久喜変電所は、電力貯蔵装置設置以前(2014年)に記事にした。
2014年12月1日
176. JR東日本 久喜変電所(直流)とその周辺 ブログリンク
その後 2016年に電力貯蔵装置が設備されている。それから5年経過して事件が起こった。
1014. JR東日本 久喜変電所(直流) 架線柱内コルゲートチューブ発煙 東北本線 ブログリンク
間々田SSー9.6㎞ー栗橋SSー11.3㎞ー久喜SSー8㎞ー蓮田SS 10㎞ルール適用
その後 電車本数が増加、ラッシュピーク時の電圧降下対策で久喜・蓮田間に白岡SSが新設された。
間々田SSー9.6㎞ー栗橋SSー11.3㎞ー久喜SSー5.5㎞ー白岡ー3.3㎞ー蓮田SS
と白岡SSが割り入れられた。
久喜SSにニッケル水素電池の電力貯蔵装置が設備されたのは、青梅線古里変電所での実証試験結果や拝島、桶川におけるリチウムイオン電池運用の比較のためと思われる。
電力貯蔵装置導入の目的は、回生電力の有効利用として回生絞り込み、失効を防ぎ電力の有効利用を図るためにある。朝、夕のラッシュ時間帯と昼間の閑散期時間帯での列車本数、乗車率の差が大きい場所が選ばれている。具体的には
1. 100%回生車両が導入されている。
2. 列車運転間隔が概ね5分から十数分以上(運転密度が低く回生電力が有効に使われない線区)
3. 回生失行や絞り込みが発生しやすい駅手前や下り勾配を含む区間
等
ニッケル水素電池の電力貯蔵装置の
利点
架線電圧に直結でき、変換装置がいらない
変換装置から発生する高調波が出ない
欠点
電池の充放電は、き電母線電圧と電池端子電圧との電位差により、一意的に充放電が行われる。受電電圧の変動により不要な充放電が発生し、損失増大の可能性がある。
久喜SSが選ばれた理由は
間々田SS 駅近傍だが設置する場所がない
栗橋SS 駅と駅の中間に位置する
白岡SS 駅近傍だが設置する場所がない
蓮田SS 設置する場所がない
久喜SS 旧国鉄宿舎の跡地が残っている。駅近傍に変電所がある。
川崎重工業Webから
ニッケル水素電池の電力貯蔵装置導入後(後述)の奥建屋と比較すると 建屋ハシゴ下のケーブルがない。 |
この画像は2014年当時
導入前 変成設備は2組 |
直列リアクトル部 |
中央上の長方形キュービクル2組が電力貯蔵設備 その下 既設高配変圧器、2組の変成設備 受電は元からGIS化 直列リアクトルは、変化無し |
ニッケル水素電池の電力貯蔵装置 |
ニッケル水素電池の電力貯蔵装置 |
直列リアクトル左側89N-1側にニッケル水素電池の電力貯蔵装置からの負極が繋がる |
変電所内にニッケル水素電池の電力貯蔵装置からの き電線が入りSS内の母線と繋がる(ハシゴ横の細いケーブル) |
さて本題
架線柱内コルゲートチューブ発煙の原因 電力貯蔵装置は発災に大きく関与しない
発災前
ニッケル水素電池の電力貯蔵装置設備後も帰線は同じ状態であった。
電力貯蔵装置が導入前の状態 左プラスチックパイプ部 正極き電線が十分太いのに 帰線が東武鉄道を架線柱コルゲート管1本で跨いでいる 最大で4条分の帰線が入るはず。 帰線電流と き電線電流は同じ量の電流が流れる ニッケル水素電池の電力貯蔵装置導入後も帰線部の改良(条数の増加)はされてなかった。 |
帰線立ち上がりのプラ管 |
この赤で囲んだ部分が帰線の通過部分 この部分のトラス中コルゲートチューブから発煙 |
発災 当日の気象状況 高湿度状態 何らかの要因で帰線電流が増えでコルゲートチューブ内の帰線が発熱されチューブ全体が発熱。チューブから白煙がでる。そもそも帰線に流れる電流値を考慮していない設計だったと判断する。白煙がでたのは、線路を跨いでいるコルゲートチューブ両端の開口部から。コルゲートチューブからは、発煙していない。コルゲートチューブ内帰線が蒸し焼き状態になった。
発災後の改良 帰線の条数を変更 発熱対応
帰線部分の改良 |
左ハンドホール内レタン(帰線集約部)から2系統で帰線が引き出される 前は、1系統のチューブに集約されていた レタンとはリターン=RETURNのこと |
帰線立ち上がり部 下り線は3条上り線は4条 |
架線柱トラス上に新しいコルゲートチューブ3本 トラス内に既存コルゲートチューブ1本 コルゲートチューブには最大2条の帰線が収容 |
別角度 トラス上に3本のコルゲートチューブ トラス内に既存のコルゲートチューブ交換済 合計4本のコルゲートチューブ |
上り線側 帰線引き下し 4条 新しいトラフで駅方へ伸びる |
上り方帰線 4条が引き下される |
軽量プラスチックトラフで駅方へ |
駅方 上り線 インピーダンスボンド 中性点に繋がる帰線4条 |
駅方 上り線 インピーダンスボンド 中性点に繋がる帰線4条 軽量プラスチックトラフに収容 |
インピーダンスボンド中性点に繋がる新しい帰線部分 |
発災前の電力貯蔵装置が設備さた状態で 上り線側赤丸内にあったインピーダンスボンドに帰線は繋がっていない もし繋がっていれば軽量プラスチックトラフに収容された帰線が白の線で見られる 白い線が見られるのは別のトラフ |
下り方帰線3条引き下し |
下り方帰線用インピーダンスボンド中性点に帰線が繋がる 軽量プラスチックトラフに収容された赤字 帰線(電力)の表示は 初めて見る表示 |
参考資料
導入前
鳥塚 正行ら;大容量ニッケル水素電池(ギガセル)を用いた鉄道システム用地上蓄電設備:鉄道と電気技術:Vol.22,No.4,pp.14-20,2011
渡邊 公一ら;JR東日本における電力貯蔵装置適用の現状:JREA,Vol.56,No.9,pp.37997-38000,2013
日野 政已ら;JR東日本における電力貯蔵装置を活用した回生電力有効利用の取り組み:JREA,Vol.58,No.9,pp.39770-39773,2015
導入後
飯野 友記;JR東日本における車両回生電力有効利用に向けた取組み:鉄道と電気技術,Vol.28,No.1,pp.13-17,2017