E8系は20,000/25,000Vの複電圧電車で運行されている。主変圧器は1台で複電圧区間運行時にはタップ切替はせず、SIVのCVCFコンバーターと主変換機VVVFコンバーターで5,000Vの電圧差をコントロール(EH-800電気機関車はSIVの容量が大きいので複電圧区間運行時は主変圧器でSIV供給電源だけタップ切替を行なう)して出力している。
言ってみればSIVはAC-DCのスイッチング電源(入力100~220VAC 出力12Vみたいな感じ)の大がかりなものと見てよいと思う。今回の故障個所はSIV内の変換素子IGBTが大きく損傷している。
山形新幹線 現在の調査経過と当面の対応について JR東日本 6月25日発表
JR資料から引用 正確には冷却用ブロワーは動かすことができたが冷却用ブロワーを制御する電源が故障した ブロワー電源はSIVを経由していない |
この損傷している素子は三菱電機製のIGBT素子であることが判明している。
現在 現在E8系は東京ー仙台間で2編成がやまびこ運用に充当され、さらに1編成が加わるが東北新幹線内の25,000Vの架線電圧区間のみでの運行となる。
山形新幹線 現在の調査経過と当面の対応について 2025年7月9日
この対応について以下引用
現在山形新幹線内に留置しているE8系を、深夜時間帯に東北新幹線内に順次回送し、東北新幹線を17両で運転する列車を増便します。
引用終わり
もしSIV内のIGBT素子が異常なら、25,000V区間の運行も取りやめているはず。なのに運行することができるのは複電圧区間を跨ぐ区間の運行で問題が発生してしている可能性が大きいと考えるのが普通。(調べたらG1~G6編成が故障無で運行できている・製造会社が違う)なので原因が複電圧の可能性は低くなった。IGBT素子のLot差からくる問題の可能性大
一般的に20,000V区間の架線電圧範囲は17,000~22,000V -15%~+10%
25,000V区間の架線電圧範囲は21,500V~27,500V -15%~+10%
標準で5,000Vの電圧差を福島の異電圧デッドセクションを通過するごとにSIVで吸収している。
一般的に主変圧器三次電圧のSIVの入力電圧は400Vで+20%~-28%(E3系)288V~480Vの入力範囲で100Vは±10%で出力されている。E3系の場合 E8系は不明
三菱電機技報 1998年6月号、三菱電機から引用 |
20,000V区間の低い方17,000Vで288Vとして20,000V区間では約340V、25,000V区間の高い方27,500Vで480Vでは25,000V区間では約440V どちらも340V~440Vの出力範囲なのでSIVの入力電圧範囲に入っている。
異電圧を跨ぐ場合一瞬デッドセクションで架線電圧は0Vになり、再度架線電圧まで加圧される。その瞬間には主変圧器がつながったままなので、突入電流により不利な残留磁束の極性(すなわち、印加電圧からの瞬時磁束に加算される残留磁束)と不利な投入位相(例えば、電圧ゼロクロス付近)で磁気飽和(「リンキング」)が発生。そのノイズがSIVのIGBTに加わりゲート開閉時間が不揃いになり徐々に劣化して最終的に破壊。
このシナリオだとSIVの設計し直しになる可能性大。G1~G6編成との違いはどこにあるのか?IGBT素子のロット差か
25,000V区間だけ運行している場合でも、架線電圧が0になる瞬間が変電所と き電区分所で起こる。しかしG1~G6編成は故障してない。