富山地鉄本線の一部、立山線の廃止が取り沙汰されている。地鉄側は自治体の支援がなければ今年11月にも国へ廃止届を提出とのこと。
富山地鉄の廃線危機、行政の対応が遅すぎ! 必要なら「まずは残せ」 マイナビニュース 掲載日 2025/08/09 08:00 更新日2025/08/09 18:59 著者:杉山淳一
を読んで思うこと。この内容は、もっともなことが書かれているが引っかかった部分が一部ある。
それは以下の部分 以下引用
>筆者の私案だが、新魚津~宇奈月温泉間はあいの風とやま鉄道の交直流電車521系を直通させてみてはどうか。富山駅から乗換えなしで宇奈月温泉駅に到達させるほうが便利だろう。
引用終わり
変電所インフラから見て富山地鉄は脆弱なので521系を突っ込むことはできない。編成出力920kWなので少なくとも魚津、長屋、内山の変電所を1,500kW 化しないとまともな運転はできない。
以下に理由を述べる。
新魚津駅⇔宇奈月温泉駅間は約22㎞のき電距離があり合計で2,750kWのシリコン整流器が設備されている。 しかし設備が老朽化しており、この間に編成出力920kWの電車を2本(合計1,840kW )走らすことは変電所過負荷の原因となり、設備故障が発生する可能性が高い。
特に内山変電所からは線路勾配が増す山岳路線となる。勾配が増す長屋変電所⇔宇奈月温泉駅間は約13㎞。この間にある内山変電所は750kWのシリコン整流器しかない。 これは内山変電所の設備容量を増やさないと運行できないことは確実である。
受電電圧6.6kVは、まったく問題ない。多くの地方鉄道で6.6kV受電で運行を行なっている。
変電所のインフラから見た危機
富山地鉄は軌道線では、新しい変電所3ヶ所を設備しているが、本線、立山線ではすべての変電所が機器更新を迎え、現にその時期が過ぎており、だましだまし使っている感がある。
軌道線の新しい変電所 3ヶ所
782. 富山地方鉄道 軌道線 南富山変電所と軌道線・鉄道線 異電圧接続 直直デッドセクション 6.6kV受電
1047. 富山地方鉄道 軌道線 千歳変電所 移転と旧富山ライトレールとの接続6.6kV受電
富山ライトレール 奥田変電所 6.6kV受電
軌道・鉄道線は古いまま。しかし国鉄だったので設備更新がされている。
898. 富山ライトレール 城川原変電所 6.6kV
これに対して鉄道線の変電所の更新は行われていない。軌道に厚く、鉄道に薄い対応となる
立山線
317. 富山地方鉄道 立山線 小見変電所(直流) 6.6kV受電 有峰口駅 変圧器が水銀整流器用(イグナトロン)を流用 イグナトロン用変圧器は1,500Vで1,100kWが最大なので シリコン整流器1,000kW×1台 岩峅持と立山駅の中間部にある
立山線・不二越・上滝線 分岐
517. 富山地方鉄道 岩峅寺変電所(直流) 6.6kV受電 岩峅寺駅 シリコン整流器用変圧器 シリコン整流器 1,500kW×1台
本線・不二越・上滝線 分岐
523. 富山地方鉄道 稲荷町変電所(直流) 22kV受電 稲荷町駅
896. 富山地方鉄道 稲荷町変電所(再訪) シリコン整流器用変圧器 シリコン整流器1,000kW×2台
本線・立山線 分岐
318. 富山地方鉄道 立山線・宇奈月線分岐 寺田変電所(直流) 多分22kV受電 寺田駅
518. 富山地方鉄道 寺田変電所再訪(直流) シリコン整流器用変圧器 シリコン整流器1,000kW×2台
本線
522. 富山地方鉄道 西滑川変電所(直流) 6.6kV受電 西滑川駅 シリコン整流器用変圧器 シリコン整流器1,000kW×1
521. 富山地方鉄道 魚津変電所(直流) 6.6kV受電 魚津駅 シリコン整流器用変圧器 シリコン整流器1,000kW×1
520. 富山地方鉄道 長屋変電所(直流) 11kV受電 長屋駅 シリコン整流器用変圧器 シリコン整流器1,000kW×1
519. 富山地方鉄道 内山変電所(直流) 6.6kV受電 内山駅 多分シリコン整流器用変圧器 シリコン整流器750kW×1
この中で一番老朽化の度合いが大きいのが有峰口駅にある小見変電所 過去の水銀整流器時代の変圧器相間リアクトル付二重星型結線をシリコン整流器用に転用しており、そろそろ更新しないといけない代物を使っている。
これと同様に水銀整流器時代の変圧器を使っている変電所がある。
944. 弘南鉄道 平賀変電所(直流) 弘南線 こちらは鉄道統計でまだ水銀整流器を使用
変電所 1ヶ所更新する費用として規模にもよるが銚子電鉄規模で約2億。この間 銚子電鉄が変電所をやっと更新している。
1337. 銚子電鉄 笠上黒生変電所 変成設備交換(シリコン整流器容量として300kW→500kW)
立山線の岩峅寺駅⇔立山駅間は約14㎞その中間点約7㎞のところに小見変電所がある。場所的にはき電距離の半分の位置に変電所があり、妥当な位置となる。岩峅寺の変電所を更新して小見変電所を廃止することは、き電距離から言って末端の立山駅での電圧降下を考えるとできない。岩峅寺変電所のシリコン整流器は1,500kWしかなく、これで不二越・大滝線及び立山線を賄っている現状で小見変電所は立山線を運行するため必須な変電所であると考えられる。
立山線の存続のためには小見変電所の設備更新が必須となり、費用は2億以上となることが想定できる。(銚子電鉄では500kW 600Vで約2億 1,000kWでは2倍は確実)
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水銀整流器時代の整流用変圧器 イグナトロン整流用変圧器の転用 |
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老朽化した整流用変圧器 |
大昔には、大阪、京都から立山駅まで直通の電車が運行していたが、その面影は今の立山線には無い。
実際に年2回 立山線を利用している身としては、立山線は廃止されては困る。 室堂からのアルペンルートバスは美女平が終点となり、ケーブルカーに乗り継いで立山駅に降り立つ。
立山駅には大きな駐車場があり、自家用車等 車で来る人は多い。しかし鉄道を利用する乗客も多い。
室堂発 8:00 始発のバスでもバス1台もしくは2台が満席になる。約50名×2として立山駅で立山線に乗車する人数は見たところ始発バスの乗客として50名は居る。これは、ほとんど個人客で団体は居ない。
室堂発のバスは始発8:00から終発17:00間に8本出発している。また多客時にはバスが連なって乗客を運んでいる。もちろんこの中には、立山駅で観光バス(団体バス)に乗車する乗客もいる。
ベースとしては始発ベースで2台50名として8本で約400人以上/日は立山線を利用していることになる。
ただ利用期間としては4月~11月の8ヶ月間に限定される。アルペンルート閉鎖期間があるので多客時は5月連休前後、7月~10月の観光シーズンが該当する。そのため乗客が多いのは約5ヶ月間となる。その5ヶ月間の売り上げで1年分の経費を賄えるかは無理であろう。
例 多客時の日帰り往復乗車券の発売 以下引用
富山県側の当日券(日帰り往復券)発売予定枚数(8/4現在)
富山県側(電鉄富山駅・立山駅)で販売するアルペンルート当日券(日帰り往復券)の発売予定枚数は、下記の通りとなりますので、予めご了承くださいますようお願い申し上げます。
立山駅発早朝便(~7時台) | 立山駅発午前便(8~11時台) | 立山駅発午後便(12時以降) | |
8/8(金) | 160 枚 | 450 枚 | 150 枚 |
8/9(土) | 180 枚 | 810 枚 | 290 枚 |
8/10(日) | 190 枚 | 610 枚 | 290 枚 |
8/11(月) | 200 枚 | 520 枚 | 260 枚 |
8/12(火) | 200 枚 | 670 枚 | 230 枚 |
8/13(水) | 200 枚 | 710 枚 | 240 枚 |
8/14(木) | 200 枚 | 740 枚 | 180 枚 |
引用終わり
多客時は、富山駅から室堂ターミナルまでの直通バスもあるが本数が少ない。しかし乗換なしで座って室堂ターミナル又は、その逆ができるのは魅力がある。 2025年は運行中止
バス – 夏山バスのご案内(室堂線) 2025年度は運行いたしません。 富山地鉄リリース
利便性から言ったら富山駅⇔室堂ターミナル 直行バスになびく。しかし 杉山氏の記事にもあるように運転手の確保が喫緊の課題となる。
立山黒部貫光のバスが室堂⇔美女平間を運行しているので、そのうち数本を富山直行又はその逆 室堂直行便とすれば、ある程度の人数は捌けると推測する。
立山黒部貫光も手をこまぬいているわけではない。
以下引用
1.「トレインエコきっぷ」とは?
富山地方鉄道の区間ご利用で特定の利用期間、取り扱い区間および乗車時刻を対象とした、数量限定の大変便利なきっぷです。
point.1 立山駅まで電車利用のため、駐車場の混雑心配不要!
point.2 電車利用のため、環境にも優しい
point.3 地方鉄道に乗って地域交通を活性化
また、購入者特典として、アルペンルート内でのご飲食並びにお土産商品を5%割引でご購入いただけます。
※対象施設にてきっぷをご提示のうえご利用ください。
WEBきっぷ 限定商品「トレインエコきっぷ」をこの機会に是非ご利用ください!
2.販売期間、利用期間およびご予約いただける乗車時刻
販売期間:9月1日(月)午前10時00分 ~ 10月5日(日)午後3時00分
利用期間:10月10日(金) ~ 10月12日(日)
ただ焼け石に水の感はある。紅葉の時期にたった3日では少ない