2014年12月1日

181. JR東日本 水戸線 交直デッドセクションと直流遊流阻止装置(BTき電・交流・直流)

水戸線 交直デッドセクション

交直デッドセクションは、常磐線が有名であるが、水戸線の方が単線で、判りやすい。

水戸線は、小山変電所と友部変電所間で送電を行っており、小山⇔友部間には変電所が無く、2つの補助き電区分所とき電区分所があるだけである。

交直デッドセクション設置の目的と機能

1950年代はじめ、取手までの常磐線の(直流)電化区間を更に北に伸ばす計画が浮上した。運輸省内に、1953年「地磁気擾乱対策協議会」が設けられ常磐線電化に関する協議が始まった。2回の擾乱試験の結果、従来の直流電化方式では必要とする観測精度を維持することは不可能であり、交流電化方式を採用することが望ましいという結論が得られた。そして 1956年に地磁気擾乱対策協議会において直流電気鉄道による擾乱磁界の許容値は、その当時の測定機器での最大分解能である0.3nTと決められたのである。この結果をもって 常磐線が1961年6月交流電化(藤代デッドセクション)された。当初の電車運用は品川⇔勝田間であった。

 その後 1965年電気設備に関する技術基準を定める省令が改訂され 第六節 電気的、磁気的障害の防止 第四十三条で直流の電線路、電車線路及び帰線は、地球磁気観測所又は地球電気観測所に対して観測上の障害を及ぼさないように施設しなければならない。とされた。 ただし省令には半径30km圏とは記載されていない。また地磁気擾乱の規制値も記載されていない。
  
必然的に地磁気観測所周辺の直流電化区間と付随する直流変電所は規制の対象となっていたので水戸線 小山以南(1967年交流電化)、つくばエクスプレス守谷以北は、交流電化となっている。国土交通省の鹿野山測地観測所(千葉)でも地磁気観測をおこなっているが、内房線電化の際は、直流変電所間隔を短くすることで影響を抑えた。しかしながら短期的変動には、少なからず擾乱として認識されており、電車が通らない夜間の観測で補って入る。(この項は、佐貫町変電所も参照のこと)

 
 
アプローチ:小山駅 容易 
給電:DC1500V、AC20kVともに小山変電所
 
小山変電所から交流20kVは、同軸給電ケーブルで小山駅構内に引き込まれている
左 構内上 構内下 間々田上

水戸線側にある断路器群
左から 間々田上 構内下に接続 下部で共通母線化
間々田上は断路器「閉」 構内下は断路器「開} 左から3番目断路器上部に接続
上部は水戸線1500Vに接続
小山駅外部 東北線ホーム水戸線線側
き電同軸ケーブル立上り部 新幹線で使用されている き電同軸ケーブルを利用。
碍子ブッシングが上下に出ているのが見て取れる。通信線等の誘導障害を同軸ケーブルを使用すると
軽減できる。
上部ブッシングがAC20kV気中接続部
下部ブッシングの架台部分(絶縁されている)にはNF(負帰線)が繋がる
小山駅外部 水戸線側
小山駅構内AC20kV立ち上がり 避雷器がAC20kVき電線に繋がる。
通常 AC20kVは碍子数は3個 NF=負帰線は碍子数1個
小山駅外部 水戸線側
NFがき電同軸ケーブルの外皮部に繋がる。
小山駅構内 水戸線 ホーム側 跨線橋より
き電同軸ケーブルはブッシング下部にも碍管があり、架台と絶縁されている。
 小山変電所から交直デットセクションに向かうAC 20kVとNFのき電区分部
AC20kV、NFともに接地型断路器であり「開」にすると変電所側が
接地される。1500V回線が横切る。
同上
小山変電所よりの1500VとAC20kVのき電線がデッドセクションまで伸びている。
実際は、AC20kVのき電線は、その先の直流遊流阻止装置に繋がり
デットセクション交流部に給電している。
交直デットセクション手前のレール絶縁部分2m 中間部分は、絶縁されている。
デッドセクションまでは、かなりの距離がある。
これは、交流の遊流阻止装置であった。
絶縁部分 両端の外側にインピーダンスボンドがあり、中性点同士が機器箱を経てクロスボンドされている。
これは、交流の遊流阻止装置であった。
小田林方面 交直切替標識
 交直切替標識の下 線路にあるATS地上子 線路脇に白柱
地上子には水交直下(2)の表示
小山方面 力行標 直流方
小田林方面 架線死区間予告標識 直流方 
1500V 給電部 AC20kVは通過
デッドセクション直前の白柱 接地禁止区間


 
直流側 架線死区間標識表示
デッドセクション 単線運転の為 交直→、直交→が起きるため長い方の直交に合わせてある
直流側デッドセクション入口
デットセクション部 直流側レール絶縁部 インピーダンスボンド 中性点には無接続
交流側のレール絶縁部の見える
デッドセクション中間部
交流側 デッドセクション入口
交流方 架線死区間標識
切換確認電光表示 小山方面 と惰行標
小林田方面 交流方  力行標 トロリ線にはまだAC20kVは給電されていない
 
小山方面 交流方 惰行標 反対側の電柱には力行標
トロリ線にはまだAC20kVは給電されていない
 
小山方面 交直切替標識
トロリ線にAC20kVが、やっと給電される。
小山変電所からのき電線、は接続されていない。(通過している)
これには、理由がある。
 
デットセクション部 Google map

 

直流側 1,500Vの電圧表示

小田切方面 交直切替標識

直流側 架線死区間標識表示

 

デッドセクション 車上より

交流側 19,000V 表示の交直両用表示 電圧計 通常は22,000Vくらいが標準

デッドセクション通過中のモハ415系車両 車内灯 停止非常灯点灯

 
直流遊流阻止装置設置部について
(水戸線・常磐線・筑波エクスプレス線に必ず設置されている)
やっと日本のデッドセクションでもこの部分が紹介された。
トロリ線にAC20kVが、やっと給電される。
しかし小山変電所からの、き電線は接続されていない。
通常なら接続されて良いはずである。
そしてエアーセクションが始まる
 
レール絶縁部がデッドセクションと同様に2m位の間隔である
交流側小山方絶縁部とインピーダンスボンド
直流遊流阻止装置 エアーセクションを挟んでいる。
小山変電所からのき電線と、先ほどのトロリ線が繋がっている給電線が
この装置に繋がる。
交流側小林田方レール絶縁部とインピーダンスボンド
吸上変圧器・避雷器・両切断路器・コンデンサーバンクが設備された施設
常用・予備切り替え断路器 手前コンデンサーバンク
コンデンサーバンクは20kV用(P)が2組(予備1) レール(N)用が2組(予備1)
この部分は、架線のエアーセクションとレールのインピーダンスボンド中性点からの配線が入っている
円筒形の直流検出装置が予備を含めて3個ある
吸上変圧器は、故障が少ないため1個
電車線用
コンデンサー
検知器
とその後ろ電車用コンデンサー
電車軌条用
(予備)
コンデンサー
検知器
とその後ろ、軌条用コンデンサー(予備)
軌条用
コンデンサー
検知器
とその後ろ、軌条用コンデンサー
両切断路器 2組 電車線用と軌条用 予備と常用
直流電流検知装置
直流電流検知装置 結線図
動作 (文献より引用)
三脚型鉄心の外側鉄心に一次、二次コイルを巻き、中央鉄心に入力コイルと短絡コイルが巻いてある。一次コイルには電源部から交流電圧を加え、2次コイルには交流電圧を整流して、接続されている直流検知継電器を附勢させている。入力コイルに交流が流れると、鉄心内に交流磁束を生じるが、この磁束は入力コイルの内側に巻かれている短絡コイルにより短絡電流がながれることにより打ち消され、2次コイルに影響を与えないとされており、直流検知継電器は半化しない。入力コイルに直流が流れると、鉄心が飽和するので一次コイルのインピーダンスが減少し、一次コイルに直列に接続されている抵抗により一次コイルに加わる電圧も減少する。すると二次コイルの電圧も減少し直流検知検電器は消勢落下する。直流検知検電の落下により、直流遊流が発生していることを検知する。
直流電流検知装置 銘板
 
 
小山変電所からのAC20kVが直流遊流阻止装置に接続
直流遊流阻止装置からの、き電線がデッドセクション後の交流側トロリ線に接続
 
小山変電所からのAC20kVは、一度吸上変圧器とコンデンサーを経由して
デットセクション後のトロリ線に加圧されている。その後エアーセクションを挟む。
エアーセクション後、小山変電所からのAC20kVは、直接 
トロリ線に加圧されており、き電線は必要なくなる。
 
直流遊流検出装置
 常磐線の交直区間のデッドセクションについて、紹介する記事は、多いが交流電化区間に設置されているデッドセクション直後の交流のエアーセクションについての記事は、皆無であるので記す。
 このエアーセクションは、常磐線上下線とも同じ設備が設置されており、コンデンサーバンクと断路器・直流検出装置・吸上変圧器で構成されている。その装置の名前は、直流遊流検出装置と言い、交流方に直流が何らかの装置トラブルで直流が遊流した際にそれを検出して直流変電所へ強制停電の指示を行う装置である。常用と予備の断路器があるが、コンデンサーが故障の場合、予備系に切替えて機能を継続使用できるように成って入る。同様な機能を持つ装置が、常磐線、つくばエクスプレス線にも導入されている。それだけに直流の混触には、気を使い地磁気観測に影響を及ぼさないように配慮されている。
直流遊流検出装置の設置根拠は
①地磁気観測所の観測に障害を及ぼさないようにした。
②交流電化当時は、信号の軌道回路に影響を及ぼさないようにした直流単軌条方式が検討され導入された。
しかしながら、現在では信号の軌道回路は、変更されており主に①が目的であろう。
直流遊流阻止装置 設置場所

参考文献

田代淳:直流游流防止装置の保全について(図2直流電流検知装置 結線図・動作引用)
鉄道電気技術研究会発表会論文,2001,11th.pp.11-16
但しこの文献中の構成図中で直流検出装置の位置がコンデンサーの後であったので手前に書いてある変電所一般:き電変電シリーズ(1)の図を選択している。(コンデンサーがあると直流が流れないため)
 
日本鉄道電気技術協会編:変電所一般:き電変電シリーズ(1)
Ⅳ 異電源突合せ箇所の設備4.直流游流阻止装置pp.97-99 (図4.3.1引用)
 
日本鉄道電気技術協会編:電車線路シリーズ
4き電線・帰線路・がいし 7.直流遊流阻止pp.130-131(図4.1.5引用)

同軸き電ケーブル(内容が古いが概要は判る)
大槻国秋ら:対地30kV同軸架橋ポリエチレン電カケーブルおよび付属品の開発
日立評論;1974,Vol.56,No.7,pp649-654
対地30kV同軸架橋ポリエチレン電力ケーブルおよび付属品 pdf リンク

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