2022年11月4日

1258. 信州巡検19 JR東日本 北陸新幹線 長野車両基地変電所の現状

 長野車両基地変電所

 

アプローチ:豊野駅もしくは三才駅 容易 だが歩く
受電:中部電力 77㎸ 2回線受電 
   新北信吉田線(吉田変電所ー新北信変電所275㎸受電)5116 4回線のうち2回線 
   回線は増強されている。
明電時報 Vol.344,No.3,pp23-34から引用
新坂城変電所が77㎸吉田変電所経由受電となっているが間違い(
正しくは275kV信濃東信線から受電(実線付け加え)

き電:長野車両基地内単一き電 単一き電のため不等辺スコット結線変圧器と不平衡補償単相
   き電装置(SFC)が設備されている。 
結論 一部復旧状態(本線定時停電時の基地内き電のみ) 
   2019年水害から3年経過しているが完全復帰はしていない

 開業当時 強力な短絡容量をもった送電線(154,275㎸)が近傍に無かったため77㎸受電とし、長野オリンピックの多客を裁くためSFCが設備された。しかし その後の建設された新幹線基地 青森、函館の基地変電所では、66㎸受電であるがSFCは設備されず不等辺スコット結線変圧器とコンデンサ・リアクタンスの組み合わせが設備されている。さらに中電の送電線が強化された現在では、SFCは不要となっている可能性がある。

 北陸新幹線のき電方法は、方面別異相上下同相き電で上下タイき電を定位としている。長野基地内は、終夜き電を行うため、また側線が多くあるため単一き電で行われており、入出庫線には中セクションがおかれ、力行運転で入出庫が行われている。
 77㎸受電不能になった場合に備え、新坂城変電所からの受電を受け変電所内にATを設け基地内をき電する体制は整えられている。また新坂城変電所が落ちた場合(長野まで開通時点)は、この基地変電所から新軽井沢き電区分所まで救済き電ができる仕組みがあったが、現在 新長野変電所が設置されており救済き電は、行われない構成になっている。

長野車両基地変電所の通常時の形態



77㎸ 2回線受電 左 最終受電鉄構の右にあるのは電力線搬送装置のPD

左 基地引き込み回線より架空送電線の方が格段に太い 増強されている

最終引き込み鉄構の下に断路器、右に電力線搬送装置PD 左 遮断器

遮断器の次はオレンジキャップMOF(回線別)アルミパイプ母線化されて避雷器へ
避雷器へ向かう途中でブッシングが立ち上がっているので、
ここで高配用変圧器に分岐(ケーブル接続)している模様。 
高配へ向かう分岐 ケーブルブッシング立ち上がり

不等辺スコット結線変圧器 一次側77㎸ 二次側30㎸ 一次側右に変流器(CT)
二次側は不等辺スコット結線変圧器のためm,o,tの表示となる

m,o,tの表示


77㎸受電が落ちた場合 新坂城変電所から受電を受けるため上下線用に2台のATが設備されている。左 上り線12AT 右 下り線11AT

使用されてないキャパシタとリアクタンス・抵抗 2台 
 2012年5月のStreet viewにも写っている。新長野変電所ができる前(金沢延伸前)新坂上変電所が落ちた場合、この長野車両基地変電所から新軽井沢き電区分所まで延長き電を行うことが想定されていた。そのため末端にあたる、この場所に高周波共振防止用HMCR装置が設備されていた時のなごり。今は新長野変電所ができており、その必要はなくなったため縁切りされ放置している。キュービクル状の物が抵抗、その隣にコンデンサとリアクトル

 所内き電母線 m,o,t と左 き電遮断器室 tとmを使用 oはTとの間でコンデンサが入り、mとoの間でリアクトルが入るが通常の不等辺スコット結線変圧器の運用、但し長野車両基地変電所ではここに、不平衡補償単相き電装置(SFC)がつながっているはずだが調べると運用していなかった。


m,o,t母線から所内変圧器とm,t間計器用変圧器(VT)へ分岐


この部分でSFCへのケーブルヘッドと繋がる 赤の標識がその部分
左 変流器(CT)とその隣 負荷断路器 ⅿ,tのアルミパイプ母線 oは無い
右の建屋はき電遮断器室 2枚前の裏からの構図

長野車両基地 構内き電区分(推定) 
内容の推定に使ったのは
216. 東北・北海道巡検37 JR北海道 北海道新幹線 函館総合車両所変電所のき電系統図
 構内は単一き電だが事故時切り分けのため分割されている。ただ同相なのでセクションインシュレーターでき電区分を行っており、研削線、臨修線などは、断路器でトロリ線間のインシュレーター部分をを区分している。
配線略図の出典(「配線略図.net・https://www.haisenryakuzu.net/」)から引用改変



ここまでが通常の状態。以下からは水浸後の状態
上り線側 き電設備(一応構内き電を含めている)

右 き電遮断器室 46Tき電線は、つながっていない。鉄構碍子にまとめられている

ポリマ碍子のケーブルヘッド3本と赤色ゴムとう管1本 仮設設備
不等辺スコット結線変圧器はT座がトロリ線、M座が軌条につながる
当座1号系統だけを生かしているようだ。

従来からあるき電系の配線は、使われていない。丸められて碍子に固定されている
東京上り12F,12T,(新坂城変電所側)は手前の負荷断路器部(左)からの接続 
上りSNは、46Tと断路器を介して接続


部分拡大 長野車両基地線、46Tの配線はつながっていない
 46Tは、アルミパイプ母線から変流器を介して分岐している。さらに右隣り2本のき電線も変流器を介してアルミパイプ母線から引き出されている。車両基地内の電流を監視している

401~403き電線の引出 403は長野車両基地と表示あり


上り線側12F,12T(新坂城変電所側)負荷断路器からの配線は、下り側に伸びる 
断路器は閉路

上り線側12F,12T(新坂城変電所側)負荷断路器からの配線は、
下り側に伸びてポリマ碍子のケーブルヘッドにつながる

 東京上り12F,12T,(新坂城変電所側)SN部(上り)はここでケーブル化されて上り線方で線路脇に引き出される。左より、予備、F上り(12F)、T上り(12T)、上りセクション(SN)となる

運用されている側の表記(予備は除く)

先ほどのケーブル引き上げ部 こちらは 予備と上りセクション(SN)


先ほどのケーブル引き上げ部 こちらは 上りFと上りTとなる

裏側から見ると標識が見える セクション、予備


裏側から見ると標識が見える T,F

全体の構図
予備ケーブルヘッドの配線を追うと上りTに繋がっていた。(新新坂城変電所側・トロリ線)


上りセクションは、ここでブラケットを介してトロリ線につながる


上り方構内き電線45と上りセクション間のエア―セクション始まり
デッドセクションが見えるが離線関係で挿入されているのでパンタは触れない
入出庫線のき電が45Tなので45Tとした

新坂城変電所側 上り線に伸びるT,F 
この先に 新坂城変電所側Tと上りセクションのエア―セクションがある

下り線側き電設備


左から11F、11T下り新坂城変電所からSN 中セクション 45Tとも既存の配線はつながっていない。上り線側と同じ

 11F、11T下り新坂城変電所から 下りセクション(SN) 45Tは45入出区線と名前が変わるので中セクションの基地側は45Tに統一されていると判断。

 一番 左11Fはポリマ碍子ケーブルヘッドに直結 11Fはポリマ碍子ケーブルヘッドに直結されているが分岐して断路器につながる。さらに断路器からSNに繫がる。

 11Fが繋がる断路器の片方 ポリマ碍子ケーブルヘッドと共通部分にゴムとう管のケーブルヘッドが繋がっている。断路器の片方は下りSNにつながっているので、中セクション機能は殺されている。上り方のSNも46Tと断路器を介して繋がっているので基地内は新坂城変電所電源(延長き電)で加圧されている状態である。北陸新幹線のき電方法は、方面別異相上下同相き電で上下タイき電を定位としているので基地内は11T,12Tにつないでも同位相タイき電となる。ただし本線の定時停電時の夜間基地内き電は、必要なき電なので不等辺スコット結線変圧器からの単相き電を行っていると判断する。


45Tは、ゴムとう管ケーブルヘッドに直結されている


下り線側入庫線 下りT,N,セクションの3本のき電線

拡大 基地内トロリ線とSN部トロリ線のエア―セクション部
デッドセクションが見えるが離線距離を保つためパンタは触れない

下りセクション(SN)がトロリ線につながる

新坂城変電所11Tに繋がる線条変圧器 信号電源確保


昼間は運用されていない切替開閉器室 
 夜間のみ 入出庫がある場合下り線側を使用して入出庫(中セクション経由)
左建屋 下り側 切替開閉器室 予備を含めて2組 
入出庫線の力行運行のための中セクションを運用
11Tが新坂城変電所下り線のトロリ線につながる 
45Tが長野車両基地内 単一電源側 SNは中セクション


左建屋 上り切替開閉器室 予備を含めて2組 
入出庫線の力行運行のための中セクションを運用
12Tが新坂城変電所上り線のトロリ線につながる 
46Tが長野車両基地内 単一電源側 SNは中セクション

その他

構内き電 45Tと手前402き電、奥403き電を区分するセクションインシュレーター

運転事務室 配電 外部電源受電変圧器と配電盤




不等辺スコット結線変圧器説明


以下文献より転載
リアクトルとコンデンサがつながる部分が、O相

不平衡補償単相き電装置(SFC)

 短絡容量が小さい送電系統で受電する場合 単なる不等辺スコット結線変圧器とコンデンサ・リアクトルの構成では一次側三相の電圧変動を補償しきれなくなってしまう。そこで不等辺スコット結線変圧器のM座、T座に自励式電力変換装置を繋げ可変容量のリアクトル・コンデンサとして動作させ、有効電力をM座、T座間で融通しバランスを取る方法が開発された。
 この装置の発展形が変電所間、き電区分所間で電力を融通するRPCとなって全国の新幹線で使われている。

実際は 右半分が左とオーバーラップしている構成 全部がM座インバーターになっているが右がT座インバーターとなる。不親切な説明図

インバター仕様 4,500V 3,000A逆導通GTO素子 今となっては古い
        6多重3パルスPWM方式 出力波形を正弦波に近づけ高調波を低減
        交流側1,000V 直流側1,600V 直流コンデンサ0.2F 1群

インバーター用変圧器 4台 単相変圧器6台を二次側としインバーターユニットと並列接続
           一次側 21.21㎸ 二次側1,000V 定格容量4,000/733KVA×6



こちら図はインバーターにつながる直流コンデンサ及びt,o.mが明示
 T,M座がはっきり判る。実際の構成はo相を中心に下側を上側に折り込んだ構成


不平衡補償単相き電装置(SFC)は運用されていない。
設置年1998年  24年経過

インバーター室も水没しており、逆導通GTO素子は使い物にならない。いまさら逆導通GTO素子を使うSFCを再構成することは、考えられず廃止されるであろう。では不等辺スコット結線変圧器の補償はどうするか 現新青森、函館総合車両センターにあるコンデンサ・リアクトルで補償するか、77kV側の短絡容量が大きければ無しでの運用も考えられる。
不平衡補償単相き電装置(SFC)につながる部分 右にケーブルヘッド
 左建屋は遮断器室 その手前に見えているのはベース負荷用並列リアクトルと並列コンデンサ、SFC停止時 普通の不等辺スコット結線変圧器の補正に使用する

不平衡補償単相き電装置(SFC)につながる部分
き電母線 m,o,tからのケーブルがこの部分で立ち上がる
左 2つ t座、右 2つ m座 中心o どこにもつながらない
t,m座は断路器でさらに2つ(1号、2号バンク)に分割 右建屋は遮断器室
配線が外されているので運用はされていない。古い設備なので運用停止なのだろう。

ケーブルヘッドにつながる線は、外されている

SFCのインバター用変圧器につながる二重母線
右建屋は遮断器室 その手前に見えているのはSFC用並列リアクトルと並列コンデンサ
二重母線から負荷断路器を経てインバーター用変圧器につながる

インバーター用変圧器

インバーター用変圧器は4台(1号、2号系)


二重母線と右 インバター用変圧器 負荷断路器は、すべて開路

二重母線と右 インバター用変圧器 負荷断路器は、すべて開路 別角度




参考資料
衛藤憲行ら;(株)鉄道建設・運輸施設整備支援機構 北陸新幹線(長野・金沢間)変電設備・配電設備・電車線設備紹介:明電時報,Vol.344,No.3,pp23-34,2014

持永芳文ら;北陸新幹線長野車両基地用不平衡補償単相き電装置の開発:電気学会交通・電気鉄道研究会資料,TER-97-45,pp.19-24,1997

伊藤與一郎ら;北陸新幹線と電気設備の新技術 長野車両基地変電所の電源補償装置:OHM,Vol.85,No.2,pp.28-31,1998

持永芳文ら;新幹線車両基地用不平衡補償単相き電装置の開発:電気学会論文誌B,Vol.120-B,No.8/9,pp.1084-1090,2000

兎束哲夫;電圧不平衡補償装置:RRR,pp.34-35,2009.3



























 








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