2025年5月25日

1492. 北陸巡検3 JR西日本 北陸新幹線 新黒部変電所 RPC(電力補償)装置配置 

 新黒部変電所

        

アプローチ:黒部宇奈月温泉駅

受電:黒部江口線H003 154kV 2回線 分岐 需要家線H004 154kV 2回線


上位には発電所が2つ繋がるが発電出力は小さい。上位は、遠方の富山火力発電所となる
黄色〇が新黒部変電所
 新黒部変電所の上位に愛本変電所がある。H002愛本黒部線で繋がってはいるが×が付いているので分断されている。これは愛本変電所が関西電力管轄であるためであり、黒部発電所系の潤沢な電力が利用できないため、新黒部変電所は電源が弱い環境に置かれている。

 新黒部変電所は、受電の短絡電流が小さく弱いため、変電所内に電力補償装置(以下RPC装置とする)を導入している。そのため変電所本体は明電舎、RPC装置部分は富士電機に分かれて施工されている。明電舎でもRPC装置は作製しているが入札で落ちたのか?

 RPC装置が新黒部変電所に置かれる理由は、一次側の送電線の短絡容量が小さく、二次側M座、T座側の列車走行による二次側の不平衡が一次側に影響を及ぼすので、二次側の不平衡電力をM座、T座間で融通して一次側に影響を及ぼさないようにしている。

新黒部変電所単結線図
 他の変電所との特殊な違いは、中心にRPC装置の空白があること
この部分が富士電機の担当部となり他の部分は明電舎が担当している
RPC装置は、所内母線側のM座、T座のF(FA)、T(TF)側に並列に繋がっている

白抜きの部分がRPC装置 結線が2本しか書かれていないが1本がM座AF(AT)、TF(T)の2回線を表現している。もう1本がT座AF(AT)、TF(T)の2回線を表現している。


 M座、T座から取り入れた電力を一端インバーター用多重変圧器で降圧してインバーターで直流化、コンデンサを充電して結合させている。全停電時にはコンデンサの容量が抜けるため別に起動用の直流電源でコンデンサを充電する必要がある。RPC装置は1台7.5MVAで2台置かれている。インバーターユニットはIGBT素子でPWM制御 


RPC装置の富士電機仕様

RPC装置の運転モード 
新黒部変電所では、RPCモードが主につかわれSVC-Q、Vモードはめったに使われない
特にSVC-Cモードは選択できるが使われないと思う

RPCモードの運用
 M座、T座のき電側有効電力が不均衡の場合、その差の1/2をRPCを通じて融通してスコット結線変圧器のM座、T座を有効電力を同一にして一次側の三相電力を均等化する。この場合変電所直下の中セクション(SN)を利用した切替開閉器は通常通り運用する。



SVC-Qモードの運用
 スコット結線変圧器の片座運用を行なう。き電を行なっている片座の電圧、電流から変電所出力の無効電力を演算して、その無効電力と逆極性の無効電力をRPCが出力し無効電力の補正を行なう。き電線電圧が降下しそうになると、SVC-QモードのRPC装置は、そのき電線に対して進み無効電力を供給する。またその逆でき電線電圧が上昇しそうになると、RPC装置は遅れ無効電力を吸収する。そのため片座電圧は安定化するこの場合スコット結線変圧器の一次側は電力不平衡状態となるので短絡容量の小さい新黒部変電所では一次側送電線に影響を及ぼす。この場合変電所直下の中セクション(SN)を利用した切替開閉器は無効化し運用する。

 

受電設備

154kV60Hz 2回線受電 最終鉄構

一番右 避雷器(LA)、CVT(コンデンサ形電圧計)、断路器(開路)、遮断器(GCB)


右 CVT(コンデンサ形電圧計)と断路器(開路)、遮断器(GCB)


右 遮断器の後は、CVT(コンデンサ形電圧計)とCT(変流器・電流計)でMOFを形成

単結線図と実物の対比


左 スコット結線変圧器 その直前に再度避雷器を置くのが常套手段

変電設備 スコット結線変圧器

明電舎製 スコット結線変圧器 M点アレスタ省略 低騒音形
154kV降圧60kV き電用変圧器 

スコット結線変圧器 70MVA 新長野SSより大きい


OT1(所内変圧器・逆スコット結線変圧器)
EVT2組(地絡事故時に発生する零相電圧を検出する・この場合AF(F)とTF(T))

単結線図と実物の対比

所内き電母線60kV 側
1,2Lの各スコット結線変圧器からのAF(F)とTF(T)が纏まり分配される

中央右の建屋は、き電母線からRPC装置に繋がる遮断器が収容されている
その後ろが60kVき電母線部

き電母線部から上下線 き電用CB室(遮断器収容)にき電線が分配される

単結線図と実物の対比


RPC部への接続部
き電母線裏側から建屋内の遮断器を経て引き出されケーブル化されて多重変圧器に繋がる

建屋のドア表示 4台の単極遮断器が収容
RPC部 インバーターは別棟建屋に収容

上の図の52RPCM(M座)、52RPCT(T座) AF(F)とTF(T)で4台
89RPは、RPC用遮断器室の後ろにあるので見えない

左側がM座のAF(F)とTF(T)

インバーター用変圧器4台 M座2台 T座2台


インバーター変圧器 矩形波で励磁しているので音がうるさい 奥60kV側 手前2,460V側


IGBT素子を使用したインバーター収容建屋 RPC装置の心臓部

3レベル単相インバーターユニット4台を1面実装×2とコンデンサバンク24.3mF×2
多分中心のパンチングメタル部分がコンデンサバンク
16本のケーブルが見えるが2本1組×2がインバーターユニット1台に接続


RPC稼働時の単結線図


き電母線部から上下線 き電用遮断器室)にき電線が分配される

き電用遮断器室(52F11,52F13が収容) ここまでが60kV耐圧 (実際は負荷側の89FL断路器まで) 

ATき電部 
ATと切替開閉器52S,タイき電用断路器89FT,中セクション短絡用断路器89SNで構成




奥 上り方(白) AT 12,14  
右端負荷断路器は89FT 上り方タイき電用 中央左負荷断路器は89FT 下り方タイき電用

奥 下り方(黄) AT 11,13 負荷断路器は89FT 



手前 切替開閉器室(下り線用)11,13き電線収容


左建屋 下り線 切替開閉器室 予備を含めて2基収容
線路側にき電線引出

手前 下り方切替開閉器室 黄色 13T,SN1,11T側母線、
奥 登り方切替開閉器室 黄色 14T,SN2,12T側母線

奥 拡大 上り方 この母線左に切替開閉器室がある


手前 拡大 下り方 この母線左に切替開閉器室がある


き電線接続部 線路側





トンネル開口部 黄色下りATき電線とTき電線 白 上りATき電線とTき電線

トンネル開口部 黄色下りATき電線とTき電線 白 上りATき電線とTき電線
このトンネル開口部のトロリ線部分は中セクション(SN)となっている


参考資料
御籐憲行ら;北陸新幹線(長野・金沢間) 変電設備・配電設備・電車線設備紹介:明電時報Vol.344,No.3,pp23-24,2014

須貝孝博;北陸新幹線(長野・金沢間)の電気設備について:J. IEIE Jpn.   Vol. 35 No. 8,pp3-6,2015

尾曽弘ら;北陸新幹線新黒部変電所向け電力補償装置:富士電機技報,Vol.88,No.1,pp.56-61,2015






































































































JR東日本 宝積寺変電所 TEPCO受電開始 鉄塔銀座 TEPCO烏山線をどう通したか

1483. JR東日本 宝積寺変電所 TEPCO受電開始 鉄塔銀座 TEPCO烏山線をどう通したか

  JR東日本 宝積寺変電所の受電変更については過去に多数記事にしている。とうとうTEPCO烏山線から受電するようになった。2025年3月が運開のようだ。 1368. JR東日本 宝積寺変電所 TEPCO受電開始直前と烏山線増強線、喜連川線との接続点 栃那線No.101鉄...

人気の投稿