2014年12月1日

139. JR東日本 藤代変電所(交流・BTき電、直流)

藤代変電所
 
 
藤代変電所は、グーグルマップでは表示名がでなかったが、最近出るようになった。 
左下 受電、断路器、遮断器、母線
左上 左右に単相変圧器2台、その下に変成設備2組と配電用変圧器
左上から右上 BTき電設備 右下 き電設備(直流・交流)
アプローチ:藤代駅 容易                            
受電:東電常総変電所・筑波南変電所間筑波南線からのT分岐66kV JR藤代線架空2回線
給電:常磐線
特徴:気象庁の地磁気観測所が茨城県石岡市柿岡にあるためデッドセクションが設けられている。
昭和40年(1965年)当時金町変電所から自営送電線で繋がっていた。 常磐線交流電化に伴い我孫子から藤代変電所まで自営送電線が繋がる。


701. JR東日本 藤代変電所 定点観察 不等辺スコット結線変圧器の現状とデッドセクション新標識

720. JR東日本 藤代変電所 定点観察 不等辺スコット結線変圧器の現状とデッドセクション新標識 調査 ブログリンク


822. JR東日本 藤代変電所・我孫子変電所 定点観察  新デッドセクション標識の行方 不等辺スコット結線変圧器稼動 ブログリンク

1950年代はじめ、取手までの常磐線の(直流)電化区間を更に北に伸ばす計画が浮上した。運輸省内に、1953年「地磁気擾乱対策協議会」が設けられ常磐線電化に関する協議が始まった。2回の擾乱試験の結果、従来の直流電化方式では必要とする観測精度を維持することは不可能であり、交流電化方式を採用することが望ましいという結論が得られた。そして 1956年に地磁気擾乱対策協議会において直流電気鉄道による擾乱磁界の許容値は、その当時の測定機器での最大分解能である0.3nTと決められたのである。この結果をもって 常磐線が1961年6月交流電化(藤代デッドセクション)された。当初の電車運用は品川⇔勝田間であった。
 その後 1965年電気設備に関する技術基準を定める省令が改訂され 第六節 電気的、磁気的障害の防止 第四十三条で直流の電線路、電車線路及び帰線は、地球磁気観測所又は地球電気観測所に対して観測上の障害を及ぼさないように施設しなければならない。とされた。 ただし省令には半径30km圏とは記載されていない。また地磁気擾乱の規制値も記載されていない。
  
必然的に地磁気観測所周辺の直流電化区間と付随する直流変電所は規制の対象となっていたので水戸線 小山以南(1967年交流電化)、つくばエクスプレス守谷以北は、交流電化となっている。国土交通省の鹿野山測地観測所(千葉)でも地磁気観測をおこなっているが、内房線電化の際は、直流変電所間隔を短くすることで影響を抑えた。しかしながら短期的変動には、少なからず擾乱として認識されており、電車が通らない夜間の観測で補って入る。(この項は、佐貫町変電所も参照のこと)

JR藤代線分岐
東電 東取手線
 
 
変電所 受電口に向かう送電線
 
66kV2回線受電口
受電口、断路器、遮断器、計器用変圧変流器(MOF)そして母線
MOFが回線別についているは、珍しい
断路器、遮断器、MOF部拡大
 
母線より断路器を経て右 配電用変圧器66kVから6.6kV降圧
手前 配電用変圧器 奥 直列リアクトル SL 太い帰線がつながっている
藤代変電所のき電用変圧器(FTr)は、普通の交流電化区間に見られるようなスコット結線変圧器ではなく一次側のブッシングが2本の単相の変圧器である。藤代変電所は、末端の交流変電所であるため、上下線同位相の給電が必要である。そのためスコット結線(M座・T座)が使えず、あえて三相2線から単相を取り出している。この場合電圧不平衡の問題が発生するが、藤代変電所は東電変電所間での受電であるので東電側で補正を行っているのだろう。
母線より断路器を経て単相変圧器(き電用変圧器FTr 1,2)左と右に繋がる
FTr1の断路器は閉極(ON) FTr2の断路器は開極(OFF)
 

FTr2組あるが三相の内 R,T66kVが変圧器の一次側に入り、20kV単相の二次側出力となっている。
二次側の20kVは遮断器(VCB)を経て断路器に入る。
二次側のNFは、計器用変流器を経て断路器に入る。両方ともケーブル化されている。
20kV用のブッシングは大きいが、NF(負き電線)用は小さい
別角度から
FTr1およびFTr2のNFに繋がる直列コンデンサーSCは、会社が違うようだ。
き電母線FとNF母線の間に計器用変圧器が繋がる(奥の円筒形の装置)
FTr1,2からのNFは、直列コンデンサー・保護回路を経てNF母線に繋がる。
き電母線 FTr2側からはケーブルで引き回されてケーブルヘッドで母線と繋がる。
FTr1は断路器を経て直接母線に繋がる。ここで藤代方面上下線に分割される。
き電母線FとNF母線の間に計器用変圧器が繋がる(奥の円筒形の装置)
 

Fき電母線から藤代方面上下線に同相交流き電している。Fき電母線よりそれぞれ、断路器、計器用変流器(CT)、遮断器(VCB)、避雷器(Ar)、計器用変圧器(PT)を通り断路器に繋がる。途中 上下タイき電用の断路器が入るが通常は開極(OFF)である。そして藤代方面上下線架線に繋がる
CTによる電流測定は、次の牛久き電区分所の電力融通のために必要とされる。



中央に上下線タイ断路器がある
上下タイ断路器 拡大 開極 手前の円筒形のものは、計器用変圧器(PT)


次変電所 土浦方面上下交流20kV き電線
整流用変圧器からバスダクトでシリコン整流器に繋がる。大きさからして3,000kWクラスか?
この変成設備が2組ある。取手変電所までの間なので大出力のシリコン整流器は必要ないのであろう。
線路側から見た 正極・負極 直流母線断路器 CTが見える。
変電所側から見た 正極・負極 直流母線断路器 CTが見える。
建屋内のZ母線11,12き電線の断路器は圧空式である。
ケーブルは立上がり建屋外の11,12 タイ断路器(Z母線に繋がる)
に繋がり、き電線として取手方に給電している。タイ断路器は開極(OFF)である。
左より 直流き電線2本、交流き電線4本 取手方NFとき電線、土浦方き電線とNF。
円筒形鉄柱 左2本 直流 右4本 交流 ポリマ碍子
交流き電線は、2が頭に付くようである下り方面13 土浦方
上り方面14土浦方
11下り方面取手方 12上り方面取手方
土浦方の交流き電線は、直ぐに架線に繋がらず次の装置に繋がる。
藤代変電所から帰線が立ち上がる。
デッドセクション部
帰線は、一旦並列に再接続され、下り方面上り線と下り線に分離される。
デッドセクション部
下り方面上り線帰線は、架線上を渡る。
交流側インピーダンスボンド
直流側 インピーダンスボンド 変電所からの帰線が中性点に繋がる。
線路上のデッドセクション 線路を短絡しても信号が赤に変わらないため短絡禁止の立て札がある。
上り線 表示
上り線表示
上り線 交流→直流 デッドセクション 30mくらいの一体形
奥 下り線のデッドセクション始まり
交流→直流 デッドセクションを通過中のEH-500型交直両用電気機関車
下り線 直流→交流 デッドセクション 入口
下り 直流→交流のデッドセクションは2つのデッドセクションの間に無加圧の架線を挟む。
架線死区間標識がある。
下り線 直流側デッドセクション

 E531系 下り線 デッドセクション前  VCB全入 黄色
E531系 下り線 デッドセクション通過中 VCB全切 赤色
上り線のデッドセクションが見える。
下り線は、直流側のデッドセクションを通過し、無加圧架線を通過後
奥の交流側デッドセクションに繋がる
デッドセクション後の藤代方上下線にある装置
回路の詳細は、水戸線のデッドセクションで述べる。
やっと日本のデッドセクションでも紹介された。(追記2016/0905)
 
直流遊流検出装置
 常磐線の交直区間のデッドセクションについて、紹介する記事は、多いが交流電化区間の藤代方にある交流のエアーセクションについての記事は、皆無であるので記す。
 このエアーセクションは、常磐線上下線とも同じ設備が設置されており、コンデンサーバンクと断路器・直流検出装置・吸上げ変圧器で構成されている。その装置の名前は、直流遊流検出装置と言い、交流方に直流が何らかの装置トラブルで直流が遊流した際にそれを検出して直流変電所へ強制停電の指示を行う装置である。常用と予備の断路器があるが、コンデンサーが故障の場合、予備系に切替えて機能を継続使用できるように成って入る。同様な機能を持つ装置が、水戸線、つくばエクスプレス線にも導入されている。それだけに直流の混触には、気を使い地磁気観測に影響を及ぼさないように配慮されている。
直流遊流検出装置の設置根拠は
①地磁気観測所の観測に障害を及ぼさないようにした。
②交流電化当事は信号の軌道回路に影響を及ぼさないようにした直流単軌条方式が検討され導入された。
しかしながら、現在では信号の軌道回路は、変更されており主に①が目的であろう。
 

下り線側 直流遊流検出装置
円筒形の直流検出装置が予備を含めて3個ある。
吸上変圧器は、故障が少ないため1個
上り線側 直流遊流検出装置 下り線と構成は同じ
柱上にある吸上変圧器BTと避雷器 下の円筒形の機器が直流検出器
エアーセクションの表示 上り線 藤代変電所からの交流き電線が、直流遊流検出装置に繋がる
常用・予備切り替え断路器 手前コンデンサーバンク
コンデンサーバンクは20kV用(P)が2組(予備1) レール(N)用が2組(予備1)
この部分は、架線のエアーセクションとレールのインピーダンスボンド中性点からの配線が入っている。
おまけ 藤代駅 中線で出発を待つEH500型 交直両用電気機関車
パンタグラフをつなぐ高圧繋ぎ線
藤代駅構内にある保安器とコンデンサー付きCR装置
負荷電流の増加に伴いNF電位が高くなるのと相まって、
保安器SDが電車線からの誘導サージで放電した場合
一旦放電が開始されると、負荷電流が継続している間
放電が続く(続流)SDの放電時間は数秒であるため、カバー
溶損や放電面の焼損が発生するようになった。その対策として
地絡事故時のみSDが確実に放電するようサージ吸収用CR
装置が考案された。CR装置はコンデンサーと抵抗を並列に
接続して一体形にしてSDと並列に接続する。(き電・変電技術変遷史より引用)
こちらはコンデンサーなし
駅構内の支持物等にき電が閃絡(地絡)した場合、その支持物より大地を介し、漏れ
抵抗を通して近くのレールからBTを経て変電所に戻る回路ができるため、対地電位が上昇し近く
にある弱電機器や軌道回路を破壊する可能性が生じる。その対地電位の上昇抑制と事故電流の
検出を目的で、負き電線NFと各支持物を結んだ保護地線(FW)間に2.5kVで放電する2号(2,000A)
保安器2個が並列で設置されている。(き電・変電技術変遷史より引用)
ポイント渡り線上にある同相セクションインシュレーター

参考文献

JR東日本 水戸線 交直デッドセクションと直流遊流阻止装置(BTき電・交流・直流) リンク

田代淳:直流游流防止装置の保全について
鉄道電気技術研究会発表会論文;2001,11th.pp.11-16

本田誠彦ら:常磐線における車両回生電力の測定とその利用の検討
電気学会産業応用部門大会論文集;2009,3,III.275-278

日本鉄道電気技術協会編:変電所一般:き電変電シリーズ(1)
Ⅳ 異電源突合せ箇所の設備4.直流游流阻止装置

日本鉄道電気技術協会編:き電・変電技術変遷史

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