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2014年12月8日

240. JR東日本 新軽井沢き電区分所(新幹線・ATき電・同軸き電)


グーグルマップでは、表示名が出ない。また画像が不鮮明鮮明になった)2016年1月確認) 高崎起点46k650m                  
アプローチ:中軽井沢駅 レンタサイクル使用
                                         
特徴:異周波数区分 50Hzと60Hz 同軸き電、BT設置。所内電源100Vが毎夜(50/60Hz)切替わる。延長き電は、想定されていない設計。新箕郷変電所脱落時は、新渋川変電所からの延長き電。

異周波の接続点の検討は、既に1972年当時 東北新幹線を東海道新幹線と繋げる構想時に検討されており、基本形は出来ていた。しかし異周波対応車両については、未知の分野であることと車両価格の上昇及び変圧器構造の複雑化と重量増で最終的には見送られた。そのため富士川以北は周波数変換変電所を、西相模・網島に設け50Hzから60Hzを横軸回転式周波数変換機(総重量約1,000t)で変換して各変電所に供給する体制をとった。浜松町にあった周波数変換変電所は、当初計画での東海道新幹線田端ヤード延伸および東北新幹線直通運転のため設けられたが、延伸取りやめの為、品川ヤード・大井車両基地への電力供給を担った。

付図1 50/60Hz切替設備改良案
新王子SP 異周波切替設備 原点となるもの
東海道新幹線は、BTき電。東北新幹線はATき電。
浜松町FCと新大宮SSからのき電突合せ。
図1 電源・き電系統図
新王子SPを含めた当初の東海道新幹線直通計画。
全国7,000kmの新幹線大ネットワーク完成時には、列車のループ運転も考慮
して循環運転による逆編成の出現も考えられた。この時点で新幹線上野駅は、
建設計画の俎上には挙がっていなかった。また東京駅が4ホームである。
浜松町FCから田端まで60Hzのき電での同軸き電方式であった。
品川ヤードと田町ヤードの相互利用ができる運用が計画されていた。
付図2 50/60Hz切替点のき電回路
付図3 50/60Hz切替区間の装柱
現在の新軽井沢SPに生かされている、上下線対象配置。
但しNF(PW)は、直達磁界の軽減のため、配線されていない。
新軽井沢SPにおいては、PWの重要性が検討結果から得られており、
普通の電子回路なら一点アースするのが当然であるが、
ベタに同軸き電ケーブルの外被が接続されている。
 異周波接続の接続の原点といわゆるものは、津軽海峡線において初めて実用化された。(実は、当初は同じ50Hz電源であったので対策が完全には、なされていなかった。そのためトンネル内で貨物列車の電気機関車に故障が起こり、立ち往生した経緯がある。長大な編成だったのでディーゼル機関車での牽引ができなく、分割してトンネルから引き出されている。)
 青函トンネルに1972年当時の研究成果が生かされたのである。なぜ津軽海峡線かと言うと北海道は、50Hzであったが津軽海峡線ができた当時、独立して周波数統制がなされた非同期電源であったことによる。このため竜飛き電区分所で同周波異位相接続点が生まれた。現在では、北海道・東北電力の直流送電による連系、スマートグリッド対応でGPSで各発電所は、電源の同期を行っているので50Hz同士の接続は、位相さえ合えば問題は発生していない。

 北陸新幹線は、新軽井沢で東電と中電。新高田き電区分所で中電と東北電。新糸魚川き電区分所で東北電と北陸電との異周波接続点を持ち、東北電力管内の新上越変電所(50Hz)が脱落した場合、中部電力管内の新長野変電所(新高田変電所)(60Hz)と北陸電力の新黒部変電所(新糸魚川変電所)(60Hz)からの延長き電が行えるように設計されている。そのため新高田き電区分所、上越変電所(切離し)新糸魚川き電区分所間は、50/60Hz両周波数対応設備となっている。

 2005年北陸新幹線開業以来初の混触事故 高崎方SN部でカラスにより短絡発生50/60Hzが140msの間 接続されてしまった。
 事故自体は正常にトリップ処理されたが、そのトリップに至る時間が140msと長かったため事故内容が詳細に調査された。東京電力管内の新箕郷SSと中部電力管内の新坂城SS間にSN部を通じて循環電流が流れた形跡があり、今後混触検知装置の検討が必要となっていた。50Hzと60Hzが混触するとビート波が発生。デジタルフィルターなのでサンプリング周波数によりエイリアシングが発生し、検知器の動作ロジックから外れたものと思われる。

異周波切替区間
下り線46k071.5m~47k237.5m
上り線47k282.5m~46k071.5m
切替区間中央46k652.5m

異周波接続に関してWeb上で読めるのは以下の論文が主なものである。

早稲田大学 博士論文2008年安全性・信頼性向上のための鉄道信号システムの設計手法に関する研究  pdf

第4章 北陸新幹線のATC装置に対する異周波妨害対策法の開発から引用
① AT き電回路にBT を付加し,一方のBT(BT11)は中セクション区間進入側列車在線
時のレール電流吸上げ効率を向上させ,他方のBT(BT12)は区間外への電流流出を
低下させる。
② 中セクション区間境界に一致させてレールをレール絶縁により電気的に切断して,き
電しゃ断器と連動するレール絶縁短絡器で接続し,区間外への妨害電流の流出を低下
させる(RSW12)。
③ SP からの引出線には同軸ケーブルを使用し,内外導体電流の打消し効果で他導体への
誘導電流を低下させる。
④ 中セクション区間のき電点は,上下線を一致させ,トロリ線及びレール電流の暴露区
間を最小とする。
⑤ 中セクション区間のATC 送受信器は,50[Hz]用と60[Hz]用の2 種類設備し,き電電源
周波数に合わせて切替え,中セクション区間でのATC 信号の同期を確保する。
⑥ 中セクションの進入側半分を同軸き電回路とし,3個所でトロリ線及びレールに接続
し,レール及びトロリ線電流を減少するとともに,レール及びトロリ線の大電流が流
れる区間を短縮し,他導体への誘導電流量を減少させる。
⑦ 進出側軌道回路は有絶縁軌道回路として2 分割し,暴露区間長を半減し,誘導電流を
減少させる。
⑧ TD 用周波数は,ATC 用周波数(720~1,020[Hz])を使用する。(TDとは列車検知のこと)

2014年 現在の切替区間は、既50HzDA-ATCを踏襲で周波数はデジタル対応で変更されている。
また駅中間軌道回路は、インピーダンスボンドを用いない無絶縁方式、駅構内軌道回路は、インピーダンスボンドを用いる有絶縁方式をとる。ATC波は、50Hz/60Hzとも 2波、TD波は、50Hz/60Hzとも 7波で構成

新軽井沢SP  き電系統図 R=レール T=トロリ線T AF=ATき電線F
高崎起点
7k800 新箕郷SS
18k510 RPCD 安中榛名駅 レール電位抑制装置
19k700 新秋間SSP
34k200 新一の瀬SSP
41k900 RPCD 軽井沢駅 レール電位抑制装置
46k070 中セクション 下り方始まり
46k370 中セクション中間部 下り方
46k650 新軽井沢SP中心
47k240 中セクション 上り方始まり
59k400 RPCD 佐久平駅 レール電位抑制装置 
61k300 新佐久SSP

レール電位抑制装置(RPCD)とは。
新幹線は、レールが誘導障害の軽減のため電気的に絶縁されており、大電力がレールに流れると
レール電位が上昇する恐れがある。そのためレール上の車両とホーム間で電位差が発生する。
この電位差を抑制するため、放電ギャップとコンデンサで構成されたRPCDをレールと躯体の
鉄筋間に接続し、電位差を解消させている。 
同様な装置は、JR東日本 新幹線上野駅、JR東海 品川駅にもある。

車両から変電所までの電気の流れ RPCDについて言及 RRR pdf リンク
図4.8の下り線を抜き出したものであるが、図中のAT12はAT13の間違い、12の数字は全部13に訂正が必要である。新幹線の異相区分は、エアーセクションを挟んだ中セクション(SN)の切替で力行が可能となっている。異周波セクションは、この中セクションが、レールにも設備されており、トロリ線の切替と同期してレールの中セクションレールの切替を行なっている。
こちらが正しい上下線の構成図
運用は、下り線の切替区間は、常時軽井沢方VCB投入50Hz加圧
列車進入時 SN部で3点でき電。C下11T~E11下の軌道回路に在線時
佐久方VCB切替わり60Hz加圧
改修は、同軸き電ケーブル外被の不平衡電流解消のためATの中性点をそれぞれ接続している。
PW部の→はGP装置を表す。
切替区間は、上下線別に軽井沢方のAT12、AT11と佐久方のAT14、AT13が
上下線別のタイき電で区間内に列車が在線時負荷を均等にするよう分担
図6では、トロリ線の切替と同期してレール部の切替が行なわれているのが判る。文献より引用
系統Aが50Hz 系統Bが60Hz区間となる。

新軽井沢き電区分所は50Hzと60Hzの異周波数区分点なので色々な仕組みがなされている。
まずは、き電区分所手前から始まる。

き電区分所手前 高崎方 46k070
上下線とも同じ位置での同軸き電ケーブルからの
SN接続とATき電線F、トロリ線き電T
の同軸き電ケーブルへの引込が行なわれる。
上図 46k070地点
この部分にレール絶縁短絡器がある。
佐久方は全て、同軸き電方式のため架線とPW(保護線)、架空地線しか張られていない。
下り 高崎方 トロリ線T接続CX-11T
下り 高崎方 SN部接続CX-下SN
き電線は、同軸き電ケーブルでき電区分所と接続
下り方 トロリ線接続 ATき電線 SN下り線 3本
上り方 同軸ケーブル 外被接続ケーブル(PW)にはCTが貫通。故障時ロケーター
上り方 同軸ケーブル 外被接続ケーブル(PW)にはCTが貫通。故障時ロケーター 
右 中性線PW(N)接続バスバー
軽井沢方 エアーセクションSNの始まり 上部は下り方ATき電線、PW、架空地線
軽井沢方 上下 ATき電線
拡大 軽井沢方 ATき電線F 上り予備のトロリ線引き出しがある。
外被接続ケーブルにはCTが貫通。故障時ロケーター 
PW接続点


中間部46k370 佐久方 架線とPW、架空地線しかない。
SN中間接続部 上り線側は、トロリ線に接続されていないが
下り線と同じ状態にするために設置。46k370 CX-予備側
46k370 CX-予備側
奥 下り線 SN中間接続部 46k370 CX-下SN側

下り線SN中間接続部 同軸き電ケーブルから引き出されてトロリ線に接続後
また同軸き電ケーブルでき電区分所に向かう。 46k370 CX-下SN側
拡大 SN部が同軸き電ケーブルより引き出されてトロリ線に接続下り線側
46k370 CX-下SN側
外被接続ケーブルにはCTが貫通。故障時ロケーター と中性線PW(N)接続バスバー

き電区分所46k650 跨線橋部分
奥 SN中間接続部 跨線橋より俯瞰
架線と架空地線とPWしかない。同軸き電ケーブルは、両壁のダクトに敷設(CX-SN,T,Fの3回線)
下り線 エアーセクションは、トンネル内 上り線SN部も中間接続部を含めてトンネル内
U形擁壁部 奥がトンネル2,3となる。
き電線引き出し部 46k650 下り線側
き電線引き出し部 46k650 上り線側
長方形の箱はGP装置
PW保護線についているS状ホーン
AT11とAT用放熱器 奥にBT11がある。ATに近接して設置。
AT13側 AT13切離断路器と AT13側母線
AT13側 
左 AT11母線 右AT13母線 奥にタイき電用負荷断路器
通常のSPにみられるような延長き電用遮断器は、ここには無い。
ケーブルヘッドがあるがこの部分で上り線側と接続。
11-12、13-14
上下線接続用タイ負荷断路器 
軽井沢側 AT11とAT12を接続
佐久側AT13とAT14を接続
AT13母線T,N,F
真中N
高調波対策用CR装置 下り線用


CR装置60Hz仕様  L リアクタンス66.3mH R 抵抗125Ω C コンデンサ1.6μF 一組当たり
手前CとL 奥CとR Rがある方が放熱対策が多くとられている。
下り方面 SN,T,Fき電線 同軸ケーブル接続部 緑の部品はロケーター
奥にGP装置
トロリ線とATの中性点に接続
正面から 上のバーは予備用パイプ母線
下り線側き電区分設備 全景
下り線、上り線間 予備配線 トロリ線
上り線側は一段高い位置 構成は、下り側と同一
上り線側設備 切替開閉器室は、予備を含めて2組 パイプ母線はSN用
上り線側き電設備
上り線側 計器用変流器と右奥 切替開閉器室
上り線側 き電設備


参考文献(順不同)

レール電位抑制装置 RPCD
重枝秀紀:車両から変電所までの電気の流れ
RRR;2009,No.10,pp.38-41
車両から変電所までの電気の流れ RPCDについて言及 RRR pdf リンク

 
図2 新軽井沢き電区分所き電回路構成と異周波対策
小沢吉樹ら:北陸新幹線異周波電源突合せ区間の誘導障害試験
鉄道総研報告;1998,Vol.12,No.2,pp.17-22

図4.7 妨害電流を低減するき電回路,軌道回路構成(軽井沢方式,部分)
図4.8 新箕郷SS-新佐久SSP間き電回路図
奥谷民雄:安全性・信頼性向上のための鉄道信号システムの設計手法に関する研究
早稲田大学大学院 理工学研究科 博士論文審査報告書;2008,
第4章 北陸新幹線のATC装置に対する異周波妨害対策法の開発
pp.73-101
早稲田大学 博士論文2008年安全性・信頼性向上のための鉄道信号システムの設計手法に関する研究  pdf リンク

図6 レール絶縁短絡器動作原理
西日本旅客鉄道株式会社;2014,REA関西電子版,Vol.26,No.1,pp.5-6
レール絶縁短絡器 リンク HTML部 クリックでpdf表示

付図1~3 
石川多了ら:新幹線の異周波電源切替点におけるATC妨害の予想
鉄道技術研究所報告;1978,第1088号,pp.1-55

図1電源・き電系統図
船越 昇:浜松町FC電気設備概要
電気鉄道;1976,Vol.30,No.8,17-19

CR装置
田中智久ら:北陸新幹線,電力設備における高調波発生の解明と分析
2011,電気学会交通・電気鉄道研究会資料,TER-11-47,pp.41-46

全般

奥谷民雄ら:北陸新幹線におけるATC装置に対する異周波妨害対策法の開発
電気学会論文誌D(産業応用部門誌);2001,Vol.121,No.1,pp.31-42

北陸新幹線におけるATC装置に対する異周波妨害対策法の開発 pdf リンク

奥谷民雄:北陸新幹線の50/60Hzの異周波対策
鉄道と電気技術;1996,Vol.7,No12,pp.14-17

兎束哲夫ら:50/60Hz両用き電保護継電器の開発
鉄道総研報告;2008,Vol.22,No.12,pp.29-34

河相 隆:北陸新幹線工事計画と電気設備
鉄道と電気技術;1996,Vol.7,No.12,pp.5-8

戸塚 隆:北陸新幹線(長野・金沢間)の50/60Hz対応設備
鉄道と電気技術;2014,Vol.25,No.8,pp.3-9

滝沢英明ら:北陸新幹線,異周波区間で発生した電源混触事故について
電気学会交通・電気鉄道研究会資料;2006,TER-06-14,pp.23-28

同軸き電ケーブル(内容が古いが概要は判る)
大槻国秋ら:対地30kV同軸架橋ポリエチレン電カケーブルおよび付属品の開発
日立評論;1974,Vol.56,No.7,pp649-654
対地30kV同軸架橋ポリエチレン電力ケーブルおよび付属品 pdf リンク