2024年12月8日

1404. JR西日本 小浜線は、なぜ変電所問題で叩かれるのか?その原因

  小浜線の電化は2003年(平成15年)3月に運開した。その当時は約85㎞の距離に変電所4か所(約20㎞間隔 若狭高浜、小浜、十村、栗野)・首都圏で言えば高麗川ー拝島間の八高線)で き電吊架線の断面積は730㎟(圧縮型アルミニウム覆鋼心耐熱アルミニウム合金より線SB-TACSR/AC・ハイパー架線)の電力容量1870Aで並列き電されていた。

 電化する際の検討事項で重要な項目は、

1.赤字ローカル線

2.列車密度が低く電力会社側の電力量での資本費回収が困難

3.いかに工事費低減を図るか

であった。

 電化するにあたり付近の送電線を調査するのが常であるが小浜線に平行に77kV送電線一部に33kV送電線があることにはあった。

 計画時の各4つの変電所の容量は500kW(銚子電鉄の現在の値)であったため電力会社の契約電力500kWに対する供給標準電圧は6.6kVであった。しかし電車線負荷のため常に変動する負荷に対する両社の見解は1ランク上の22,33kV受電が相当であるとの認識で一致していた。しかし双方とも過大な設備投資を考慮した結果 77kV受電は一番先に消え、77kV降圧6.6kVの配電用変電所に33kVを追加する受電、33kV降圧6.6kVに変える案は消え去った。(2,000kW以上~10,000kW未満=22kVまたは33kVと一般に言われている)

付近を通過する送電線 
嶺南小浜線77kV、小浜線(分岐高浜支線)77kV、世久津線33kV、本郷線33kV

電源と変電所間距離 資料より引用

若狭高浜SSの近傍には関西電力高浜変電所(77kV降圧6.6kV)がある。
小浜SSの近傍には関西電力小浜変電所(77kV降圧33,6.6kV )、南川町変電所(77kV降圧33,6.6kV )がある。
十村SSの近傍には十村変電所(77kV降圧33,6.6kV )嶺南小浜線77kV、世久津線33kVが通過している。
栗野SSの近傍には受電に適する電圧の送電線も変電所も無い。

 最終的に残ったには一般需要家が使用している6.6kVの配電線からの受電となった。計画時は500kW受電契約であったが2000kWのシリコン整流器を置くことになっているので2000kWの制限ギリギリの契約になっていると思われる。デマンド設定をしているので過大な負荷はかけられない。ピーク電力がデマンド値になるとその値での基本料が1年間続く

この現場は、十村変電所の6.6kV受電部 2回線受電と思われる 資料より引用

 変電所の整流器容量は113系(2M2T)の力行時の最大電流を1,000Aとして変電所直下(駅部に設けることとなっていた)で両方向同時発車 最大2,000Aが賄える2,000KWシリコン整流器を選択した。2,000kWシリコン整流器は定格1333Aが流せるので2,000Aだと150%負荷になるが定格をE種(定格電流の120%で2時間、300%で1分間の過負荷)を選択しているので短時間負荷(力行同時発車)には耐えられる。

 このシリコン整流器と組になる整流用変圧器は連続励磁短時間定格を適用して放熱器不要としている。放熱器不要の変圧器はコンパクトでシリコン整流器と一体化させることによりコンパクトな設計となる。工場組み立てでトレーラー輸送が可能。4か所で8組の一括発注

 4変電所(若狭高浜、小浜、十村、栗野)の構成を同じにすることでコスト低減を図っている。6.6kV受電は2回線平行受電で整流器側で並列接続している。つまり1000kWの変成設備2バンクが変電所に設備されることになる。(合計2,000kW)

 運用は、配電線の短絡容量が大きい場所の変電所は1回線常時受電で2バンク運転。(若狭高浜、小浜、十村SS)短絡容量が小さい変電所(栗野)は2回線平行受電で2バンク運転を行なっていた。

中心に整流用変圧器と一体化されたシリコン整流器2台で2,000kW
左に正極89P負極89N母線断路器とFL 電力濾波器 
左建屋に直流高速度遮断器2台11H,13Hと制御盤
右のキュービクルに受電盤とMOF、所内変圧器OT
ちょうど十村変電所を逆さまから見た構図 大きさは15m×30m

 北陸本線、湖西線が直流電化された場合は栗野変電所は敦賀直流変電所との並列き電となるので1回線1バンク運転となる。

 この小浜線沿線は高浜、美浜、大飯原発があるので小浜線を使ってDLで大型変圧器を運んでいる。ELは変電所の容量が小さいので入れない。

 また過去に特急「まいつる」が観光シーズン小浜駅まで運行していた時は変電所容量の関係で臨時ダイアが組まれていた。

 要するに6.6kV受電で一般需要家配電線からの受電なので受電容量を増やせない。大電力を取ると一般需要家の電圧低下を引き起こす。現に小浜線でも6.6kV側の配電線の末端にSVCを入れて電圧補償を行なっている。また変電所間隔が20㎞もあることも足を引っ張っている。いくらハイパー架線を導入しても電圧降下はある。

 この小浜線の接続点の舞鶴線 JR西日本舞鶴線 西舞鶴変電所は33kVケーブル受電を関西電力 西舞鶴変電所から受電している。


栗野変電所

Google Street Viewから栗野変電所 変則的な配置


Google Street Viewから栗野変電所

Google Street Viewから栗野変電所 6.6kV 2回線受電

Google Street Viewから栗野変電所 整流用変圧器と一体化したシリコン整流器
整流用変圧器には放熱器がない(放熱器用の配管は出ているが閉止されている)



十村変電所
Google Street Viewから十村変電所 平均的な配置


Google Street Viewから十村変電所
左のキュービクルに正極負極母線断路器が収容その隣の小さいキュービクルは電力濾波器
右の建屋に直流高速度遮断器が収容


Google Street Viewから十村変電所 6.6kV 2回線受電

Google Street Viewから十村変電所

Google Street Viewから十村変電所
ハイパー架線の特徴が良くわかる
ケーブル3本なので1350Aがケーブルに流せる許容電流 ハイパー架線が1870Aなので余裕

小浜変電所
Google Street Viewから小浜変電所 平均的な配置(横向き)

Google Street Viewから小浜変電所 線路反対側からの俯瞰
左側にき電線が伸びているのは駅構内に変電所があるためエアーセクションを駅構外へ移動させているいるため(各変電所もエアーセクションを移動させている)


Google Street Viewから若狭高浜変電所 平均的な配置


Google Street Viewから若狭高浜変電所
駅の反対側から俯瞰
左側にき電線が伸びているのは駅構内に変電所があるためエアーセクションを駅構外へ移動させているいるため(各変電所もエアーセクションを移動させている)



参考資料
梅田 繁樹;6kV受電の電気運転用変電所:鉄道と電気技術Vol.15,No.1,pp.33-36,2004
































正月企画 JR、私鉄 自営送電線 その他送電線(鉄道系)系統図 富士川以北を主に経路をGoogle My Map(New)に記載

1409. 正月企画 JR、私鉄 自営送電線 その他送電線(鉄道系)系統図 富士川以北を主に経路をGoogle My Map(New)に記載

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