2024年3月30日

1358. 小林製薬 健康被害 紅麴菌 固体培養が鍵 番外

過去に医療系の記事を少し書いていたが本業が「ばれる」ので抑えていた。 

昔 卒業単位の取得に微生物学と微生物学実験の受講が必要であったので一言

原因物質が特定されつつあるがその化合物の名前が「プベルル酸」であるとのこと

以下にWebで調べた情報を引用



プベルル酸(Puberulic acid)は、Penicillium aurantiogriseumおよびPenicillium puberulum 青カビから産生する物質。
Penicillium aurantiogriseum は、アスパラガスやイチゴに感染する青カビ
Penicillium puberulum は、ヒヤシンスの緑かび病

Penicillium属は青カビと言われ常に空中に胞子が飛散している。

 小林製薬の紅麹の製法は、個体培養法による製法でグンゼ株式会社からの承継で培養を開始した。

以下小林製薬のリリース

 今回、国内唯一の固体発酵法により生産される紅麹の発酵過程における形態・色、機能性成分、色素成分等の変化を世界で初めて解明し、2018年6月30日に福岡市で開催された「発酵と酵素の機能食品研究会 第3回 定期大会」において発表いたしました。引用終わり

 通常菌体の培養は工業的には、タンク培養の形式をとり液体培養で行われている。この場合 培地(菌体を増やす栄養分の入った液体)をタンクに入れ高圧滅菌を行い、pH、溶存酸素濃度を調整後、別に純粋培養している種菌をタンクに無菌的に投入して培養を開始。

 培養途中でpH及び溶存酸素、濁度(菌が生育すると培地が濁ってくる)を監視。必要ならpH、溶存酸素の調整。目的とする菌から産生する物質の誘導体の投入を行う。

 最終的には、タンクから培地を回収し高速連続遠心機で培地と菌体を分離して培地から目的とする菌体からの生成物を回収、もしくは菌体そのものを回収して原料として利用している。

 カビ類の液体培養は抗生物質のペニシリン等医薬品関係で多く使われる手法であるが、結構難しい。菌体を培養して抽出することは容易だが、菌糸部分の回収は聞いたことが無い。そのため菌糸が付着した米部分を回収するため固体培養法が使われている。

 紅麹菌は、この菌体(糸)から生成されるアンカフラビン/モナスコルブリン等の色素が着色に利用されており水溶性のため液体培養での製造が主流である。色素の利用ならば液体培養を行い培地成分中に分泌されるアンカフラビン/モナスコルブリン等を抽出すれば良い


 小林製薬のWebには「赤い色素が善玉コレステロールを増やす?」と書かれているが、本当は培地に繁殖した紅麹菌が産生するモナコリンKがHMG-CoA還元酵素阻害薬(コレステロール低下作用を持つ)として働くためである。

 小林製薬が採用したのが「固体培養法」。これは固体(培地・米)を平面に平たく伸ばして、その上に種菌を撒いて培養するいわゆる「麴」の製法と同じである。この場合 味噌、酒の場合は麹菌を米の上に撒いてムロの中で適湿、適温で培養を行う手法を取る。この手法では完全な無菌状態になならない。 培養後菌体が生えた米を回収。乾燥後粉砕混合して出荷される。

 工業的な個体培養法は、水平回転する円筒形のタンク内に培地となる米等を入れ純粋培養した菌体を投入。タンクを回転させながら内部の培地(固体)をかき混ぜて培養する回転培養法(言ってみればロータリーキルンのような構造)を採る。

 原料となる米が青カビで汚染されていた可能性も否定できない。

 固体培養法による発酵生産 佐藤和夫 著 · 1992

 小林製薬の発表(2018年)によると個体培養法を採用することにより「紅麹の代表的健康成分モナコリンKの経時的可視化(含量)」が増加することが示唆されている。つまり液体培養では生成量が少ないモナコリンKが固体培養法で収量が増加していることが伺える。

 その結果採用された固体培養は、開放系(ムロのなかでの平面展開)での培養なので場合によっては、空気中に常に浮遊する胞子(青カビ)が付着して部分的に繁殖する可能性が考えられる。特定の培養ロットでプベルル酸を産生する青カビが部分的にコンタミしていた可能性が考えられる。

 
紅麴菌のコレステロール低下作用

 遠藤章氏は1971年 三共の発酵研究所でHMG-CoA還元酵素阻害薬(コレステロール低下作用を持つ)の研究を進め1973年青カビの一種 (Penicillium citrinum) からHMG-CoA還元酵素阻害薬コンパクチンがを見つけた。しかし臨床試験の結果1980年に実験動物に副作用が発生したため臨床試験は中止されている。その後遠藤章氏は1979年 東京農業大学へ移籍している。

コンパクチン(メバスタチン・ML-236B)の構造式



 以下小林製薬のWebから引用

悪玉コレステロールの合成を抑えるモナコリンK
1979年、東京農工大学の助教授(当時)・遠藤章氏によって、紅麹菌(Monascus ruber M1005 )から、高いコレステロール抑制効果を持つ成分が発見されました。その成分がモナコリンK。モナコリンKはその後の研究を経てコレステロール抑制剤(スタチン剤)として発売されました。引用終わり


 つまり紅麹菌から産生するモナコリンKは、医療用として発売されて大きな売り上げを挙げているコレステロール抑制剤(ロバスタチン剤)と同じである。

 小林製薬では個体培養法で培養を行い菌体を回収し、サプリメントとして販売。米の表面に増えた紅麹菌そのものであるため、コレステロール低下作用を大きく標榜しなければ健康食品として販売できたのである。小林製薬は、紅麹菌から産生されるカビ毒シトリニンは産生されない遺伝子を持った紅麴菌を選択して使用し、生産管理上シトリニンは分析していた。
 青カビがコンタミすると部分的に青くなるが紅麹菌の赤に隠されて発見が遅れた可能性も考えられる。青カビのコンタミは生産管理上は目視確認であったのであろう。

シトリニン

また菌体から精製されて臨床試験を経て医薬品登録を受けたものがロバスタチンとなる。

 医薬品原料となるロバスタチンが含有する健康食品を食べてコレステロールが低下するのは、明らかなことである。多量に摂取すればロバスタチンと同様な副作用が発生する。

 一方 医薬品としてのロバスタチンは、紅麹菌からは生産されず別の麹カビの一種 (Aspergillus terreus)から工業的生産され医薬品として登録された。この辺の経緯は遠藤章氏の論文に詳しく書かれている。

モナコリンKの構造式(ロバスタチンと同じ)


この辺の一連の流れは遠藤章氏によって書かれた以下の論文に詳細がある。



ちなみに私はLDLコレステロールが200㎎/dl以上あるがスタチン製剤は絶対飲まない。






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