つくばエクスプレスまつり 2018
守谷基地開放 11/3
肝は、交流加圧設備と帰線自動開閉装置の見学
つくばエクスプレスの建設工事史を読むと守谷基地には、2箇所の交流加圧施設がある。1箇所目は、すでに以下の記事で説明した。しかし外部からの遠望のため詳細は判らない。もう一箇所は、基地内に入らないと判らない。
359. 首都圏新都市鉄道 TX 守谷変電所(直流)とその周辺(守谷車両基地) ブログリンク
同様な交流加圧ができるJR東日本の施設は3箇所 3設備が調査の結果判明している。
1. 大宮総合車両センター
1箇所 デッドセクションを備えた交流加圧設備
かつては、交流加圧の試験線が鉄博のところまで伸びていた。碍子の形状で判る。
80. JR東日本 大宮総合車両センター変電所(交流・直接き電) ブログリンク
450. JR東日本 大宮総合車両センター 交直デッドセクション 詳細 ブログリンク
2. 尾久車両センター
1箇所 単なる車庫内の交流加圧設備
3. 田端運転所
1箇所 北方の検修庫の両端にデッドセクションを設けた交流加圧設備
68. JR東日本 尾久車両センター・田端運転所(交流・直接き電) ブログリンク
今般 基地開放があるので、万感を排して見学に臨んだ。交流加圧施設に交直のデッドセクションはあるのか?車庫内の交流20kV加圧設備は、どのようなものがあるのか興味は尽きない
まずは、直流き電から
つくばEX 建設工事誌から引用 まだ、入出線は単線。しかし当初は複線で計画されていた。 断路器が設置されている2か所は、調査の結果 変わらず |
当初の計画 守谷駅から複線で入出庫 追い越しも可能な線形であった。 |
つくばEX 建設工事誌から引用し、つくばEXの報道発表をもとに改変 入出庫線が複線化(上下一括き電) |
守谷駅 改良された入替線 奥左に追越線分岐 |
改良された守谷駅 |
守谷変電所 き電線引き出し |
左より 柏方下り線F1、柏方上り線F2、小貝川下り線F3、小貝川上り線F4、基地方 基地線F5 この画像では、柏方1回線が写っていない Fはフィーダー線のF |
回送線と基地入出庫線の区分 この部分でエアーセクションを形成 |
回送線は、F5の基地線が基地内で分岐され折り返し 駅側に延びる 回送線のき電線のき電吊架線へのき電 車両基地に行く 基地線 F5は通過 |
守谷駅方 新設ルートは、駅への経路として上り勾配のため2条のき電線で繋がる |
左側のき電線は、 回送線用 2条で分岐(F5が基地内で分岐する) 隣は、守屋変電所からのF5基地き電線 |
基地⇔駅間の回送線のき電線は、次の架線柱に引き止められる。 この部分から駅へは、き電吊架線でき電 |
基地入口のエアーセクション 奥は基地側き電 手前は回送線側き電 |
基地からの回送線き電線が入出庫線1,2番線(入1~2)に繋がる 基地線き電線F5および回送線き電線は通過 |
工事誌の図を改変 基地入口の断路器構成 守谷変電所から送出された基地き電線F5は、この断路器群で2分割 回送線として守谷駅方をき電=回送 入替線 入出庫線1~3をき電 基地線として基地内をき電→次の断路器群へ |
基地入口の最初の断路器群 左からき電線 基地線F5 2条と回送線が送られる その下 は入替線入1~3 |
断路器部分を拡大 左から回送線用 真ん中 基地用 次断路器群に繋がる 右 入替線1~3用 左右に分離 |
回送線用 基地入口のエアーセクションから駅まで |
基地内留置線等 繋がる電車数が多いため2条 |
入替線用 基地入口のエアーセクションから基地内部の入替線まで入1~3 |
左より2条のき電線で断路器群にき電 |
工場と車庫をき電する断路器 |
左側からのき電線が 留置線用は後ろを通過 車庫用、工場用に分岐 |
留置線用断路器 |
留置線1~3断路器 |
帰線自動開閉装置
帰線自動開閉装置は、以下の記事で既に述べた。
222. JR東日本 大井町交流変電所(直流併用)とその周辺 ブログリンク
68. JR東日本 尾久車両センター・田端運転所(交流・直接き電) ブログリンク
一部記事抜粋
帰線自動開閉装置 レール(帰線)から修繕庫・交検庫等に電流が流れないようにし、かつ庫内の電流を レールに逃す装置であり、レール絶縁部を介して シリコン整流器とサージ吸収素子、電圧、電流計、短絡バーから構成される。 庫内の方が接地抵抗が低くなる場合 庫内からの漏れ電流を少なくする。 |
電車車庫付近では比較的大きな漏れ電流により埋設管の急激な電食や火花が発生することがある。この防止対策としては帰線自動開閉装置の適用が効果的で当所では、転削庫においては推定年間320kgの電食をほとんど解消し、また修繕庫ではクレーン使用時約250Aと推定された火花電流が16Aと大幅に減少した。
このような、大きな漏れ電流による異常電食や火花の防止対策として原則的にはレールと建屋その他との接触を切り離せばよい。電気設備の技術基準でも第269条でレールと建屋配管類の電気的接触を禁止している。しかし、実際には分離困難な場合があり、このため「但し車庫その他において金属製地中管路の電食防止のため帰線を開閉する装置を施す場合はこの限りでないとされている
レールが 工場群の設備に入る部分に設備 赤丸 |
構造体とレールが繋がると接地抵抗が低い方へ、帰線電流が流れる。構造体は、土台等鉄筋コンクリートが使用されており、地中梁もあることから接地抵抗が低い場合が多い。
シリコン整流器がレール絶縁箇所を挟んで並列に挿入されている。車庫内からの電流は、通過できるが、車庫内への電流を防ぐ装置。
またこの帰線自動開閉装置を使わない方策として、トロリ線にセクションを設け、またレールに絶縁箇所を設け、この両方を断路器で開閉することで、帰線電流の迷走を防ぐ装置も以前外部から見学したときに見つけている。
それでは、見て行こう
まずは、気吹き線(気-1) 自動ではない
気-1の帰線開閉装置(自動ではない) |
架線上部にセクション |
セクション直下にレール絶縁箇所 |
左 断路器は帰線用断路器 右はトロリ線用断路器(接地回路付き) 個別断路器 |
帰線用断路器 ディスコン棒(断路器手動開放用) この気-1は、帰線自動開閉装置が設備されていないので用手法で帰線側を切る |
インピーダンスボンドに繋がる帰線 |
インピーダンスボンド 中性点から帰線が頭上断路器(左側)に繋がる |
頭上断路器からの帰線が、直接レールに繋がる |
臨修線25番線用 双頭断路器 帰線、トロリ線 一括処理 |
転削台用 帰線自動開閉装置 双頭 29番線 |
変わった使い方 帰線自動開閉装置
授受線30番線に設けられた帰線専用自動開閉装置 左上の帰線自動開閉装置とインピーダンスボンドが組み |
インピーダンスボンド 中性点の帰線が帰線自動開閉装置に繋がる |
帰線自動開閉装置 |
左上が気-1の帰線開閉装置 右 工場に入出庫する際に、気吹線の一部を重複して使用するため設備されている |
交流加圧設備 2箇所 |
交流加圧設備の正式名称
整備線51番線が交流き電設備 左側
単相変圧器1,000kVAなので20,000Vで50Aの仕様 VCB(真空遮断器) 2P
月検線が電車線交直試験装置 右側
こちらは、わざわざ交直の文言 なにか違いがあるのか?
単相変圧器1,000kVAなので20,000Vで50Aの仕様 VCB(真空遮断器) 3P
TX-2000系 1編成3,040kW≒152A/20,000V AC≒2,027A/1,500V DCとなるので電車は
補助動力装置くらいしか動かせない。あくまで点検用の交流加圧
交流加圧設備のVCB 6.6KV側 真空遮断器の極数が違う
交流き電設備は、単なる交直切替でトロリ線加圧
電車線交直試験設備は、交直、直交を動的に切替トロリ線加圧か?
電車線交直試験装置 26番線 月検線に設備
交直き電設備 |
月検線 T トロリ線20kV N 中性線 AC 単相変圧器出力 |
N側は、多分形状から推測するとGP装置が繋がる |
地絡が発生した場合 N極側の電位が急激に上昇してしまうのを阻止する。 |
交流き電設備は、一般に接地マットが設置され、き電設備は、アース線が接地マットに接続されて接地されている。交流き電設備で、トロリー線やき電線等に地絡事故が発生すると、接地抵抗により接地マットの電位が上がり、接地マットに接続された制御回路や通信回路等の弱電回路が絶縁破壊される可能性がある。このような絶縁破壊事故を防止するため、、地絡保護用放電装置が設けられている。
月検庫であるので、検査時にいろいろな電子機器を使用する。そのため地絡事故が発生した場合
ダメージが非常に大きくなるので設備されている。また隣接する列検1,2も同一の建屋なので防護する必要がある。
26番線 月検庫 隣 列検1 27番線 月検庫は、AC,DC表示と電源の入り切り表示 |
月検庫に20㎸ AC加圧貫通ブッシング |
拡大 |
別角度 |
26番線 月検庫内部 架線は20㎸仕様 碍子3個 シャッター部で分離(この構成は、交流き電設備で解説) |
いよいよ近くまで寄れた交流き電設備 整備線51番線
電源種別 入り切り表示 |
交直加圧用き電線 DC1500V、AC20㎸ |
貫通ブッシング |
シャッター部の剛体架線部とセクション表示 |
下から見上げた状態 シャッターセクション 中心部に銅導体 |
シャッター内側 左側 シッター部 セクション表示 同様な受けがあり、FRP製セクションインシュレーター2本でデッドセクションを形成 DC1500VとAC20kVの区分を担当 実際は、AC加圧時は、シャッターは締まり剛体架線部は途絶した状態に置かれる。 入出庫の際はDC1500Vで運用 シャッターセクションはDC専用 |
架線セクション部は、3連碍子 2組で分離 その下に、FRP製セクションインシュレーターでデッドセクションを形成 |
セクション部の繋ぎ目 FRP製の絶縁体には、斜めの線を入れカーボンすり板を設けカーボン付着防止策を採る |
交流き電設備 AC 6.6㎸昇圧20㎸ 単相 |
整備線 T トロリ線き電 N 中性線(帰線部と繋がる) |
手前 交流6.6㎸ VCBが収まったキュービクル その後 6.6㎸ 昇圧20kV 単相変圧器 |
交直断路器 3頭、および双頭の交流断路器で構成 |
交直断路器 左から工場き電線DC1500VORAC20000Vが交流断路器を経て右側断路器へ |
直流導入 断路器 |
断路器 整-1 一番左 接地断路器 中間 帰線対応 断路器 レールの帰線をつなぎかえる 右 AC対DC断路器 AC20000VとDC1500Vの繋ぎ替え 3回路一括投入 |
断路器 整ー2 双頭断路器 一括投入 左 接地断路器 右 整備線断路器(車庫ブッシングに繋がる) |
整備線 断路器をパターンで入切を示す |
左 AC6.6㎸ キュービクル 右 AC 6.6㎸昇圧20㎸ 単相変圧器 |
キュービクルの名称 |
昇圧変圧器 T側に避雷器(LA)がつながる N側には、交直試験設備にあるようなGP装置は、付加されていない。 単なる整備運用のため |
交流き電設備 全景 左側 昇圧変圧器 右下 帰線自動開閉装置 |
線路上のデッドセクション |
絶縁された線路を挟んでデッドセクションを形成 中心部分は、無接続 |
25番線 臨修線の車庫 両端にシャッターセクション き電線でジャンパ |
25番線 臨修庫 守谷駅方 |
シャッターセクション DCき電線でジャンパ |
裏側 25番線 臨修線 |
シャッターセクション き電線でジャンパ |
屋上機器類の点検
屋上機器類 |
パンタとパンタをつなぐジャンパ線 AC20kV 耐圧 DC1500V大電流対応のため2条のケーブル |
奥 交流避雷器 交流主可溶器(交流高圧ヒューズ) 交直切替断路器、VCB(真空遮断器)、直流可溶器(直流ヒューズ)のセット |
空っぽの屋上装置 |
VCB(真空遮断器)と交直断路器 左下 直流可溶器(ヒューズ) |
ケースを外された電圧検知器(交直両用) |
パンタグラフ |
DCき電線 車積載用 |
直流き電線 |
総合指令所
この建物の3Fにある。
技術展示
変電所の仕事 力行 回生の仕組み |
PWN変換装置で回生電力をTEPCOに戻す 電力計も2種 消費と回生分 |
変電所の仕事 |
デッドセクションの解説 その前にFRPセクションが展示 |
鉄道用架線(電車線) : セクションインシュレータ 三和テッキ Web 引用
セクションの見本で置いてあったのは、単なるセクションインシュレーター |
改良型(トロリ線を楔で固定する) 改良型でないものは、右に出ているボルト2か所で留める なんとアークホーンが逆取り付け |
電車線設備 この部分にFRPのセクションがあれば納得するが デッドセクションのところでは、間違い 特に つくばEXは高速対応型のデッドセクションを新たに開発したのだから説明すべき装置 |
高速対応交直デッドセクション
高速対応型デッドセクション接続部 |
360. 首都圏新都市鉄道 TX 小貝川ATポスト(ATP)with 直流遊流阻止(交流・ATき電)デッドセクション ブログリンク
高速対応型 交交セクション
交交セクション入口 赤のライン |
高速対応セクション 交交セクション |
361. 首都圏新都市鉄道 TX みどりの変電所(交流・ATき電) ブログリンク 高速対応交交セクション
つくばEXトリビア
ここまで記事を読んで頂いた方は、気づかれたであろうか?賢明な読者の方なら気づくであろう
それは、電車線区分標の違いである
基地入り口のエアーセクション 赤 一本線 |
エアーセクション終了の青 一本線 |
本線上 下り 小貝川方 エアーセクション終了標識 青一本線 |
本線上 下り 小貝川方 エアーセクション開始標識 赤一本線 上部を通過すのは小貝川方F3下りき電線 |
守谷駅 基地方のセクション標識 赤二本線 |
JR等は、電車線区分標は、赤一本線でセクションもエアーセクションも同じであるが、つくばEXは、エアーセクションは、赤一本(青一本)、FRPセクションは、赤二本で表している。
また、直流変電所の整流器は、定電圧出力のPWN変換装置を用いているため、変電所間の横流が少なくなり、JRで用いているエアーセクションのセクションゾーン表示は、無い。
株式会社保安サプライ 鉄道標識カタログ pdf注意 参考になるデータあり
株式会社保安サプライ 鉄道標識からの部分引用 |
参考データ
つくばEX 変電所一覧 首都圏で見られる在来線のATき電線
362. 首都圏新都市鉄道 TX つくばATポスト(交流・ATき電) ブログリンク
361. 首都圏新都市鉄道 TX みどりの変電所(交流・ATき電) ブログリンク
360. 首都圏新都市鉄道 TX 小貝川ATポスト(ATP)with 直流遊流阻止(交流・ATき電)デッドセクション ブログリンク
359. 首都圏新都市鉄道 TX 守谷変電所(直流)とその周辺(守谷車両基地) ブログリンク
358. 首都圏新都市鉄道 TX 柏変電所(直流)ブログリンク
357. 首都圏新都市鉄道 TX おおたかの森変電所(直流) ブログリンク
356. 首都圏新都市鉄道 TX 南流山変電所(直流) ブログリンク
355. 首都圏新都市鉄道 TX 八潮変電所(直流)ブログリンク
354. 首都圏新都市鉄道 TX 六町変電所(直流) ブログリンク
133. 首都圏新都市鉄道 つくばエクスプレス 北千住変電所(直流)
353. 首都圏新都市鉄道 TX 浅草変電所(直流)ブログリンク
352. 首都圏新都市鉄道 TX 秋葉原変電所(直流) ブログリンク
参考文献
つくばエクスプレス(常磐新線)工事誌
鉄道建設・運輸施設整備支援機構鉄道建設本部東京支社/監修
大境 彰:電食防止用帰線自動開閉装置
防錆管理;1986,Vol.30,No.4,pp.109-114
横田倫一ら;つくばエクスプレスにおける高速用交直デッドセクション:鉄道電気テクニカルフォーラム論文集,18th,2005,pp.1-4