新宿交流変電所
アプローチ:新宿駅 容易 外観は見学できる。
接続されている地中ケーブルの22kV・66kV送電線も見られる。き電線も見られる。埼京線方面は、西武新宿線新宿駅のホームからよく見える。中央線と山手線が分岐する部分にある。
2024年のフォーラムでは増築計画が発表された。現在の建屋の大久保方に建て増しを行う。
JR東日本 鉄道技術フォーラムから引用(電気システムインテグレーションオフィス) |
1994年に大規模火災を起こし変圧器と高圧ケーブルの焼損を起こし建て替えられた。以前は交流変電所と直流変電所が隣接していた。交流変電所は、1993年に武蔵境交流変電所からの66kV地中OFAケーブル送電が154kVに昇圧され主変圧器各2台(3次巻線)で66kVと22kVに降圧して周辺の変電所に送っていた。火災の後 立て替えられて交流と直流の変電所が合体した形に生まれ変わった。
この変電所からの地中ケーブルは、新宿駅総武線16番ホーム中野方面向かって左に敷設されていて、トラフには各変電所方面の札が表示されている。飯田町・渋谷・信濃町・目黒。東病院これらは22kVと66kVである。このトラフをたどっていくと新宿大ガードの中野方面左から管路になって降りてきており変電所脇を推進管路工法で線路の下を潜り変電所の中に引き込まれている。
交流給電(受電)
大井(町)新宿線1,2,3号66kV、新宿信濃町66kV、新宿四谷66kV、新宿神田66kV、新宿目黒(渋谷配電所・目黒ビル経由大井町変)線・新宿渋谷〈渋谷配電所・目黒ビル・品川変経由大井町変〉22kV
新宿交流変電所には武蔵境変電所(信濃川水力)からの片側電源だけが導入されていたが、大井新宿線1、2、3号66kV(川崎火力)が敷設されたので火力系の電源が強化された。
新宿変電所から池袋変電所まで66kVケーブル敷設作業進行中このため大井新宿線が3号まで予備管を使用して大井から新宿までつながった。目黒変電所の66kV化も同時に行われた。
インテグレート架線化されてから、き電線の接続点が変電所付近に無くなり、エアーセクション付近にき電線で送出されている。新宿変電所の山手線外回りは、大久保駅付近でインテグレート架線のき電線に繋がっている。
沿革
1926年 大久保変電所に開閉室併設 東京電燈から22kV受電
1951年 新宿交流変電所と改称
1952年 OFケーブル 武蔵境線66kV 1号導入
1961年 OFケーブル 武蔵境線66kV 2号導入
1993年 OFケーブル 武蔵境線154kV 1、2号昇圧
主変圧器10万kVA LTC付に変更
1994年 火災事故 全面建直し
1994年出火 出火原因は明確に特定できていない。
当時 桃野開閉所・岡部変電所・武蔵境変電所間で遮断器の試験実施中
フェランチ効果による異常電圧発生 154kV系が繋がっている新宿変電所に伝播
壁モルタルに埋設してあった接地線過熱 モルタル剥離が筋の原因か?
出火した直流変電所は、昭和初期に建てられた古い建物であり、1956年にも水銀整流器の焼損事故を起こした。このころは、昭和初期の建物のため接地線の引き回しがつぎはぎだらけで、いたるところでアークが生じたそうである。(このときは、き電線の地絡事故)
新宿交流変電所 火災事故
1994年12月10日 22時50分ころ発生 この当時は、新宿変電所は3棟に分散していた。
①武蔵境からの154kV受電 交流変電所 主変圧器2台三次巻線22kK、66kV降圧 新築
②①の交流変電所から66kV受電予備線神田交流変電所へ 戦後の建物
③直流変電所①の交流変電所から22kV受電 東中野、高円寺、四谷、飯田町、渋谷、目黒、中央病院、新宿配電所(庁舎)に分岐。
同時に3組の変成設備で直流1500Vの供給(6,000kW×3) 昭和初期の建物
発生状況
③の直流変電所内の22kVから所内電源用の所内変圧器に接続されている配線の直上で壁のモルタルが落下 直下にあった充電部の短絡発生 22kV母線損傷発火。制御線が燃えて遮断できず電流が流れ続け、22kVケーブル9本約6m蒸発、コンクリートピット溶融の激しい焼損が起きた。①および②の交流変電所は、ぼや 自動消火装置作動 周辺の変電所から新宿変電所に電流が流れ続け手動切断まで4時間以上焼損が続いた。(武蔵境・新鶴見(一部浜松町経由)からの22kVが遮断不能となる。
時系列(諸説あり)
平成6年12月10日(土)
22時50分
JR中央給電指令において新宿交流変電所の主変圧器1号3次遮断器(2010)がトリップした事が確認された。
また、同時刻にJR東京電力指令においても新宿他5つのき電用変電所(直流変電所)が電源停電となった。
同時にJR輸送指令においては、列車位置表示装置で山手線 五反田~池袋間で軌道短絡状態となっているのを認め、直ちに全列車の運転を抑止した。
その間、高円寺変電所および吉祥寺変電所等で電源動揺となる。また、伝送路異常の警報が各指令に表示され始めた。
22時54分
中央線上り電車の運転士から「変電所から煙が出ている」との連絡が輸送指令に入り、直ちに最寄の新大久保駅社員に調査を指示したところ、新宿変電所で火災が発生し、当該変電所から供給している電力が遮断されていることが判明した。
23時01分
JR東京電力指令に輸送指令から「新宿変電所から煙が出ている」と連絡が入る。
23時05分
JR中央給電指令で遠方制御不能は、現場確認のため電力関係社員に緊急出動を指示
23時08分
JR中央給電指令にJR東京電力指令から「新宿変電所が火災らしい」と連絡が入 る。
23時15分
武蔵境交流変電所にて、154kV新宿線2号 遮断器(52R4)が、67G動作によりトリップ。
JR中央給電指令では、新宿交流変電所への送電を停止させる為、1号線の遮断器 開放を試みるが、伝送路異常により遠制不能。
23時15分
武蔵境給電区社員は、給電指令長の指示により、武蔵境交流変電所 154kV新宿線1号 遮断器(52R3)を手動開放する。
これにより、新宿交流変電所から新宿変電所へ供給していた全送電が遮断され、事故現象が消滅。(但し 諸説あり154kVは、遮断できたが周辺の22kV変電所からの給電があった)
23時25分
新宿変電所に電力関係社員が到着するが、手のつけられない状況であった。
消防車による消火活動が行われ、翌 12月11日3時50分に鎮火した。
0時11分
順次遠方制御不能変電所(新宿を除く)の直接運転開始
2時00分
電停準備開始 変電所(新宿を除く)の直接運転を停止(新宿変電所外輪からの22kV給電停止)
2時47分最終特高開放時間
新宿変電所近隣のき電特高解放終了
1時24分高円寺新宿、1時40分東中野高円寺、2時12分神田新宿、2時12分神田飯田町、池袋新宿2時21分、渋谷新宿2時25分、信濃町新宿2時30分、大井町新宿2時47分
5時47分鎮火
新宿交流変電所の建屋では、154kV主変圧器2号がケーシング破損による噴油焼損、および建屋外壁3箇所が破損。
新宿直流変電所の建屋では、1階の交流22kVケーブル類および遮断器が焼損、2階では交流配電盤が全焼し、一部の直流高速度遮断器、配電盤、ケーブル類が焼損した。
この為、新宿交流変電所および新宿変電所ともに運転不能と判明し、渋谷変電所、東中野変電所などの隣接変電所から延長き電を行い、山手線は9時46分、埼京線は10時02分、中央線は12時20分にそれぞれ運転を再開した。
延長き電中は輸送指令により列車本数の削減が実施されたが、き電電圧の降下が激しく、き電トリップが発生。
その為、電力指令から輸送指令を通じて電車のノッチ制限が実施され、運転台に電力関係社員が添乗し電車運転が行われた。
また、新宿交流変電所および新宿変電所が運転不能となったため、同変電所に接続していた特高送電ケーブルの区分およびスルー化作業が実施された。
作業内容
22kV新宿渋谷線と新宿四谷線2号直接接続
22kV新宿東病院線と新宿飯田町線1号直接接続
22kV新宿池袋線1号を終端接続し仮設主変に接続
新宿1号線154kVから仮変電所主変(1号は利用可能)接続
予備回線の確保 *22kV 目黒線 終端接続
22kV新宿池袋線2号を終端接続し新宿変電所飯田町線2号接続
1995年建直し 所内構造 1996年当時の構成
不燃化検討を行いGIS設備と難燃性ケーブル、多重保護回路の設置を行なう。
1F 154kV GIS受電設備、主変圧器、分路リアクトル
新宿交流変電所 結線図 文献より引用 |
3F 変成設備 6,000kW×3組
4F 22kV、66kV GIS配電盤
受電武蔵境新宿線1,2号OFAケーブル 154kV 2回線 主変4次巻線まであり 66kV,22kV,分路リアクトル用
給電22kV×9回線 66kV×6回線(5回線は、直流変電所用。1回線は、交流変電所・神田交流変電所連系) き電線16回線+共用Z回線2回線、 高配 10回線。 き電線は、総武上下、中央上下、山手上下、埼京上下で16回線 8回線ずつZ母線で構成
思い出横丁の特高ダクト |
大ガード西から引き下ろされる大井新宿線66kV 2回線+予備管 |
22kVケーブルも出てくる。 |
上 き電線 その下22kV 交流送電線 一番下 大井新宿線66kV |
推進工法で線路の下を22kVケーブル保護管が通る |
予備管は現在使用されている。 |
22kV 中野方面 |
東中野2号高円寺1号 |
大久保方 154kV OFA 2回線 中央緩行と快速の間に敷設 武蔵境変より |
新大久保方 22kV 2回線 山手線と山手貨物線の間に敷設 池袋変より |
き電線のプラスティックトラフが新大久保方に延びる |
このケーブルが導入されている部分が4Fフロアー 方面からして東中野 高円寺回線 |
左 埼京線側引き出し |
急行は、快速線のこと |
総武線 線路脇のトラフに敷設されている 新宿信濃町線1号66kV、新宿目黒線1号22kV 新宿飯田町線1号66kV |
新宿渋谷線1号22kV現在は、パススルー化、大井町新宿線66kVが途中分岐で渋谷変電所に入る。 |
新宿目黒線1号22kVと予備管 |
JR東京総合病院線 22kV |
サザンテラス下の特高ケーブル収納トラフ |
特高ケーブル収納ダクト |
サザンテラスにあるJR東日本 JR新宿ビル 旧新宿庁舎 |
そのビルの前’サザンテラス1F小田急線路脇には新宿駅総合配電所がある。 小田急線を越えるダクトが見える。22kV 2回線 受電 |
渋谷駅 埼京線ホームにある渋谷配電所 引込口 新宿庁舎の文字が見える 22kV受電 |
変圧器の放熱器が2台分見える。 |
サザンテラス脇の電力洞道のようなダクト 新宿南エネルギーサービスの 地域冷暖房の配管と電力ケーブルが敷設されている |
サザンテラス部の配電洞道 |
サザンテラス部の配電 |
サザンテラス部 代々木棟への配電 |
JR東日本 本社ビル 東電受電 |
新宿にはJR東日本の本社ビルがあるが、この本社ビル どういうわけかJR東日本の電源が導入されておらず、東電からの買電で賄っている。構想時にはデパート等の商業施設が入居するはずであったが、その後構想が変更になり、本社ビルとして活用することとなった。商業施設(デパート、ショッピングモール等)が入居する場合、法規制のため資本関係がない場合は、昔は東電からの買電で賄うのが普通であったが、その後法規制の方針が転換され、JR東日本敷地内の商業施設にも積極的にJR東自営電力が導入されることになった。(東京駅のサウス・ノース・サピアタワー、JR東急目黒ビル、赤羽エチカ等)そのため、大きな商業施設が隣接する駅構内には、配電所が設けられ22kV受電や66kV受電が行われている。JR東日本本社ビルとして利用すると決定された時、すでに東電の電源を導入することが決定されていたため変更できず、そのまま東電からの買電となった。隣にJR新宿ビルがあるが、こちらはJR東日本の電源が使用されている。
JR東日本 本社ビル
東電 66kVループ受電 負荷容量12,500kVA 8,000kVA×2台 ガス絶縁変圧器 C-GIS ビル内特高ケーブルは難燃性CVTで東電が敷設。高圧設備までは3系統受電。変電室B4F、5F、17F。自家発電6.6kV 1,500kVA×2台は大地震時は、負荷パターン制御で3日間運転可能。変電室B4F、5F、17F。サーバー室8F
新宿駅全体への配電は、たぶん南口にあるJR新宿ビルのサザンテラス下にある総合配電所22kV 2回線受電と新宿変電所からであろう。サザンテラスができる前、小田急線の上を金属ダクトで囲まれた2回線の管路が横断しており、それがJR新宿ビルに引き込まれていた。
現在でもその片鱗は見ることができる。1回線は、新宿交流変電所⇒JR東病院⇒総合配電所。2回線目は、新宿目黒大井町線T分岐⇒総合配電所の構図が描ける。理由は、サザンテラス側のデッキ横に電力洞道のような多数のケーブルを収めた構造物がサザンタワーから出て新宿駅南口方面に伸びているためである。また新宿駅総武線ホームトラフに東病院線の表示があり、目黒線の表示もあるため、方面的に総合配電所が南口にあることが考えられる。またサザンタワーの正面にはJR総合病院がある。サザンタワーは、小田急電鉄が主体で建設されたため、東電からの買電である。
東電22kV降圧6.6kV スポットネッワーク受電3回線 B4F特高電気室 主変圧器モールド風冷式2,500kVA×3台 高圧バスダクト6.6kV 600A B4Fと18F電気室に6.6kV送電
おまけ 東京駅100周年記念ラッピング 山手線 |
参考文献(順不同)
斉藤功:JR東日本 新宿変電所の保護システム 電気と鉄道技術;1996,Vol.7,No.7,pp.13-17
東京消防庁予防部調査課:JR東日本新宿変電所の火災概要
火災;1995,Vol.45,No.3,pp.51-55
小林健蔵:新宿変電所はどう改良されたか 電気鉄道;1959,Vol.12,No2,pp.20-24
松本駿太郎ら:インテリジェントビル JR東日本本社ビル 鉄道と電気技術;1998,Vol9.No.2,pp.8-13
坂田融:小田急サザンタワー新宿サザンテラス 建築;1998,Vol.73,No.5,pp219-225,236-237
高橋健一:小田急サザンタワーの電気設備
電気工事の友;1998,Vol.51,No.10,pp16-17,19-23
原洋二:JR東急目黒ビル電気工事の概要 鉄道界;2002,Vol.43,No.4,pp50-53