発電所の同定
公表資料に発電所名は無い。発電所番号、送電線の一覧表、航空写真の3つを突き合わせて同定した。
発電所番号の読み方
系統状況マップの発電所番号は6桁。上2桁に意味がある。
• 1桁目:連系する電圧の階級 1=500kV・275kV系、2=154kV系
• 2桁目:県 1青森、2岩手、3秋田、4宮城、5山形、6福島、7新潟
1で始まる番号は、どれも500kVか275kVの線に繋がっている。
2で始まる番号は154kV線に繋がり、240番台は仙台周辺、260番台は福島県内と県ごとに分布している。
この規則で読むと、140001と140004は宮城県内で275kV以上に連系する発電所となる。規則そのものはマップにも注記にも書かれておらず、番号の配置から読み取ったもの。
T分岐と判断した理由
1. 送電線の一覧表で、蔵王幹線0126は「米沢変電所→西仙台変電所」、奥羽幹線0118は「宮城変電所→羽後変電所」の1行のまま。途中で分割されていない。
π引込みなら幹線は分岐点で二つの区間に分けて書かれるはず。実際、0008相馬双葉幹線「南相馬変電所→送電線分岐」のように分けて書かれた線が表にある。
2. 分岐線の0157線と0158線は、どちらも1回線。2回線の幹線に1回線の線を繋ぐ以上、分岐元は幹線の片方の回線になる。
この2点から、両発電所とも幹線の1回線からのT分岐と判断した。どちらの回線から分岐しているかは、表からは判らない。
275kV以上で連系するほかの発電所
系統状況マップで1系番号(275kV以上)が付く宮城県内の発電所は、140001~140004の4ヶ所。太陽光は140001(オニコウベ)と140004(アマテラス白石)だけで、残りの2ヶ所は次のとおり。
• 140002:女川原子力発電所。0121牡鹿幹線と0125松島幹線の2線が、牡鹿半島の同じ発電所記号で終わる。
• 140003:新仙台火力発電所(LNG)。0129線(東仙台変電所→仙台変電所)の東仙台側の端点は、新仙台火力(仙台市宮城野区港)の構内に接している。東仙台変電所は新仙台火力の連系用変電所で、140003はこの変電所の母線に直接繋がる発電所記号と読める。
東北電力管内全体でも、275kV以上で発電所に至る線の先は、太陽光の2ヶ所を除いてすべて太陽光以外である。火力は能代(0115線)・原町(0138線)・勿来(0140勿来幹線)・東新潟(0145線・0146線)、原子力は女川(0121牡鹿幹線・0125松島幹線)、水力は第二沼沢(0132線、揚水)と東京電力信濃川(0150東上越幹線)。発電所名は公表資料に無く、系統状況マップ上の位置からの同定である。
参考 500㎸で連係するほかの発電所
1. 0001線 → 東通原子力発電所(青森県東通村)
0001線:500kV・2回線、設備容量12,632MW、運用容量6,581MW、潮流方向「上北変電所→発電所」、◇(予想潮流などは非公開)
マップでは、上北変電所から北へ延びる太線が、下北半島の白糠付近にある(110001)で終わる。番号の規則では「500・275kV系、青森県」となる。
東通村白糠にある500kV級の電源として、東北電力の東通原子力発電所と同定
2. 0007線 → 新地発電所(福島県新地町、相馬共同火力、石炭火力)
0007線:500kV・2回線、設備容量10,040MW、運用容量5,728MW、潮流方向「宮城丸森開閉所→発電所」、予想潮流−3,467MW(発電所側から宮城丸森へ3,467MW)
マップでは、宮城丸森開閉所から延びる線が、新地付近の(160002)で終わる。
新地町の大規模石炭火力として、相馬共同火力の新地発電所と同定。発電所の出力などは今回確認していない。
3. 0009線 → 福島天然ガス発電所(福島県新地町、LNG火力)
0009線:500kV・2回線、設備容量6,296MW、運用容量4,232MW、潮流方向「0007線分岐→発電所」、予想潮流−1,169MW
マップでは、0007線から分岐して(160003)に至る。記号は水色で、「発電所(上記以外)」となっている。
福島ガス発電株式会社(石油資源開発などの出資)の福島天然ガス発電所は、所在地が新地町駒ヶ嶺の相馬港4号埠頭で、出力は59万kW×2基=118万kW。予想潮流1,169MWとほぼ一致する。ただし、連系電圧と連系線は事業者の資料に書かれておらず、確認できていない。
500kV直結の発電所にならないもの
0008相馬双葉幹線(南相馬変電所→送電線分岐、◆)は、終点が「送電線分岐」で、東京電力との会社間の設備(◆)。発電所に至る線ではない。
0002〜0006線と0010線は、変電所・開閉所どうしを結ぶ送電線。
現地との照合
• アマテラス白石:蔵王幹線の線形から発電所敷地までの最短距離は約0.3km。航空写真で、幹線から変電所敷地へ下りる163mの引込線を確認した。
• オニコウベ:奥羽幹線は北緯38.80~38.86度の区間で鬼首盆地を横切る。航空写真で、分岐点から発電所へ南下する約2.7kmの0157線を確認した。連系電圧275kVは、JUWI自然電力オペレーションの公表とも一致する。
両発電所とも、構内にマイクロ波無線装置の通信用鉄塔がある。
両発電所に共通する系統上の扱い
0157線と0158線の行は、備考欄まで同じ「※1
◇」。平常時出力制御の可能性はどちらも「有り」。起因は宮城変電所の500/275kV変圧器(変電所No.009)。
※1 1回線の設備容量をそのまま記載
留意事項の注記(1)では、※1は「1回線送電線のため1回線の設備容量を記載」の意味。2回線の幹線は、1回線が故障しても送れる量として、運用容量を設備容量の半分にしている。蔵王幹線なら1,100MWに対して550MW。分岐線は1回線なので、止まっても発電所が切り離されるだけ。そのため運用容量は設備容量と同じ538MW・539MWとなる。
予想潮流などを非公開(発電所からの)
注記(11)では、◇は「個々の電源の運転状況が推測可能な設備のため、予想潮流・N-1電制可否・N-1電制可能量を非公開」の意味。分岐線の潮流は、そのまま1つの発電所の出力になる。0157線・0158線の予想潮流が「-」なのはこのため。
平常時出力制御の起因設備 変009=宮城変電所500/275kV変圧器 変電所番号9
上位系設備欄は、0158線が「変009」、0157線が「フェンス№1・№2,変009」。
変電所の一覧表で、No.009の宮城変電所500/275kV変圧器は台数1台、運用容量950MW、予想潮流-959MW、当該設備欄「対象」。
変圧器の予想潮流は、一次側(500kV)から二次側(275kV)へ流れる向きが正。-959MWは、275kV側から500kV側へ959MWが押し上げられる想定である。つまり275㎸昇圧500㎸運用を現在行っている。
運用容量950MWを上回るため、宮城県内の275kV系統に連系する電源は平常時に出力制御を受ける可能性がある。奥羽幹線側の0157線は、これに加えてフェンス№1・№2の制約も受ける。フェンスは複数の送電線を一つの断面として潮流の上限を管理するもので、№1は東北北部、№2は宮城の北側の断面(いずれも安定度制約)。奥羽幹線自体がフェンス№2の構成線である。
空容量 = 運用容量 - |予想潮流|
蔵王幹線で550-396=154MW、奥羽幹線で904-567=337MW。幹線そのものは混雑の起因設備になっていない(当該設備欄は「-」)。宮城変電所の超高圧変圧器1台が容量いっぱいで使用中なので制限を受ける。解消はもう一台変圧器を追加すること
太陽光の出力変動は275kV幹線に問題を起こさないのか
太陽光の出力変動が基幹送電線にもろに乗る、という心配がある。結論から言うと、275kVに直接繋ぐ方が変動の影響は小さい。
275kV連系で設計の重点になるのは、変動よりも事故時の振る舞いと保護である。
以下は一般的な電力工学の整理で、東北電力ネットワークの個別の連系要件は確認していない。
周波数
雲の通過などで出力が変わると需給が崩れ、周波数が動く。周波数はエリア全体で一つなので、66kV連系でも275kV連系でも影響は同じ。
対処は、エリア全体の調整力(火力・揚水などの負荷周波数制御)と出力制御による。両発電所の「平常時出力制御の可能性:有り」も、この枠組みの一部である。
電圧
連系点の電圧変動は、近似的に次式で表せる。
ΔV/V ≈ (RΔP + XΔQ)/V² ≈ (R/X)・(ΔP/Ssc) + ΔQ/Ssc
式中の記号は次のとおり。
• V:連系点の電圧(線間電圧)
• ΔV:発電所の出力が変わったときの連系点の電圧の変化。ΔV/Vは電圧変動率
• R:連系点から系統側を見たインピーダンスの抵抗分
• X:同じくリアクタンス分
• ΔP:有効電力の変化。太陽光の出力変動そのもの
•
ΔQ:無効電力の変化。パワーコンディショナの力率制御で発電所側から操作できる量
•
Ssc:連系点の短絡容量。Ssc=V²/|Z|で、275kV送電線のようにXがRよりずっと大きい系統ではSsc≈V²/Xとなる
• R/X:系統側インピーダンスの抵抗とリアクタンスの比
最初の≈は電圧降下の近似式。
二つ目の≈は、Ssc≈V²/Xを使って書き換えたものである。
式は、発電所から系統へ送り出す向きのΔP・ΔQを正とすると、ΔVが正(電圧上昇)になる向きで書いている。
275kVの方が影響が小さい理由は二つ。
1. 1. 275kV系は短絡容量が大きく、同じ出力変動でも電圧の動きが小さい。
2. 275kV送電線はリアクタンスが抵抗よりずっと大きい(X/Rが大きい)。有効電力の変動ΔPが電圧にほとんど効かない。
仮の数値で、短絡容量5,000MVA、R/X=0.1の連系点で出力が100MW変動しても、電圧変動は約0.2%に留まる(例示の値で、両発電所の実際の短絡容量ではない)。太陽光による電圧上昇が問題になりやすいのは、むしろR/Xが大きく短絡容量の小さい配電系統の方である。
275kV連系で本当に問題になる点
• 事故時の運転継続(FRT):
基幹系で事故が起きると、広い範囲で電圧が瞬時に下がる。大容量のパワーコンディショナが一斉に停止すると百MW単位の電源が抜け、周波数が下がる。電圧低下時も停止せずに運転を続ける能力が要る。
• 保護と通信:
T分岐で幹線は3端子の送電線になる。3端子線の事故を確実に高速で切り離すには、各端子の電流を突き合わせる電流差動保護などが必要で、端子間の通信回線が欠かせない。両発電所のマイクロ波無線装置(通信用鉄塔)は、この保護・監視制御用の通信と推測する。
•系統の強さと高調波:インバータ電源の多い地域では、短絡容量に対する電源容量の比や高調波への配慮が要る。
最後に残された謎(深追いはしない・あくまでこれは番外記事)