大磯き電区分所
アプローチ:大磯駅 容易だが歩く
区分:鴨宮変電所・平塚変電所
特徴:東海道新幹線の開業前の試験線区に電力を供給していた変電所があった場所
東海道新幹線の試験線区が、開業前に東京起点約41.4kmの高座渋谷付近から小田原付近74.5kmの約30kmに設けられて実試験を行なっていた。
実験用の車両基地と保線基地としては、現鴨宮にある保線基地が該当する。この線区に給電するため、その当時大船⇔二宮間のJR自営送電線66kV 50Hzから大磯付近でT分岐され30mの接続送電線で、大磯に設けられた周波数変換機(その当時のことだから回転形・九州電力から供与)15MVAで変換され25kV 60Hzに変換され試験線区に供給されていた。
当時の資料からは大磯仮設変電所とか生沢変電所とかの名称が付いていたが、現地の新幹線の地点表示名を見ると生沢変電所が正解のようだ。周波数変換機は、屋外施設であり変電設備として一次側7,400kVA変圧器3台、き電用変圧器7,400kVA1台で試験線区全線に供給を上下別BTき電方式で供給を行なった。
そのため上下線の渡り線には、特殊なデッドセクションが設けられ上下線の位相差を乗り越えている。
試験線区の変電設備としては、き電区分所として下和田、相模川、生沢、鴨宮が上げられている。この中で相模川は平塚変電所。生沢は、大磯き電区分所。鴨宮は鴨宮変電所として現在運用されている。下和田は、撤去された。
当時のき電区分所の機能としては、現在でも使用している中セクションを用いた切替方式が取り入れられている。BTき電だったので吸上変圧器が上下線に240kVA×22台・設置間隔3kmで設置された。エアージョイント(エアーセクションがこう呼ばれた)は1.5Km間隔で、その半数は吸上変圧器部に設置されていた。吸上変圧器の部分は、エアーセクションで分離されていたが、新幹線自体の電力量が大きいためスパークを発生し、トロリ線の磨耗が激しかった。そのため早急に改良が求められセクション間に抵抗(10オーム)を挿入することから始め、最終的には2セクション間の両端に抵抗を挿入する、2S捻り方式でこの難局を乗り切った。
それでもスパークは発生しており、EMC防御の点で、またまだ改良が必要であった。その当時の話として、新幹線と並走する高速道路上のタクシーのメーターがスパークから発するノイズを拾い、急なカウントアップが発生した事例があったそうだ。
東海道新幹線は、BTき電で開業され運用されていたが、その後、東京・大崎変電所間で、同軸き電方式に変更され、最終的には、全線がATき電化されて今日に至っている。ATき電化により上下線別き電方式から方面別き電方式に変更になり、高集電効率のパンタグラフの採用、車両間の高圧線引き通し線の採用により、パンタグラフの数を減らすことができ、その結果 高速化を行うことができるようになった。
営業運転しながらの、AT化は、大動脈だったので細心の注意をもって行われた。東海道新幹線は、当初はBTき電で開業されたため約20km間隔で変電所が設けられ、77kV受電で運用された。JR東日本のように、バックボーンに強力な電源系を持つ154kVや254kVの受電が行うことができなかった。そのためATき電であるが、変電所間隔が約20kmとなっている。特に富士川以北は、50Hz供給地区であったので、開業当時に西相模と綱島に50Hzから60Hzの周波数変換変電所を設け154kV受電で周波数変換を行い77kV60Hzで50Hz地区に設置された き電用変電所に送電を行っている。最近この周波数変換変電所に置かれた回転形周波数変換機が高効率の静止形周波数変換機に各1台分ずつ置き換わる設置計画が発表された。この項は別項で起こす予定である。
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生沢変電所の距離版63k084m地点 |
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ここも東海旅客鉄道株式会社はテープで隠されている |
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き電線接続部 |
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建屋屋上のき電設備 左 大正方形はSN接続CR装置
計器用変流器の下にあるのはGP装置 |
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右 計器用変流器8台分 上下 (トロリ線T×2 ATき電線F×2)×2
金網で囲まれた部分SN引き出しブッシング 切替開閉器は建屋内 |
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交換用計器用変流器8台分 |
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左より 下り線 11T 11F 13T 13F
上り線 12T 12F 14T 14F |
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負荷断路器 上下タイき電用 |
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AT用放熱器 4台 AT本体は建屋内 |
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切り離し断路器付避雷器 |
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GPSアンテナ 信号同期用 |
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電柱に区分表示 赤のライン |
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SN 中セクション接続部 上り線 |
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SN 中セクション接続部 下り線 |
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アークjホーン付ポリマ碍子 |
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区分標識 |
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トロリ線T接続部 下り線 |
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トロリ線T接続部 上り線 |
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トンネル内電話通信アンテナ |
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かつてのJR送電線 大船・二宮線 |
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かつてのJR送電線 大船・二宮線 現在は東電の所有
この鉄塔の66kV50Hz送電線が試験区の周波数変換変電所(生沢変電所)に繋がっていた。 |
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引用 |
参考文献
鉄道総研の技術遺産 周波数変換装置(1)RRR、2015、Vol.72.No.1 兎束哲夫