2019年12月5日

944. 弘南鉄道 平賀変電所(直流) 弘南線 

平賀変電所

アプローチ:平賀駅 容易
受電:東北電力 南津軽変電所154kV降圧33kV 専用線(大沢線)123A
平賀変電所と大沢変電所は、同一系統ここから123Bで大沢変電所へ送られる。


東北電力 南津軽変電所 全景
南津軽変電所 154kV降圧33kV 大沢線123A 出発点


大沢線123A分岐123Bへ(大沢変電所)

平賀変電所と大沢変電所は、同一系統。ここから123Bで大沢変電所へ送られる。
 高配変圧器を兼ねた整流用変圧器があり33kVから3.3kVへ降圧している。降圧は3台の変圧器による単相運転で行われている。
 地方鉄道では、高配を3.3kVで運用し高配変圧器から更に一段下げた整流用変圧器3.3kV降圧1.2kVで運用している例がある。上毛鉄道大胡変電所

811. 上毛電気鉄道 大胡変電所 ブログリンク

 2014年2017年の国土交通省がまとめた変電設備表(鉄道統計)2つによると、弘南鉄道の変電所は2箇所有人で設備されている。
その設備諸般は以下の通り
変成機器半導体整流器台数 3台 合計全容量4,000kW
変成機器水銀整流器台数  1台 合計全容量1,000kW
変成機器台数       4台 合計全量量5,000kW
変圧器変成機器用台数   4台
変圧器変成機器用 全容量kVA       5,630kVA
となっているので
変成機器(整流器)の配分は予備を含めて弘南線、大鰐線で各2台と見てよいだろう。

 文献によると、大沢変電所には、シリコン整流器1000kWと1500kWがあるので、平賀変電所には、必然的に水銀整流器1000kWとシリコン整流器 1500kWがあることになる。

 水銀整流器の通称「タコ」と呼ばれる日本電池製ガラス製の水銀整流器は定格容量250kW(1500V・167A)が最大のようなので、1000kWを必要ならば250kW×4台設備しなければならない。(600V用はさらに大容量の375kWがあるようだ)

上毛電気鉄道 赤城変電所記事引用

「タコ」の行方
上毛電気鉄道の情報を調べていると「タコ」に中った。
以下の文献

大島登志彦;上毛電気鉄道の水銀整流器:産業考古学,1997、Vol.84.No.3.pp.34 
内容
水銀整流器が4台残っていてそのうち2台は未使用の静態保存であるとのこと
赤城変電所は1961年に新設(輸送量急増のため)され250kW日本電池製で型式はHAF167-1500の水銀整流器が2台 東武鉄道竹沢変電所で退役したものを譲り受けて稼働させている。
しかし2年後1963年にシリコン整流器が導入。予備となった。この2基のほかに梱包状態の同型機が2台故障したときの予備として保存されていた。
この4台の「タコ」がその後どうなるかを筆者は気をもんで適切な保護を求めていた。
 2014年時点で上毛電気鉄道では水銀整流器は無いものと思わえる。大胡車庫内に静態保存され見学可能である。

 国交省の変電所設備表(通称001065537.xlsx)一覧では、もう水銀整流器は、弘南鉄道しかのこってないようだ。001065537.xlsxは、2014年にファイルが行政情報化推進課のO氏によってまとめられているが、もう4年も経過しているので既に老取が行われているかもしれない。

国交産省のリストでは水銀整流器は1台明記なので、通称ガラス製「タコ」は弘南鉄道には存在しない。鉄製封じ切り水銀整流器1台が設備されていると考える。
 水銀整流器用変圧器は、2台あり、そのうち1台は北芝電機製の容量1100kWで廃棄状態、もう一台は容量1100kW東京芝浦電機製で変電所から出ている線が繋がっている。
整流用変圧器が東京芝浦電機製なので水銀整流器も東芝製であろう。はたして常時運用されているのだろうか?水銀整流器は東京芝浦電機で製造していたことがある。
東芝 鉄槽単極水銀整流器の例示

東芝 鉄槽単極水銀整流器の例示 6極 電極相間リアクトル付二重星型結線

 変電所屋外には、打ち捨てられた北芝電機の水銀整流器用変圧器が1台あるので、平賀変電所は当初2台の水銀整流器用変圧器1100kW×2と水銀整流器1000kW×2台があったことが窺い知れる。

 さらに弘南鉄道の安全報告書を過去分(2006~2018年度版)から読み解くと3.項輸送の安全のための取組みに変電設備関係で挙がるのは
2006年(平成18年) 平成14年(2000年)電線の絶縁化
2007年(平成19年) 無し
2008年(平成20年) 無し
2009年(平成21年) 平成21年き電線がいし取替
2010年(平成22年) 平成21,22年き電線がいし取替
2011年(平成23年) 平成21,22年き電線がいし取替
2012年(平成24年) 平成21,22年き電線がいし取替
2013年(平成25年) 平成21,22年き電線がいし取替 平成25年トロリ線張替
2014年(平成26年) 平成22年き電線がいし取替 平成26年真空遮断器更新 平成25年トロリ線張替
2015年(平成27年) 平成26年 真空遮断器更新 平成25年トロリ線張替
2016年(平成28年) 平成26年 真空遮断器更新 平成25,28年トロリ線張替
2017年(平成29年) 平成26年 真空遮断器更新 平成25,28年トロリ線張替
2018年(平成30年) 平成26年 真空遮断器更新 平成28年トロリ線張替
と書かれているように2000年~2019年の20年間 整流器関係の更新(国交省のリストは、2014,2017年度作成)は挙がっていない。
この結果から類推すると整流器の交換はこの20年間に行われた形跡は無く水銀整流器は、まだ残っている可能性が大きい。

 水銀整流器の鉄製封じ切りについては、長年の運転で真空度低下が発生、電極の絶縁物への付着物により機能低下が起こるが、交換の可能性が少なくともこの20年間無いので、設備はあるが切り離されて運用されていないと見てよいだろう。水銀整流器は廃棄するのも費用が掛かる。
 かつて平賀変電所は水銀整流器用変圧器1100kW×2台で 水銀整流器1000kW×2台を運用していたことを考えると、現在のシリコン整流器1500kW一台運転で事足りると思う。但しシリコン整流器1台1500kW運転だけなので壊れたら運休となるが2018年度の安全報告書に先のことは書かれていない。

 33kVを降圧している変圧器は単相運転3台の変圧器だけが対応している。水銀整流器用変圧器は、一次側が3.3kVなので、この変圧器から、水銀整流器用変圧器に供給していると見て間違いないだろう。
 もう一台シリコン整流器用の変圧器が必要となる。通常のシリコン整流器は、1200VがAC入力なので、シリコン整流器用の変圧器は、水銀整流器用変圧器の隣にあるダクト接続の変圧器(3.3kV降圧1200V)が該当する。但し、水銀整流器用変圧器もシリコン整流器出初めのころは、水銀整流器用の相間リアクトル付二重星型結線で兼用できたので、水銀整流器用変圧器があるから水銀整流器が常時稼動していると考えてはいけない。水銀整流器用変圧器(相間リアクトル付二重星型結線)のシリコン整流器用への転用は、富山地鉄の変電所でも見られる。








33kV分岐


受電部 直下に断路器

右に分岐して避雷器

中心 MOF 左 VT(計器用変圧器)その奥 油入り遮断器タンク型


三相一括切油入り遮断器 タンク型
タンクを引き上げて接点を油中で保持
点検時 ウインチでタンクを引き下げて点検

単相変圧器3台の並列運転による33kV降圧3.3kV変圧器群

単相変圧器3台の並列運転による33kV降圧3.3kV変圧器群

水銀整流用変圧器 相間リアクトル付二重星型結線
ブッシングが7個 6極水銀整流器+負極
一番手前が相間リアクトル用
Wikipediaより引用
相間リアクトル付2重星形結線 Wikipedia記事引用
水銀整流器用変圧器の回路図


水銀整流器用変圧器の手前 3.3kV降圧1200V シリコン整流器用変圧器

水銀整流器用変圧器 右から帰線2本 DC1500V2本 AC3.3kV3本
その下に水銀整流器へ向かう6本の配線
相間リアクトル付二重星型結線の証し

水銀整流器用変圧器3.3kV入力端の上にある断路器と避雷器

架線に向かう
左2本帰線 右2本 DC1500V

帰線は、この鉄構で引き下げられてレールへ

レールに帰線がつながる


左 廃棄された水銀整流器用変圧器3.3kV入力北芝電機製造 相間リアクトル付二重星型結線
右 奥 東京芝浦電気整流器用変圧器 相間リアクトル付二重星型結線
手前 シリコン整流器用変圧器 3.3kV降圧1200V
壁には、廃棄された水銀整流器が使用していたブッシングの跡

東芝製 水銀整流器用変圧器

19*2年製造
1964年改造?

北芝電機製 水銀整流器用変圧器

1972年製造?

富山地鉄 小見変電所 水銀整流器用変圧器のシリコン整流器用変圧器への転用例
6.6kV降圧 水銀整流器用変圧器をシリコン整流器用に転用
相間リアクトル付二重星型結線をシリコン整流器へ

水銀整流器用変圧器をシリコン整流器用に転用 上部配線部分 

変圧器 銘盤 画像処理
イグナイトロン(水銀整流器の一種)整流用変圧器

おまけ
弘南鉄道 弘前駅方を区分する断路器(接地型)
開放すると駅側架線が接地される
参考文献
対馬健三郎;弘南鉄道の現状と展望:運転協会誌 地方民鉄小特集Vol.34、No.6.pp.260-262,1992
神埼淳一;東芝ポンプ無し鉄槽水銀整流器について:電気鉄道,Vol.7,No.8,pp2072-2074,1953

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