新田端変電所1号棟、2号棟6k748mとその周辺
アプローチ:西日暮里駅 容易
受電:東電田端変電所より154kV 地中2回線
き電:王子方面ATき電方式、上野方面同軸き電方式
特徴:当初の新田端変電所(1985年使用開始)は、今の新田端変電所1号棟の部分であった。管路形のGIS設備で構成されていたが、GIS内部の避雷器の地絡事故(2001年)が発生。避雷器本体がGIS設備の中に組み込まれていため切り離しに時間がかかり多くの運休をだした。
JR東日本では、この事故を契機に新田端変電所の重要性を鑑み、同一の設備を2組用意して交互に運転を行い、故障時の対応を2重化した。新田端変電所が新田端変電所1号棟になり、グーグルマップでJR東日本東京機械技術センターと表示されるところが新田端変電所2号棟となっている。
新田端変電所設置の経緯
異周波接続点が新王子き電区分所に設置されることが計画されていた時代に遡る。異周波の接続点の検討は、既に1972年当時 東北新幹線を東海道新幹線と繋げる構想時に検討されており、基本形は出来ていた。しかし異周波対応車両については、未知の分野であることと車両価格の上昇及び変圧器構造の複雑化と重量増で最終的には見送られた。そのため富士川以北は周波数変換変電所を、西相模・網島に設け50Hzから60Hzを横軸回転式周波数変換機(総重量約1,000t)で変換して各変電所に供給する体制をとった。浜松町にあった周波数変換変電所は、当初計画での東海道新幹線田端ヤード延伸および東北新幹線直通運転のため設けられたが、延伸取りやめの為、品川ヤード・大井車両基地への電力供給を担った。延伸時には、王子付近に異周波き電区分所を設け、浜松町の周波数変換変電所からの給電で運用を行なう予定で合ったが、取り止めのため急遽田端の国鉄用地に新田端変電所を設けることになった。新田端変電所の導入電源としては、東電豊島変電所(サンシャイン)、東電鳩ヶ谷変電所からとかが考えられたが、東電の田端変電所が近傍にあり154kV受電であるので、東電洞道を途中まで利用し新田端変電所まで引き込むことになった。 この項は、新軽井沢き電区分所も参照してください。(一部記事重複)
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付図1 50/60Hz切替設備改良案
新王子SP 異周波切替設備 新軽井沢き電区分所の原点となるもの
東海道新幹線は、BTき電。東北新幹線はATき電。
浜松町FCと新大宮SSからのき電突合せ。 |
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図1 電源・き電系統図
新王子SPを含めた当初の東海道新幹線直通計画。
全国7,000kmの新幹線大ネットワーク完成時には、列車のループ運転も考慮
して循環運転による逆編成の出現も考えられた。この時点で新幹線上野駅は、
建設計画の俎上には挙がっていなかった。また東京駅が4ホームである。
、浜松町FCから田端まで60Hzのき電での同軸き電方式であった。
品川ヤードと田町ヤードの相互利用ができる運用が計画されていた。
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図1 東京・新田端変電所間き電系統図(案)
新王子き電区分所設置の計画が見送られて、上野地下に新幹線を導入する計画が立案
された後も、東京駅での14番線ホームを利用した地上切替案が生き残っていた。
上野トンネルのルート変更(曲率半径が小さくなった)に伴い、BTき電方式では、BTセクション 都市部で1.5kmの間隔が 保てず、ATき電では、トンネル壁面との絶縁離隔の確保が困難なため、同軸き電方式が選択さている。 |
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図8 東京駅 50/60Hz 異周波切替方式 地上切替
現在の新軽井沢き電区分所の方式と大分似ている。
車両は停止切替であり負荷電流も小さいので誘導障害は問題ないとの結論であった。
放電装置とあるが、これは現在のレール電位抑制装置RPDCのことである。 |
新田端変電所分散二重化の経緯
新田端変電所のGIS内避雷器地絡事故(2001年)で避雷器が管路形GIS設備内に直結で接続されていたため、切り離しに時間がかかり新幹線の大幅間引き運休事故を起こした教訓から、新田端変電所改良工事が検討された。
案1. 単純老取(建屋新設) 新建屋5階建 日照権制約 困難
案2. 戸田付近に変電所新設(現行 新田端変電所は単純老取)
新戸田変電所新設費用・送電線路費用が高額、切替セクション約1㎞の設置場所が確保できない
案3. 新田端変電所分散二重化(新田端変電所2号棟新設+現行新田端変電所一重更新) 戸田付近に変電所を設けるより信頼性は劣るが、案1、案4,5に比べると信頼性が高く工事費、工期面で有利
案4. 部分二重化(母線・上下タイ設備・き電引き出し線)二重化機器の為大幅な増床が必要。工事費が高額。既存変電所改良時に仮設機器が必要。
案5. 部分二重化(母線)母線二重化のための増床が必要。工事費が高額。案4と同じ。き電線引き出し箇所の事故対応不可
以上の検討から案3となった。
案3の実施で完全二重化とGIS内設備切り離し機構を設けた新C-GIS設備の更新を行った。新C-GIS設備への変更までの暫定対策として新大宮変電所2号受電にACVRの設置(2003年)を行なった。分散二重化の為 設備は、重複しており、交互に切替えて運用を行うため新田端変電所1号棟、2号棟(完全運用開始2012年)は、巨大な鉄構で囲まれた き電設備になっている。上野側は、同軸き電方式での き電であり、新幹線線路の線路脇に同軸き電ケーブルが敷設されており、片方が事故で使用不能でも、もう片方で給電できる同軸き電ケーブルが東京駅まで敷設されている。上野駅には、補助き電区分所が設けられているが、この設置理由は上下タイき電での電力の均等化と通信誘導障害対策及び事故時対応である。東京駅に設けられている き電区分所は、上野と同じ内容で、追加で本線停電作業時の列車ホテル運用のときのホーム内滞泊列車への供給を担っている。共に同軸き電方式なのでATは、設置されていない。
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図-1 東北新幹線東京・上野間電気設備概要から東京駅までのき電設備抜粋
新東京き電区分所は、東京駅新幹線高架下盛岡方地下2F 0k300m地点
新上野補助き電区分所は、上野駅大宮方地下3F 4k327m地点
東京駅 盛岡方に無交差シーサスセクションがある
上野駅 両端に無交差シーサスセクションある。
常盤小学校付近からエアーセクションが始まる。
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新田端変電所は、田端基地に送電してるため、夜間停電が困難であったが2001年田端基地変電所を新設 夜間の基地での作業が本線分離でできるように改良されている。
新田端変電所の更新は、2005年度から開始。2010年新田端2号棟運開。2012年新田端1号棟運開し二重運用で現在に至る。
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新田端変電所 分散二重化前
主座はM座のこと。スコット結線変圧器100MVA×2台構成 |
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図2 現状のき電系統
新田端変電所 新与野き電区分所間は23kmの距離
現在は、新戸田補助き電区分所がある。
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図3 分散二重化後の新田端SSの構成
分散二重化後 まったく同じ構成の変電所がある。
実際は、2号棟の建屋屋上には、1号棟、2号棟の切替断路器と1号棟、2号棟
共通のCR装置(高調波抑制装置)が設備されている。
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図4 分散二重化後のき電系統
分散二重化後も新与野き電区分所までの距離は、23㎞で変わらないが冗長度が上昇している。新大宮変電所には、き電電圧を上昇させるACVRがあり送出電圧を3kV上昇させることができる。(新大宮変電所の上り線方向対応のACVRは現在廃止された・下り線には付いてない) |
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図6 キロ程-き電電圧シミュレーション
新大宮変電所送出電圧を3kV上昇させて28kV付近に高めた
状況下での東京駅終端電圧は、19kV付近まで落ち、運行を維持
できる20kVまでは、電圧の上昇はできていない。新田端変電所があれば
東京駅までの電圧は確保できている。ゆえに二重化が必要との結論
想定列車数1時間あたり36本 |
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新田端変電所の時の結線図 新田端変電所1号棟、2号棟は現状の結線図に上り方加えた構成になる。M座60kV ATをかまして対地30kV大宮方。 T座はそもまま30kV出力 同軸直接き電、田端基地き電。新田端脱落時(2系列)は、ATき電系から同軸き電系のみ延長き電可能。1号棟、2号棟とも100MVAのスコット結線変圧器154kV受電、M座60kV、T座30kV 本線M座。同軸き電、基地はT座
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現状は、新田端が二重化されている。また東京駅まで延長されている。
き電線接続は、同じ |
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大宮暫定開業時には、大成に新大成補助き電区分所があった。
新大成補助き電区分所は、ATポストとしての末端電圧確保の目的で設置。 |
この新田端変電所 中セクション部のサージによる避雷器作動が多く発生している。この分散二重化の発端が管路形のGIS設備中の避雷器短絡事故であるので、詳細な解析とそれに対する対策が求められている。
新田端変電所の中セクション(SN部)を列車が通過する際にSN部に設置された避雷器だけが動作を行い、そのタイミングが、列車通過後の無負荷状態での切替開閉器31Aが投入された際に発生。列車種別によらず避雷器には100A前後の放電電流が10μs導通し避雷器カウンターが作動。避雷器カウンター作動時は東京側の電圧位相が最大振幅40kVに近い場合に発生。という事象が発生している。東京方は同軸き電方式であり、き電ケーブルの静電容量も関係していると思われるが、この時点で原因の究明には至っていない。
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常磐貨物線で行く鉄博乗車時 撮影 線路側車中から見た新田端変電所1号棟
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新田端1号棟の屋上には、OFケーブルの重力油槽4個が置かれていたのだが2個に減っている。2015年版 1本がCVケーブルに交換されたのかもしれない。同様な交換作業は、蕨交流変電所の鳩塚線でもOFからCVへの交換が行われている。
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OFケーブル 15万ボルトの埋設標柱 線路脇 車中から |
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常磐貨物線を潜って土手側に移動 15万ボルト 埋設標柱 |
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歩道を潜り 東北線川側に移動 |
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OFケーブル 15万ボルトの埋設標柱 |
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東北線 大宮方面左にOFケーブルは敷設 新田端線1,2号 |
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手前 埋設標柱と奥 ケーブルピット |
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新田端SS SSは変電所を示す 引込ケーブルピット |
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踏切に埋設標 東電田端変電所方面 |
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新田端変電所2号棟 |
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新田端変電所2号棟
2006年5月工事着手
2009年2月建物竣工
2009年12月建築確認完了検査
2010年運開 |
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新田端変電所1号棟(旧新田端変電所) |
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新田端変電所2号棟 FTr放熱器
1F 切替開閉器室
2F 主変圧器室、受電GIS、C-GIS室
中3階 ケーブルスペース |
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新田端変電所2号棟 |
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新田端変電所1号棟 FTR放熱器と所内変圧器用放熱器 |
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以前は、この部分に2台のFTrが設置してあった。 |
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王子駅付近 T トロリ線接続部 |
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上 ATき電線F 上り 下 トロリ線接続T |
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王子駅付近 T トロリ線接続部 |
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下り方
上中里駅付近 SN接続部へ向かう ATき電線 T トロリ線 SN 中セクションき電線 |
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上り方
上中里駅付近 SN接続部へ向かう ATき電線 T トロリ線 SN 中セクションき電線 |
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上中里駅付近 SN接続部へ向かう ATき電線 T トロリ線 SN 中セクションき電線 |
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上中里駅付近 SN接続部へ向かう ATき電線 T トロリ線 SN 中セクションき電線
奥の鉄構でSN 接続 |
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上中里駅付近 SN接続部 拡大 |
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SN部に接続されているサージ吸収用 避雷器と計器用変圧器
切替時の残余電圧を変圧器で300msecでDischargeする。
単なるLTであった。LT=線条トランス SN部は、この部分より王子寄りであった。
SN部に重複するノイズは、SN部が切替開閉器から離れる距離が長いと発生する。
同様な場所は、新与野キ電区分所が相当する。切替時のサージがパルス状でSN部を伝播。
反射することで重層してサージが大きくなる。 |
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SN部に接続されている 避雷器 |
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奥に上り線用の同等な装置 こちらは新型で簡素化 |
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上下線に設置されたSN部 サージ吸収用設備 |
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新田端変電所1号棟 全景 |
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新田端第一変電所 SN接続 T,F接続 ポリマ碍管 |
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新田端第一変電所 左より基地45T
東京方上りF、T、SN2、T 下り F、T、SN1、T、22、21、基地46
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基地に向かう運45 運46は、ケーブルで接続 |
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基地に向かう運45(基地) |
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基地45 田端車両基地 変電所部で引き下ろし
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基地45 田端車両基地 変電所部で引き下ろし |
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田端車両基地 引込み線用断路器 エアーセクションの距離が取れないので架線部
にデッドセクションを繋げ絶縁を担保 パンタは触れない |
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新田端変電所2号棟全景 |
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1号棟と2号棟間の配線引き回し鉄構 絶縁用デットセクション パンタは触れない |
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拡大 |
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新田端変電所2号棟 |
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新田端変電所2号棟 |
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田端基地引き込み線用エアーセクション絶縁用デッドセクション架線としては
使われていない 絶縁を担保 |
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新田端変電所2号棟 道路側から見た鉄構部 |
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新田端変電所2号棟 道路側から 狭隘な場所に効率よく建屋が設置。 |
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新田端変電所2号棟 道路側から |
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1号棟と2号棟切替断路器部 |
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新幹線 線路沿いの同軸き電ケーブル収納保護管 一度張り替えられている。 |
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新幹線 線路沿いの同軸き電ケーブル収納保護管 |
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1号棟からの同軸き電ケーブル 張替え後 |
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左 1号棟、2号棟切替断路器。 右 高調波吸収用CR装置共通トロリ線接続 |
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巨大な鉄構 |
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おまけ 山手貨物線 インテグレート架線部とガードの絶縁距離が取れないので、ケーブルで接続 |
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山手貨物線 インテグレート架線部とガードの絶縁距離が取れないので、ケーブルで接続 拡大 |
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ガードを越えて再接続 |
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同様な接続方法 田端トンネル 駒込方
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参考文献(順不同)
付図1 50/60Hz切替設備改良案 石川多了ら:新幹線の異周波電源切替点におけるATC妨害の予想 鉄道技術研究所報告;1978,第1088号,pp.1-55
図1電源・き電系統図 船越 昇:浜松町FC電気設備概要 電気鉄道;1976,Vol.30,No.8,17-19
図1 東京・新田端変電所間き電系統図(案) 図8 東京駅 50/60Hz 異周波切替方式 渡辺 寛ら:同軸ケーブルき電方式の諸特性(東北新幹線上野トンネルのき電方式をモデルとして 電気鉄道;1982,Vol.36,No.5,pp.11-15
図-1 東北新幹線東京・上野間電気設備概要 本田昌義:東北・上越新幹線の東京乗入電気設備 鉄道と電気技術;1991,Vol.2,No.8,pp.56-60
図 1,2,3,4,6 金岡正博ら:新田端変電所の分散二重化に関する検討 電気学会交通・電気鉄道研究会資料;2006,TER-06-46,pp.35-40
図1 上野・大宮間き電系統図 図4 新田端変電所主回路結線図 図5 大宮駅部のき電回路変更 小山義夫:東北新幹線上野・大宮間変電設備概要 電気鉄道;1985,Vol.39,No.3,pp.10-12
全般
林屋 均ら:新幹線切替セクションにおける避雷器動作について 電気学会交通・鉄道研究会資料;2004,TER-04-38 L D 04-59,pp.41-45
菅井俊一ら:新田端第2変電所における補償設備更新の検討 電気学会産業応用部門大会講演論文集;2008,論文番号3-64,pp.Ⅲ-333‐Ⅲ-334
岩下二男ら:東北新幹線・田端~東京間における同軸き電方式 電気学会電気鉄道研究会資料;1983,RAT-83-8,pp.57-64
山口 正ら:新田端第二変電所新設 東工技報;2010,Vol.23,No.8,pp.259-260
室 直登ら:新田端変電所1号棟のケーブル敷設方法におけるVE手法の適応事例 Value Engineering;2011,No.267,pp.4-11
渡邊正幸ら:東北新幹線新田端変電所更新(き電設備の二重化)について 鉄道と電気技術;2013,Vol.24,No.8,pp.47-52
清水 泉ら:東北・上越新幹線変電機器更新 鉄道と電気技術;2009,Vol.20,No.8,pp.32-36
清水 泉:東北・上越新幹線変電機器更新の全体計画と概要 JREA;2011,Vol.54,No.12,pp.36469-36472
清水 泉ら:東北・上越新幹線変電・配電機器更新 電気設備学会誌;2011,Vol.31,No.6,pp.396-399
同軸き電ケーブル(内容が古いが概要は判る)
大槻国秋ら:対地30kV同軸架橋ポリエチレン電カケーブルおよび付属品の開発 日立評論;1974,Vol.56,No.7,pp.649-654