デッドセクション標識の変遷
コロナ禍のため外出もままならぬので、もっぱら国会図書館のインターネット公開資料を調査している。その調査していた過程で見つけた、興味ある項目をUpする。(しかしまだ本題には、たどり着けず、まとめ切れていない)
直直デッドセクションのおける標識
大正3年 東京ー横浜電化の際に600/1200Vの境 品川(八ッ山)にデッドセクションが設けられ、セクションオーバー用の開閉器が取り付けられた。そこにカーボンランプを直列に繋いだ標識が付けられた。
その後大正13年に吉原氏設計照明付きが作られ、このものが異電圧分界標識の基本形となった。その後セクションに関しては標識がなかった。
昭和24年(1949年)1月 鉄運保第24号により電車線区分箇所における電車線の断線事故防止策としてCTS(民間運輸局・Civil Transportation Section、日本の商船を除く民間水上及び陸上運輸の活用及び復興に係る施策について最高司令官に助言をするために設置された機関)の指示により区分箇所の統一と同時に標識を設置することが通達され実施された。
昭和24年時点では交直・交交デッドセクションも無かったことから直直デッドセクションに付けられてたものと思われる。以下が文献記載の標識 現交交セクションの標識に酷似
根拠は以下のブログ
地方鉄道 1960年代の回想 碓氷峠のアプト式撮影会4 katsumi kazamaさんのリンク
横川機関区の画像で、デッドセクション標識が写っている。電車線区分標は、現在の区分標そのものであるが、600/1500Vの区分に佇む電気機関車の架線上に木製デッドセクションがあり、このタイプの標識が写っている。1963年 7月 撮影
以下は許諾済 引用
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左 奥にデッドセクション標がある |
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拡大 木製デッドセクションと標識 長さは2m位か? アーク安全距離 0.003×500A×1.5kV=2.25m 500Aは起動時電流 0.003は1kVA当たりのアーク長 片パン時 |
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左奥 新型機関車の前にデッドセクションと標識
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拡大 |
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ED42型機関車 右奥 架線に電車線区分標とセクションインシュレーター |
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拡大 架線に電車線区分標とセクションインシュレーター
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1963年時点の貴重な画像である。この時点でデッドセクション標識と電車線区分標は区別されて使用されているのが伺いしれる。
信越本線アプト式、粘着運転式の切り替え時 横川駅、軽井沢駅に一時期600/1500Vのデッドセクションが本線上に設けられていた(これは、別稿で記す)が機関庫においても同様なセクションが運用されていたことになる。
交直、交交デッドセクションにおける標識
架線死区間を表示する架線死区間標識についてこれを、架線区分「標」とするか標識とするか検討が行われた。
標識と標では受ける感じが違うとの結論で「標識」を採用した。
結果 以下の通達がでている。
運列1968号 昭和35年(1960年)12月1日
通達先
支社長、各鉄道管理局長、各電気工事局長
通達元
国鉄総裁
架線死区間標識の設置について(通達)
直流電化区間と交流電化区間の接続箇所および交流電化区間の変電所、区分所付近の架線に設けられる死区間を列車が通過するときは、惰行運転する必要がある。したがって、この死区間の位置を動力車の乗務員に表示するため下記のように架線死区間標識および予告標を設置することとする。
1.架線死区間標識
(1)種別
ィ.交流用
交流電化区間の変電所、区分所付近に設けれれる架線死区間を表示するもの
解説
交流電化区間の死区間を表示するものであるが、すべての死区間に設けるのではなく区分所、変電所直下に設ける
ロ.交直流用
交流直流相互の架線接続箇所における架線死区間を表示するもの
解説
直流と交流の架線の接続箇所に20米の死区間が設けられるが、これを表示するもの
(2)設置方
架線死区間の始端、終端の左側に設ける。但し地形上の理由で左側に設けることができないときはこの限りではない
単線区間での表示, 複線区間での表示
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この図の記号が交直デッドセクションの斜線縞に似ている |
(3)表示方法および形状
交流用は、反射材もしくは灯を使用
まちがって飛び込んでも大きな被害がでない、標識の電源確保の困難な場所もあることから反射材の使用を許可 交流用は形状がまちまちなので統一
交直用は、機関車が切換を失念した場合DC⇒AC 避雷器が作動、AC⇒DCの場合ヒューズ溶断で防ぐが万が一作動しなかった場合もあるので、常時灯によって死区間を表示
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信号保安より 交直は、赤斜線の太さが微妙に違う |
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鉄道信号ハンドブックより |
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鉄道信号ハンドブックより |
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株式会社保安サプライ カタログより引用 |
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保安信号に書いてある内容と違う 現物は左に設置 電気工作物(電力設備)設計施工標準(解説書)から引用 |
身近で見つけた現物
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鉄道博物館 標識 |
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鉄道博物館標識は、小さい |
(4)見通し距離
200米以上
死区間標識の見通し距離は200米あれば、乗務員が機関車の交直切換スイッチを操作し得るものとして200米を定めた。
2. 予告標
交直流用架線死区間標識の前方において予告するもの
交流用については、予告標の設置は、不要となっていたので交直流用についても予告
標は必要ないとの意見もあったが機関車が使えなくなる場合もあるので交直流用については予告標を設置する。
交直流用架線死区間標識の前方400米の線路 左側に設ける。但し地形上の理由で左側に設けることができないときはこの限りではない
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予告標 |
新しい標識の検討
交直切換も自動化されてきているので、いままでの大きな電照式標識は必要なくなる可能性がある。 常磐線での動向を注視したい。
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交流方 架線死区間標識 電照式ではない 水戸線 |
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最近の交直デッドセクション標識は電照式必須ではないようだ。 簡略化? 黒磯
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JRの交交デッドセクション標識、交直デッドセクション標識、阿武隈急行、仙台空港鉄道の交交デッドセクション標識は統一化されている。
異電圧 直直デッドセクション
小田急線 750V/1500V デッドセクション 1本斜線
箱根湯本駅構内
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正統 国鉄の流れをくむ標識 |
富山地鉄 600V/1500Vデッドセクション 2本斜線
南富山駅構内
但し富山地鉄は、単なるセクションインシュレーターの箇所は2本斜線で表している。
エアーセクションの箇所は1本斜線で表している。
異電圧ではないが斜線標識を使っている箇所 1本斜線
JR東海/小田急 松田駅
直直デッドセクションの箇所は、
電車線区分標で表示するもの、私鉄特有の標識で表すものに大別できる。
電車線区分標の利用
東武⇔JR東日本、上信電鉄⇔JR東日本、上毛電気鉄道⇔東武、西武(多磨)⇔JR東日本等
特有の標識
秩父鉄道⇔西武、秩父鉄道⇔JR東日本、西武⇔JR東日本(武蔵野線)JR小田急⇔JR東海
で表すものに大別できる。
詳細は以下を参照
参考資料
日本国有鉄道百年史9,日本国有鉄道/編,1972
鉄道技術発達史Ⅳ第3篇電気,日本国有鉄道,1959
原英雄;架線死区間標識の設置について:信号保安 Vol.18,No.1,pp.15-16,1961
鉄道信号ハンドブック,pp527-528,pp.452-543
16.2/架線終端標識及び架線死区間標識;電気工作物(電力設備)設計施工標準(解説書):日本鉄道電気技術協会配電・電灯電力技術委員会編
katsumi kazamaさんのリンク(許諾済)
地方鉄道 1960年代の回想 碓氷峠のアプト式撮影会4