E257系2500番台NC-32編成は、回生失効の夢を見るか
修善寺にE257系が試運転(誘導障害等の確認を含む)で初めて入線したので現調
原木変電所については「異聞」での記載だったので詳細現調した。
駿豆線の変電所については、過去に以下の記事をUpしている。
607. 伊豆箱根鉄道 三島変電所 駿豆線 ブログリンク
606. 伊豆箱根鉄道 横山変電所 駿豆線 ブログリンク
608. 伊豆箱根鉄道 大仁変電所 駿豆線と超電導き電線試験設備跡 ブログリンク
さらに駿豆線の変電所設備については、鉄道統計年報[平成29年度]国土交通省
(15)変電所設備表に鉄道各社の設備内容の統計集計内容がExcelでUpされている。(15)変電所設備表 Excel版 クリックするとダウンロードされる
作成者 国土交通省 江村 泰成 2020年4月24日作成版
ちなみに、弘南鉄道 水銀整流器 六甲山観光 回転変流器の記載がある。
平成29年(2017)が最新のデータとなるが駿豆線は以下の設備を持つ。
変成用シリコン整流器 6,500kW 変電所3カ所
では、この6,500kwの各変電所への割り振りはどのようになっていたかは消去法で以下の通り
大仁変電所(6.6kV受電)1,500kW 銘板で確認
横山変電所(66kV受電)3,000kW 銘板で確認 2017年当時は横山変電所健在
必然的に
三島変電所(6.6kV受電)は、6,500-4,500=2,000で2,000kWとなる。
この中で横山変電所は、伊豆箱根鉄道の安全報告書によると設備老朽化と66kV受電解消による安全への取り組みで、原木に新しい変電所を設けて横山変電所は、廃止とされる。との記載がある。
伊豆箱根鉄道 2019年 安全報告書 削除されている。鉄道各社は安全報告書については過去分もUpしているのが通例であるが、伊豆箱根鉄道では、鉄道部分のものだけ過去分が参照できない。
伊豆箱根鉄道 安全報告書 2019で画像検索するとTiwitter記事に当該ページをみることができる。
以下引用
2.設備対策
(1)横山変電所の更新
電車を動かすために中略変電所の更新工事を実施中略老朽化した横山変電所(伊豆長岡駅-田京駅間)を廃止し、原木変電所(原木駅構内)を新設中略安定輸送が確保されるとともに高圧機器の露出がなくなる中略保守作業員の作業上の安全性が向上中略
引用終わり
特別高圧受電(66kV)→高圧受電(6.6kV)にすることで、設備点検、定期検査が簡略化され、また特別高圧充電部が無くなることでの安全管理のレベルを下げることが可能となる。
2019年3月ごろからネット上で、東京→修善寺間を走行する修善寺号(185系)老朽化のため別の車両に変更される。そのため原木に回生車両対応の設備が設けられている。との情報が散見されるようになった。
当ブログでは、他者がUpして頂いた現場画像の内容を確認し、回生車両対応の設備ではなく、単なる変電所の移設であると判断して以下の記事を「異聞」としてUpした。この時、現調はしていない。2019/8
902. 伊豆箱根鉄道 原木変電所新設 異聞 ブログリンク
今回E257が初めて駿豆線に入線したのをTriggerとして懸案だった原木変電所を含む駿豆線変電所の再訪を行い、回生失効についての考察を行った。
まず初めに、E257系 修禅寺駅留置状態。
E257系 入線 |
パンタがショボい(ボロボロ) |
床下機器 VVVF 三菱製 |
床下機器 VVVF 三菱製 |
床下機器 SIV用断流器 |
SIV 東洋電機製 |
補助整流装置 トーヨーコーポレーシィン |
長野電鉄においては、山岳路線部分に回生対応車を導入するに当たり、回生電力吸収装置を中野変電所に設備して山岳路線の下り対応(回生失効対策)を行っている。
15. 長野電鉄 中野変電所 Compleat ブログリンク
長野電鉄 2011鉄道安全報告書 pdf 注意 この文書中の回生吸収が出ている
駿豆線において、線路の高度差を調べてみると約20m~40m(修善寺)の高低差であった。大仁から山の中に入るので、高低差があると勘違いしていた。狩野川流域なので大仁辺りまでは高低差がない。
回生車が投入されている伊豆急の路線(伊東-川奈-伊豆高原-熱川)で調べてみると伊豆急の方が高度差がある。伊東8m 川奈140m 伊豆高原60m 熱川30mと駿豆線より高低差がある。しかしE257系も、E261系も問題なく走行している。また取り立てて回生対応の変電設備を導入した形跡もない。これから類推すると駿豆線では、高低差による回生失効は問題にならない程度と判断できる。
もっとも大きな高低差がある会津鉄道、野岩鉄道に入線している500系リバティはバリバリのVVVF車であるが、変電所につては、回生失効の設備は無い。(今後Up予定)
最近のVVVF車については、回生失効に対して対策(回生・発電ブレンディングブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ)が取られているようだ。
(識者情報求む)
今回の現調の結果
三島変電所 過去に調査したままの設備構成 変化無し
原木変電所 新設 今回調査(見立て通り、ただの直流変電所)
994. 伊豆箱根鉄道 原木変電所(直流) 駿豆線 ブログリンク
大仁変電所 過去に調査したままの設備構成 変化無し
は通常の直流き電用の変電所である。
また、横山変電所跡に回生対応設備が置けるので現調したが、ただの空き地になっていた。
横山変電所近影
横山変電所跡 |
横山変電所跡 |
横山変電所跡 き電線引き出し部 断路器で対応 き電線は510㎟×2条 約1,800A対応 |
右 次変電所 三島変電所 左 次変電所 大仁変電所 横山変電所を運用していた時のき電線引き出し部 真ん中 2本2条は、帰線 |
横山変電所跡 大仁方 き電線 |
大仁変電所方は、丘陵地帯にはいるのでき電線の条数を増やしている 横山変電所を運用していた時のき電線引き出し部 変化無し |
横山変電所 原木方 き電線 |
横山変電所跡の変電所直下のセクション エアーセクションがあるが電車線区分標は無い |
変電所手前のセクション 伊豆箱根鉄道唯一のエアーセクション 変電所区分 横山変電所を運用していた時のエアーセクション部 |
よって現時点で駿豆線には、回生対応の変電設備は存在しない。
では、今回の原木変電所はE257系 導入のために設備増強されてたのか?
答えは「否」である。安全報告書に書かれているように老朽対応と安全対策が主である。
たまたまタイミングがあったと思われる。以下に理由を述べる。
さて、前述で各変電所の変成用シリコン整流器の容量を確定したが、今回の横山変電所廃止、原木変電所新設でどのように容量が変化したかを調べてみた。
大仁変電所(6.6kV受電) 1,500kW 銘板で確認
原木変電所(6.6kV受電) 2,000kW 銘板で確認
三島変電所(6.6kV受電) 2,000kW 平成29年の統計から推定
合計5,500kWとなり1,000kWほど減少している。
横山変電所 廃止・3,000kW→原木変電所 新設・2,000kWと1,000kW分減少
つまり、設備増強は、されていない。省電力型の車両が増えている中 設備を減縮して適切な容量に落としている。但し設備更新はされている。 回生した場合の電力を、き電線の断面積を増やして、遠くの変電所まで流す工夫は、為されているように思う。但し今回のE257系での回生対応の状況については、不明である。(回生を切るか、速度で規定するか)
VVVF型車両の導入におけるネックは、通常運転時のインバーター・コンバータから発生する高調波による誘導障害、回生ブレーキ、発電ブレーキ動作時の高調波や駿豆線の変電所には直列リアクトル、電力濾波器がないのでに伴う変電所から発する高調波の誘導障害を含めた複合的内容が精査されるべき問題であると思う。
原木変電所には、高調波が抑制できるよう二重ブリッジ整流回路が取り入れられている
山岳路線でもない限り、回生対応(失効)はVVVF側の駆動プログラムでの対応が、今後取られていくだろう。 つまり駿豆線 入線のE257系は、回生失効の夢を見ないのである。
駿豆線 変電所の位置
三島変電所への給電
未調査
原木変電所への給電
TEPCO大仁線 受電 TEPCO韮山変電所(配電用)からの6.6kV専用配電線、一般需要家とは分離
旧横山変電所への給電
TEPCO大仁線分岐 TEPCO長岡変電所(配電用)への分岐(長岡線)から受電、66kV受電であった。
大仁変電所への給電
TEPCO大仁変電所からの6.6kV専用配電線、一般需要家とは分離
原木変電所の絶妙な位置
大仁変電所⇔旧横山変電所⇔三島変電所間の、旧横山変電所位置は供給範囲が歪(大仁変電所寄り)だった。三島⇔大仁変電所間の大体の中間地点が原木駅に該当。またちょうど、この部分にTEPCO韮山変電所(配電用)がある。 韮山、伊豆長岡駅には、空地(市街地該当)がないが、原木駅構内に空地(側線撤去跡)があるので選択された模様。変電所新設の場合 電磁波公害、騒音等で中々場所の選択と住人説明が大変であるが変電所付近に人家はない。
おまけ
大仁駅 謎のプレハブ設備
電気区大仁詰所と読める 安全報告書内に電気区の記載があった |
三島駅 東海道本線分岐駿豆線分岐 オイル塗布 |
三島駅 東海道本線分岐駿豆線分岐 オイル塗布 |
三島駅 東海道本線分岐駿豆線分岐 オイル塗布 |
三島駅 東海道本線分岐駿豆線分岐 オイル塗布 |
三島駅 東海道本線分岐駿豆線分岐 オイル塗布 |
参考文献
Wikipedia 回生ブレーキ、E257系