2026年7月8日

1581. 300万PV雑感 ―このカウンターを回しているのは誰か―

1. 到達の事実

当ブログの累計閲覧数が300万PVに到達した。2014年1月からの統計グラフを掲げる

100万PV到達まで: 約8年4ヶ月 2022年4月17日


250万PV達成まで:約1年 2026年2月2日

 しかし、これは偽りなのである。250万PV達成の後、Google Analysis4でその内容を分析してUpした。


300万PV達成まで:約5ヵ月 2026年7月8日 
2月時点のでは12月くらいが達成予定であった。


 今回の300万PVは、このようなスパイクは観察されず弛まなくPV数が上がっている。特にひどくなったのが6月23日から 約1万PV/dayを越えるアクセスがあるがGoogle Bloggerを使っているのでびくともしていない。

 記事数は約1,580件。変電・饋電・通信という、およそ一般受けしない分野の記事を13年近く積み上げてきた結果である。区切りの数字ではあるが、本稿は祝賀記事ではない。この300万という数字が「何を数えたものか」を、手元のデータで冷静に解体してみたい。結論を先に述べれば、直近のカウンターを回しているのはほぼ人間ではない。

2. 直近の異常な伸び

 グラフの右端を見れば一目瞭然だが、2026年6月中旬から閲覧数が垂直に立ち上がり、月間閲覧数は過去最高を大きく更新した。日次では1万〜1.5万PVという、当ブログの規模からすればあり得ない水準が続いている。

 アクセス元を精査すると、この急増分の大半はシンガポールおよび香港のデータセンター帯域からのアクセスであった。特徴的なのは、単純なHTTPリクエストではなくJavaScriptを実行するタイプ、いわゆるheadlessブラウザによるスクレイピングと見られる挙動である点だ。

 GA4はJavaScript実行を計測の前提とするため、旧来の単純クローラーはGA4に現れないが、この種のスクレイパーは(フィルタをすり抜ければ)GA4上にも足跡を残す。Bloggerの閲覧数カウンターに至っては、人間と機械を区別する機能をそもそも持たない。

3. 簡単な算数

 当ブログの記事数を約1,580件とすると、あるクローラーが全記事を一巡すれば約1,580PVが計上される。日次1〜1.5万PVという数字は、全サイト巡回に換算して1日あたり6〜10周分に相当する。複数の巡回主体が並行して動いていると考えれば、特段不思議な数字ではない。

 一方、GA4のデータから推定される人間の読者は1日70〜90人程度である。分布には明瞭な特徴があり、平日・業務時間帯・オフィス街への集中が見られる。休日は何故か純人間のPVが減るのである。つまり当ブログの人間の読者は、検索で偶然流れ着いた一見客ではなく、業務上の必要から参照しに来る実務者が主体と推定される。この構図は以前から一貫している。

 両者を比べれば、直近のカウンターの動きに占める人間の寄与は1%前後ということになる。300万PVの「最後の数十万」は、率直に言って機械が積んだ数字である。

4. 折しも「ブログ崩壊」が報じられた日に

 奇しくも300万到達の直前、2026年7月6日にGIGAZINEが「かつて成功したブログ100個のうち約半数はGoogleのAI導入などで検索トラフィックの85%以上を失った」という記事を掲載した。Daniel Stanica氏が2022年から追跡した、商業ブログ100件の調査である。中央値で検索トラフィック85%減、20件は99%以上減、12件はオーガニック検索流入がゼロになったという。

 崩壊したブログの共通点として挙げられているのは、「〜する方法」「〜とは何か」型の検索ワードに依存し、書き手固有の実体験を欠き、AIが要約しやすいコンテンツだったという点である。Google検索のAI概要(AI Overviews)が検索結果画面上で回答を完結させてしまえば、読者はリンクをクリックしない。要約で代替可能なコンテンツから順に、人間の訪問が消えていく。

 すると当ブログのグラフは一見、世間の潮流に逆行しているように見える。ブログ崩壊の時代に閲覧数が暴騰し300万に達する――だがこれは矛盾でも何でもない。測っているものが違うだけである。崩壊しているのは「人間の検索流入」であり、当ブログで暴騰しているのは「機械のリクエスト数」である。両者は別のレイヤーの現象であり、同時に成立する。

5. それでも当ブログが「崩壊しにくい側」にいる理由

 では機械の数字を除いた本体、すなわち1日70〜90人の人間の読者はどうか。ここは希望的観測を排して構造だけを述べる。

 第一に、内容が要約で代替できない。スコット結線変圧器の相構成、切替セクション長の算定、き電設備の解説といった内容は、AI概要が3行にまとめて「解決」する類の疑問ではない。読む側は図面・数式・出典そのものの確認を要する。

 第二に、読者が検索依存の一見客ではない。前述の通り、平日・業務時間帯・オフィス街集中という参照パターンは、AI概要の登場如何にかかわらず「必要だから来る」層である。

 第三に、代替供給源が乏しい。レシピや子育て情報と異なり、饋電系統の実務レベルの日本語一次情報は、ネット上の供給源自体が極端に少ない。要約の元ネタが実質限られる分野では、深く知りたい者は結局原典に来るほかない。

 崩壊した100件のブログの死因となった特徴を、当ブログはほぼ持っていない。もっとも、これは「相対的に崩壊しにくい」という話であって無傷を意味しない。技術ブログでもピーク比7割減の実データを公表している例があり、当ブログの人間流入も長期的には漸減する可能性は否定できない。ここは今後もGA4の月次推移で監視していく。

6. スクレイパーは何をしに来ているのか

 正直に書けば、分からない。AIの学習コーパス収集かもしれないし、検索事業者のインデックス構築かもしれないし、SEO業者の巡回や単なる無差別クロールかもしれない。アクセスログから読み取れるのは「データセンターから、JavaScriptを実行しながら、全記事を高頻度で舐めている」という事実までであり、その意図は検証不能である。

 生成AI(Gemini)に本稿の状況を解釈させると、「貴ブログはAIの知性を支える特級の一次情報源として指名された」といった威勢のよい物語が返ってくる。心地よい解釈だが、根拠がない。記事数の多いサイトほど全周クロールでPVが嵩むという構造的な説明で足りる話に、選ばれし者の物語を持ち込む必要はない。データが語る以上のことを語らないのが、本ブログの流儀である。

7. むすび

 300万PVという数字は、人間の読者と機械のリクエストの混合物であり、直近の伸びに限れば後者が支配的である。カウンターの数字としての価値は、正直なところ大きくない。

 それでも13年間、1日70〜90人の実務者が参照し続けてくれているという事実のほうは、数字の桁こそ小さいが、確かな重みがある。閲覧数の暴騰と「ブログ崩壊」の報が同じ週に重なったのは皮肉な巡り合わせだが、当ブログは今後も従来通り、一次資料に基づく記事を淡々と積むのみである。

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