそうである。(E7系のマスコンのノッチ5は、中〜高出力の加速指令を車両の制御装置に送る設定となる。これ以下のノッチで運転することになる)
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新高田SPと新上越SS及び新糸魚川SPの間隔が大幅に違うが一次側の電力は三相で測定するので二次側の電力不平衡は一次側では通常、各相に独立した変成器を備えているため、不平衡な状態であっても各相固有の電流と電圧を正確に変換することが可能なため問題ない |
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デマンドオーバー防止アプリの表示 予測デマンドで5,000kWhを超える表示が出現 ノッチ制限を行なった際のデマンドは5,000kWh以下になっている。そのためノッチ制限の要請基準は予測デマンドが5,000kWh を超える場合に明確化した。 |
現在このアプリ導入でデマンド値をモニターしてデマンド値を抑制しており、デマンドオーバーをすることが無くなったそうだ。つまり一般的なリアルタイムデマンド監視システムの導入を行なっただけということになる。
この時間帯の北陸新幹線のこの区間を通過中の新幹線が遅いと思ったらノッチ制限が掛かっているものとみてよいかも?! SDGsの観点からデマンド制御も必要と思われる。
逆にスピードアップするならこの新上越変電所の契約デマンドを大きくすれば良いことになる。
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IEEJ 2024 5-216 |
参考資料
杉本涼輔ら;新上越変電所デマンドオーバー防止に向けた取り組み:優秀賞:鉄道と電気技術Vol.35,No.6,pp.28-32,2024
御籐憲行ら;北陸新幹線(長野・金沢間) 変電設備・配電設備・電車線設備紹介:明電時報Vol.344,No.3,pp23-24,2014
須貝孝博;北陸新幹線(長野・金沢間)の電気設備について:J. IEIE Jpn. Vol. 35 No. 8,pp3-6,2015