ETT=フォーラムエネルギーを考える(ETT)の特集記事を読んで
大正池浚渫の現場&東京電力霞沢発電所見学レポート Vol.13 2013年11月20日の記事
この記事のほかに興味ある特集記事が組まれている。ETTの事務局は一般財団法人
経済広報センター
国内広報部なので経団連寄りに記事が組まれている。つまり政府寄り
見学レポートを読んで 以下引用
梓川系水力発電所の特徴は、三つあります。一つ目は、東京電力霞沢発電所の電力は東京電力管内の山梨県に送られていますが、一部は隣接する中部電力霞沢変電所を経由して近隣の上高地などに中部電力が送電しています。本来、中部電力管内は周波数60ヘルツのところ、長野県のこの地域だけは50ヘルツになっているそうです。二つ目は、霞沢発電所から飛騨高山へ続く安房峠を越えて岐阜県にある北陸電力栃尾発電所まで、東京電力の送電線でつながっており、北陸電力と電気を融通することができます。北陸電力管内は60ヘルツですが、霞沢発電所の場合50ヘルツ、60ヘルツの両方で発電できるので、北陸電力を通じて同じ60ヘルツの関西電力への送電も可能になっています。
引用終わり
東京電力パワーグリッドのWikipedia記事 一部引用
北陸電力の栃尾発電所(岐阜県高山市奥飛騨温泉郷にある水力発電所)と東京電力リニューアブルパワーの霞沢発電所(長野県松本市の大正池下流にある水力発電所)は安房峠を越す154kV栃尾線で結ばれ、両発電所は50Hzと60Hzのいずれも発電可能である。栃尾線は、東電PGから北陸電力送配電へ融通する際は60Hz、北陸から東京へ融通する際は50Hzで運用される。東電PGと北陸電力送配電との間に周波数変換設備はなく、両社の間で直接融通可能な電力は、付近の50Hzと60Hz両用の水力発電所で発生した電力に限られる。
引用終わり
1.中部電力霞沢変電所経由で50Hz電力を上高地方面に送電している。
2.北陸電力栃尾発電所は50/60Hzの両用発電機で北陸電力と東京電力に電力の融通を行っている。栃尾発電所からの送電線は二手に分かれ片方は富山共同自家発電葛山変電所、片方は安房峠を越えて東京電力霞沢発電所に送られているとのこと。
3.東京電力霞沢発電所は50/60Hzの両用発電機で北陸電力と東京電力に電力の融通を行っている。北陸電力栃尾発電所までは安房峠を越える154㎸ 栃尾線を使用している。
これは実際に見に行って50/60Hzの母線切替。中部電力霞沢変電所(50Hz)運用がどのようになっているかを確かめないといけない。当ブログは自家用車は持たない主義なのでタクシー利用料金29,700円が掛かった内容である。
Webの資料を調べると北陸電力栃尾発電所の上流にある北陸電力中崎発電所も50/60Hzが発電できる同期発電機を備えており66㎸を栃尾発電所の昇圧変圧器で154㎸に昇圧している。
北陸電力栃尾発電所から分岐する下流側にある富山共同自家発電葛山変電所さらに下流にある富山共同自家発電見座発電所も50/60Hzが発電できる同期発電機を備えており、栃尾発電所から安房峠を越えて東京電力霞沢発電所までの送電線で154㎸ 50Hzの送電ができるような運用になっているそうだ。
各発電所の諸元(水力ドットコム・富山共同自家発電のWebから引用)
一番上流にある発電所から順に
北陸電力中崎発電所 発電機1基 立軸ペルトン水車 同期発電機
発電機出力
10,500kW
中崎発電所の発電所出力変更について北陸電力 2010年100kW増強 66㎸送電(約160A)で北陸電力栃尾発電所へ送電
北陸電力栃尾発電所
発電機1基 立軸ペルトン水車 同期発電機
発電機出力 15,800kW
栃尾発電所の出力変更 北陸電力 2021年300kW増強
154㎸送電
154㎸送電
富山共同自家発電見座発電所 発電機2基 立軸フランシス水車 同期発電機
発電機合計出力
25,500kW この見座発電所も葛山発電所と同様増強工事を行っている最中である
154㎸送電
これら4発電所から東京電力に電力融通するためには送電線が安房峠を越える栃尾発電所に一旦集めて、東京電力の栃尾線154㎸で送電する必要がある。
合計出力(最大値)77,476kW 154㎸で送電 栃尾線の設備容量としては設備容量:100MWはあると思うので、77,476kW=77MWで十分送電は可能と思われる。
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TEPCOの154㎸ 系統図にも北陸電力栃尾発電所までの系統が記載されている。
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さて現実はどうか現地調査の前にGoogleMAPで調査を行ったところ北陸電力50Hz用の送電設備はあるように見える。
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北陸電力栃尾発電所構内 GoogleMAPから
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右上の設備が66㎸ 北陸電力中崎発電所からの受電設備 昇圧変圧器(50/60Hz)兼用三次巻き線66㎸、昇圧154㎸ 変圧器1台
変圧器から繋がる母線(50/60Hz)兼用1回線、この母線から分岐する
1.断路器、VCB、断路器、最終断路器 60Hz用1回線分 奥側
2.断路器、VCB、断路器、最終断路器 50Hz用1回線分 手前側 結合コンデンサ型VTが付加
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横から見た設備配置 2022年時点 GoogleMAPから
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左が北陸電力側へ送電する送電線、右が東京電力霞沢変電所(安房峠越え)の送電線 2022年時点 GoogleMAPから
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さて現状はどうなっていたか
まずは栃尾発電所から
すくなくともGoogleMapをみると2022年までは50/60Hz両用の運用ができる状態であったが、飛騨信濃直流幹線900
MWが2021年に運用を開始したのでこれら50/60両用発電所の50Hz部分(77MW)は役目を終えたようだ。
では霞沢発電所はどうなっているのだろうか 見学レポートによると東京電力霞沢発電所も50/60Hz両用の発電機を持っている。
東京電力霞沢発電所
大正池を水源とする戦前に建設された発電所、
横軸ペルトン水車3台 横軸三相交流同期発電機×3台
発電機合計出力 39,000kW
154㎸送電
霞沢発電所を親発電所として以下の2発電所が繋がる。
湯川発電所
立軸フランシス水車1台 立軸三相交流同期発電機1台
発電機合計出力 17,400kW 再開発前(1997年完了)は50/60Hz両用
沢渡発電所
立軸フランシス水車×2台 立軸三相交流同期発電機×2台
発電機合計出力 4,000Kw 4,500kWに増強中2022年着工
建設当時の状況
昭和12年12月1日 送電開始 尖頭出力31,100kW
発電所と変電所部分は別会社が運営。送電線も別会社が運営する状態であった。
発電機 梓川発電株式会社 発電機出口で東京電灯株式会社に供給
昇圧 東京京濱株式会社霞沢変電所で154㎸に昇圧 東京電灯甲信系送電線で送電
周波数変換 50/60Hzで発電可能。常時50Hz 周波数変更時は水車ランナーの取替と発電機の結線方法の変更に寄り60Hz発電が可能となるとのこと。
湯川及び沢渡変電所とも連携
日本の発電所 中部日本篇 国立国会図書館デジタルコレクション 著者:日本動力協会 出版:1937年(個人送信サービスで閲覧可能です)
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東京電力霞沢発電所 GoogleMAP
左
北陸電力栃尾発電所から送電線が入る。この時は変電所母線に繋がっていた。
鉄構中央下は、近接する湯川発電所6.6㎸ 2,600A 昇圧154㎸の変圧器、その横が東京電力霞沢線154㎸ 2回線の送出し鉄塔
右の建屋が霞沢発電所 発電機3台並列接続6.6㎸発電 約6,000A
建屋左下は昇圧変圧器(GIS化)154㎸ 2台 1台は霞沢発電所用、もう一台は沢渡発電所用 変電所母線とはケーブル接続用
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中部電力霞沢変電所 霞沢発電所の霞沢線2回線154㎸受電 降圧して6.6㎸
50Hzを上高地を含め周辺に供給 GIS化 GoogleMAP
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沢渡発電所 連絡送電線で6.6㎸を霞沢発電所に送電後154㎸に昇圧し母線接続 左に発電所引出鉄塔6.6㎸1回線が見える GoogleMAP
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霞沢発電所の沢渡発電所6.6㎸1回線受電引き下ろし鉄塔 GoogleMAP |
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湯川発電所 左下に6.6㎸引出鉄塔 霞沢発電所へ GoogleMAP
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それでは問題の栃尾線
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東京電力 栃尾線 154㎸ 1回線 1相のジャンパ線が外されている
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烏帽子型鉄塔 東京電力 栃尾線 154㎸ 1回線右 1相のジャンパ線が外されている
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烏帽子型鉄塔 東京電力 栃尾線と明記
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この手前 空地部分に断路器、遮断器があった模様
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上部の母線は、まだ外されてない。 各母線に手前避雷器が繋がる
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上部 母線にはジャンパ線が外されたT分岐が残っている 一番左
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栃尾線は変電所構内の最終鉄構まで送電線はつながっているが、その先がない。
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つまり、東京電力の154kV送電線 系統図 栃尾線は運用されてない。しかし撤去(除却)までは進んでない。Wikipediaの当該 50/60Hz融通部分の記事は修正されるべきと考える。
湯川発電所から霞沢発電所母線まで
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湯川発電所 発電機出力17,400kW 6.6㎸ 約2,600A 引込鉄塔 配線が太い
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湯川発電所6.6㎸ 引込鉄塔No.3 ケーブル引き下ろし
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湯川発電所受電盤 湯川受電と表示
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湯川発電所 6.6㎸昇圧154㎸ 変圧器 中性点引出
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昇圧変圧器 昇圧側Y結線 中性点引出
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湯川発電所の中性点引出は避雷器に繋がっている? 中央下の左が引出で右が避雷器
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154㎸側は遮断器を経てケーブルヘッドで配線引き回し こちら側(左)の鉄構は霞沢線154㎸が2回線引き出されているため、裏側に配線引き回し
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裏側のケーブルヘッドから湯川発電所昇圧154㎸が結合コンデンサ型VTを経て断路器から霞沢線発電所154㎸母線へ繋がる
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霞沢発電所
主変圧器1,2号(霞沢発電所・沢渡発電所)昇圧154㎸から霞沢発電所154㎸母線
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霞沢発電所主変1,2号 (霞沢発電所・沢渡発電所)6.6㎸昇圧154kV 発電所母線までは変圧器からGISを経てケーブル接続
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多分青のケーブルヘッドが霞沢発電所発電機からの昇圧154kV立上り、断路器を経て母線へ 白が沢渡発電所からの昇圧154kV立上り 直接母線へ この2つはコンデンサ型VTを経由 赤が前に記載した湯沢発電所からの昇圧154kV立上り
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別角度 |
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霞沢発電所母線154㎸から遮断器、断路器を経て2回線引出
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霞沢発電所母線154㎸から霞沢線2回線引出 甲信幹線山線を経由塩尻開閉所まで
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霞沢発電所主変1,2号 (霞沢発電所・沢渡発電所)6.6㎸昇圧154kV 発電所母線までは変圧器からGISを経てケーブル接続 中性点から抵抗接地されるが特殊な接続方法を取っている
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2台の主変から154㎸はGIS経由ケーブル引出されているのでブッシングは見えない。 見えているブッシングは中性点から引き出されている引出口だが隣のケーブルヘッドを経由して奥の鉄構 脇のケーブルヘッドまでケーブル接続されている。
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多分オレンジが主変2号の中性点径路、水色が主変1号の中性点径路 奥の架台上に断路器が2台あり中性点接地用抵抗器を選択できるようになっている。 現在は主変2号が断路器を経由して中性点抵抗器に繋がっている。紫色が抵抗器への径路
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2台の主変 中性点抵抗接地行きの単独ブッシング 鉄構上に断路器 手前のダクトは154㎸ 2回線 発電所母線へのケーブルヘッドまで (霞沢発電機と沢渡発電機の昇圧後ケーブル収容)
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黄色断路器から共通中性点抵抗器までラインポスト碍子で繋がっている(紫色)
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中性点抵抗接地器(1,2号主変共用?)
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中部電力 霞沢変電所 変電所番号5264 設備容量14MW
中部電力の資料では154㎸降圧6.6㎸の配電用変圧器は2台となっている
154㎸ 2回線受電 6.6kV降圧 沢渡から上高地周辺に50Hzの電力を供給
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中部電力霞沢変電所 154㎸降圧6.6㎸
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中部電力 霞沢変電所 全体像 2回線 受電GIS
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ETTのレポートでは中部電力霞沢変電所の154㎸2回線が使えなくなった場合。霞沢発電所からのケーブル接続線がありバックアップ体制が取られているとのこと。以下その部分引用
外に出ると、説明で伺ったように中部電力と融通できる送電線が見えました。そして、もし仮に2本の送電線に事故があった場合でも、霞沢発電所からケーブルで直接、中部電力の変電所につながるルートがあり、バックアップ体制も万全だというお話でした。
引用終わり
6.6㎸ 50Hzで融通する電力は約1,224A 14,000KW 程度 湯川発電所の発電機出力は17,400kW
沢渡発電所の発電機出力は4,000kW
霞沢発電所の発電機出力は39,000kW
これら3つの発電所の発電機電圧は50Hz 6.6㎸を母線電圧として出しているので154㎸に昇圧しなくとも配電線に繋ぎこめば配電は可能なので発電機出力をバックアップ時に繋ぎこんでいるのだろう。沢渡発電所の出力では少なすぎる。かといって霞沢発電所の出力では多すぎる。
妥当なのが湯川発電所17,400kW (1997年改良工事終了)だろう。発電機を系統配電線に直結させる場合、配電線と発電機の間に限流リアクトルを入れ短絡電流を制限させるのが系統運用の条件なので先に述べた限流リアクトルはバックアップ電源として発電機直結をする際に利用されると思われる。