直流遊流阻止装置と常磐線・水戸線(BTき電)、つくばEX(ATき電)
交直接続で架線部分は、セクションを設けて分離しているが、線路の部分も、セクションを設ける方式であった。ところが車輪によってレールが短絡されると直流区間の線路から交流区間の線路に当然ごとく直流漏洩電流が流れる。そしてセクションから50㎞以上も離れた交流区間にも直流漏洩電流が流れることが判明した。(作並での試験)軌条からの漏洩電流については、以下の記事で詳細を紹介している。
交流区間での信号継電器の取扱は、駅部では交流電化当時は、信号の軌道回路に影響を及ぼさないようにした直流単軌条方式が検討されていた。この直流単軌条方式は、直流区間の漏洩電流が流れると誤動作することが判明した。
黒磯では、交直の接続が行われる。この直流の流入を阻止できれば交流電化区間でも安価な直流単軌条方式が採用できる。また直流の漏洩電流が交流区間に進入することで地磁気観測にも影響が及ぶことが、福米線の直流電化の際 原ノ町の地磁気観測所のデータに影響を与えていることで既に判明していた。
まず黒磯⇔白石で交流区間と直流区間のレールをセクションで分離。レール間をコンデンサでつなげ直流を阻止する試験をおこなった。
1)黒磯変電所停止の場合でも白河駅で直流遊流が大きく直流単軌条方式が採用できないことが判明、さらに黒磯から65㎞以上離れた場所でも遊流が観測された。
2)コンデンサを入れることで直流は完全に阻止できる
3)コンデンサを入れるとこで直流部分のレール電圧が上昇。保線作業場危険となる
4)コンデンサを入れた部分を列車が通過するとレールと車輪間で火花が生じる。
そこで福米線の福島駅構内の中川信号所の地上切換えセクション部でレールのセクションの検討が行われた。それは交直セクション(架線)の直下のレールセクション部から交流側で1列車以上の距離を置いてレールにセクション入れ間にコンデンサを入れて直流部分と交流部分を分離する。と言う簡単な方法であった。
この方法だと確かに直流と交流の分離が可能だが、車輪がセクションを通過した際に火花が発生、また連結器での火花の発生が認められた。これはレールのセクションを車輪が跨いだ時にコンデンサに充電電流が流れ、これが遊流となって交流側に侵入することであった。
この充電電流とレール電位について試験を行った。
(イ)コンデンサのみ
(ロ)コンデンサとリアクトルを直列にいれる
(ハ)コンデンサと抵抗を直列入れる
(二)コンデンサとブースター変圧器を直列に入れる
イ~二は、どれでも効果があったが(二)の場合は、顕著に充電電流が少なかった。
そこで今度は、コンデンサをかました後に吸上変圧器(BT)を入れ線路の電流を吸上げて火花の発生を防いだ。
これで一応の直流遊流(漏洩電流)の阻止方法が解決される。のだが、先に述べたように地磁気観測所での地磁気測定に対して直流の漏洩は観測結果に影響を及ぼすことが判明している。そこで線路及び架線への直流流入が検出できるような直流検出装置を入れることになった。これは架線用と線路用が組みで構成されており直流を検出すると近隣の直流変電所の直流高速度遮断器をすべて開放すると言うものであった。そのため設備の重故障対応として予備を1組もつ形の直流遊流阻止装置の完成を見たのである。
現在 直流遊流阻止装置は、水戸線・常磐線(BTき電)、つくばEX(ATき電)に設備されている。また直流区間に交流が流れ込む交流遊流の想定もあったが、直流遊流よりも影響は微細であるので対策は、されていない。
常磐線の遊流阻止装置
デッドセクション後の藤代方上下線にある装置 回路の詳細は、水戸線のデッドセクションで述べる。 |
直流遊流検出装置
常磐線の交直区間のデッドセクションについて、紹介する記事は、多いが交流電化区間の藤代方にある交流のエアーセクションについての記事は、皆無であるので記す。
このエアーセクションは、常磐線上下線とも同じ設備が設置されており、コンデンサーバンクと断路器・直流検出装置・吸上げ変圧器で構成されている。その装置の名前は、直流遊流検出装置と言い、交流方に直流が何らかの装置トラブルで直流が遊流した際にそれを検出して直流変電所へ強制停電の指示を行う装置である。常用と予備の断路器があるが、コンデンサーが故障の場合、予備系に切替えて機能を継続使用できるように成って入る。同様な機能を持つ装置が、水戸線、つくばエクスプレス線にも導入されている。それだけに直流の混触には、気を使い地磁気観測に影響を及ぼさないように配慮されている。
直流遊流検出装置の設置根拠は
①地磁気観測所の観測に障害を及ぼさないようにした。
②交流電化当事は信号の軌道回路に影響を及ぼさないようにした直流単軌条方式が検討され導入された。
しかしながら、現在では信号の軌道回路は、変更されており主に①が目的であろう。
このエアーセクションは、常磐線上下線とも同じ設備が設置されており、コンデンサーバンクと断路器・直流検出装置・吸上げ変圧器で構成されている。その装置の名前は、直流遊流検出装置と言い、交流方に直流が何らかの装置トラブルで直流が遊流した際にそれを検出して直流変電所へ強制停電の指示を行う装置である。常用と予備の断路器があるが、コンデンサーが故障の場合、予備系に切替えて機能を継続使用できるように成って入る。同様な機能を持つ装置が、水戸線、つくばエクスプレス線にも導入されている。それだけに直流の混触には、気を使い地磁気観測に影響を及ぼさないように配慮されている。
直流遊流検出装置の設置根拠は
①地磁気観測所の観測に障害を及ぼさないようにした。
②交流電化当事は信号の軌道回路に影響を及ぼさないようにした直流単軌条方式が検討され導入された。
しかしながら、現在では信号の軌道回路は、変更されており主に①が目的であろう。
下り線側 直流遊流検出装置 円筒形の直流検出装置が予備を含めて3個ある。 吸上変圧器は、故障が少ないため1個 |
上り線側 直流遊流検出装置 下り線と構成は同じ 柱上にある吸上変圧器BTと避雷器 下の円筒形の機器が直流検出器 |
エアーセクションの表示 上り線 藤代変電所からの交流き電線が、直流遊流検出装置に繋がる |
常用・予備切り替え断路器 手前コンデンサーバンク コンデンサーバンクは20kV用(P)が2組(予備1) レール(N)用が2組(予備1) この部分は、架線のエアーセクションとレールのインピーダンスボンド中性点からの配線が入っている。 |
水戸線の遊流阻止装置
トロリ線にAC20kVが、やっと給電される。 しかし小山変電所からの、き電線は接続されていない。 通常なら接続されて良いはずである。 そしてエアーセクションが始まる |
レール絶縁部がデッドセクションと同様に2m位の間隔である |
交流側小山方絶縁部とインピーダンスボンド |
直流遊流阻止装置 エアーセクションを挟んでいる。 小山変電所からのき電線と、先ほどのトロリ線が繋がっている給電線が この装置に繋がる。 |
交流側小林田方レール絶縁部とインピーダンスボンド |
吸上変圧器・避雷器・両切断路器・コンデンサーバンクが設備された施設 常用・予備切り替え断路器 手前コンデンサーバンク コンデンサーバンクは20kV用(P)が2組(予備1) レール(N)用が2組(予備1) この部分は、架線のエアーセクションとレールのインピーダンスボンド中性点からの配線が入っている |
円筒形の直流検出装置が予備を含めて3個ある 吸上変圧器は、故障が少ないため1個 |
電車線用 コンデンサー 検知器 とその後ろ電車用コンデンサー |
電車軌条用 (予備) コンデンサー 検知器 とその後ろ、軌条用コンデンサー(予備) |
軌条用 コンデンサー 検知器 とその後ろ、軌条用コンデンサー |
両切断路器 2組 電車線用と軌条用 予備と常用 |
直流電流検知装置 |
直流電流検知装置 銘板 |
小山変電所からのAC20kVが直流遊流阻止装置に接続 直流遊流阻止装置からの、き電線がデッドセクション後の交流側トロリ線に接続 |
小山変電所からのAC20kVは、一度吸上変圧器とコンデンサーを経由して
デットセクション後のトロリ線に加圧されている。その後エアーセクションを挟む。
エアーセクション後、小山変電所からのAC20kVは、直接
トロリ線に加圧されており、き電線は必要なくなる。
つくばEXの直流遊流阻止装置
直流遊流阻止装置用エアーセクション |
この部分が直流遊流阻止装置 常磐線・水戸線での実績を踏まえてBTでの吸い上げを行い回路も同じ原理で動作 |
文献上でこの直流検出装置の位置がコンデンサの前か後ろかの2例が存在している。ある文献では、コンデンサがパンクした場合への対応として検出器の後にコンデンサがあり、コンデンサがパンクすると直流が導通状態になるので直流が検出できる。コンデンサの後ろに検出器がある場合、これもコンデンサがパンクすると直流が導通状態になるので直流が検出できる。
直流遊流が、発生した場合、検出器の後ろにコンデンサがあれば、検出器の巻き線に直流が加わり、磁気飽和が変化して検出可能となるので、検出器の位置は、コンデンサの前が妥当な位置であろう。
現にAT用の直流遊流阻止装置の回路図では、コンデンサの前に検出器が置かれている。
レール、架線から見てコンデンサの後 2例
レール、架線から見てコンデンサの前
つくばEXのAT用直流遊流阻止装置の回路図 つくばEX 建設誌からの引用 |
参考文献
田代淳:直流游流防止装置の保全について(図2直流電流検知装置 結線図・動作引用)
鉄道電気技術研究会発表会論文,2001,11th.pp.11-16
但しこの文献中の構成図中で直流検出装置の位置がコンデンサーの後であったので手前に書いてある変電所一般:き電変電シリーズ(1)の図を選択している。(コンデンサーがあると直流が流れないため)
日本鉄道電気技術協会編:変電所一般:き電変電シリーズ(1)
Ⅳ 異電源突合せ箇所の設備4.直流游流阻止装置pp.97-99 (図4.3.1引用)
日本鉄道電気技術協会編:電車線路シリーズ
4き電線・帰線路・がいし 7.直流遊流阻止pp.130-131(図4.1.5引用)
佐竹利麿;常磐線直流遊流阻止設備について:電気鉄道,1960,Vol.14,No.10.pp.17-19
中島保三ら;常磐線取手藤代間遊流阻止設備について:1961,Vol.16,No.3,pp.93-96
つくばEX資料引用 AT区間での直流遊流阻止装置 回路図